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サイクル ロードレース コラム 2023年12月27日

【ハイライト動画あり】続マチュー劇場!世界チャンピオンが泥のガーフェレを制する|シクロクロス2023 WC第10戦ガーフェレ:レビュー

サイクルロードレースレポート by 辻 啓
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マチュ―・ファンデルプール

「向かうところ敵なし」は自他ともに認める事実。順当に表彰台に上がった「ビッグ・スリー」の中で、この日もマチュー・ファンデルプールの走りはずば抜けていた。マチュー・ファンデルプールがUCIシクロクロスワールドカップ第10戦ガーフェレで連勝をマーク。「恐ろしく難しかった」という泥コースで、彼は恐ろしく速かった。

ファンデルプールが強いことはわかっていた。だがまさか開始4分から独走するとは誰も(JSPORTSで初実況を担当した小俣雄風太さんも)想定していなかったかもしれない。まだUCIワールドカップランキングでは下位のため2列目からのスタートとなったファンデルプールは、1周目の半ばには早くも先頭に躍り出ていた。

フランドル地方のガーフェレ(ブリュッセルの西60km、ヘントの南15km)はシクロクロスファンにとってお馴染みの場所。40年にわたってシクロクロスが開催されてきた地であり、1983年から2021年までスーパープレスティージュの一戦として、そして2022年からUCIワールドカップに組み込まれている。その特徴は起伏に富んだコースと森を覆う泥。とても乗車ではクリアできない長い登りと、世界最高峰のシクロクロッサーであってもバランスを崩す激下りが登場する。深い泥に刻まれた轍にタイヤをはめて、エアークッションに身体を擦り付けながらバランスを取るのはガーフェレならではだ。

ワウト・ファンアールト

「今日のようなコースでは前走者の後ろに付いてもアドバンテージがなくて、自分のラインを見定めることができるように前で入った方が有利」というファンデルプールは、1周目を終えた時点で後続に8秒差をつけていた。2番手を走行したのは「ビッグ・スリー」の一角ワウト・ファンアールト。「ランニング区間の多いコースは自分向きだった。できる限りマチューの近くで走って彼にプレッシャーを与えたかったんだ」という言葉通り序盤からプッシュしたが、徐々にその差は開いていくことになる。「2周目にミスをしてからマチューのペースに付いていけなかった。限界ギリギリで走っていたことが仇となって失速してしまった」というファンアールトは、一時的に後続に迫られながらも2位のポジションで走り続けることになる。

無料動画

【ハイライト動画】UCIシクロクロス ワールドカップ 第10戦 ガーフェレ

15,000人とも言われる今季最大級の観衆に見守られて(地元ベルギー勢ではないため少しのブーイングも受けながら)ファンデルプールはリードを広げていった。シクロクロスならではの深い泥に覆われたコースでは、走行テクニック&パワーだけでなく、ピット作業も勝負を分つ鍵。当然選手たちは少しでも長い時間泥が付いていないバイクに乗りたいため、1周回につき2回設定されたピットエリア(ダブルピット)でクリーンなバイクに乗り換える。泥の付いたバイクを選手から受け取ったピットスタッフは洗車エリアに走り、手早く泥を落としてバイクを綺麗な状態にし、再びピットに入ってくる選手に渡す。UCIコミセールの久保さんがコントロールするピットは洗浄の戦場になった。

トーマス・ピドコック

一年前のガーフェレでファンデルプールとファンアールトと三つ巴のバトルを演じたトーマス・ピドコックは出遅れた。「スタート後の混乱から抜け出せず、10番手あたりで2周目に入ったところでチェーンが落ちてまた後退。もちろん序盤から先頭でレースを展開できていればよかったけど、まあレースとしては悪くなかったと思う。追撃していた時のペースは悪くなかった」。一時は30番手あたりまで落ちたピドコックだったが、決して抜きどころの多いとは言えないコースで前走者を次々とパス。UCIワールドカップリーダーのエリ・イザビットとマイケル・ヴァントゥレンハウトを追い抜くと、3番手争いを繰り広げるラルス・ファンデルハールとヨリス・ニューエンハイスにジョインしてみせた。

西に傾いた太陽が差し込む森の中、スプリントとレストを繰り返す地獄のインターバル。ランニング率が上がるとともにコースが荒れ、そこに疲労が加わって徐々に乗車率が下がっていく。周回遅れの選手がトップ争いに影響を与えないように「レースの先頭競技者の第1周目のタイムより80%以上遅いいかなる競技者も、レースから除外される(UCIの規約より抜粋)」というシクロクロスならではの「80%ルール」が適用されているが、それでもファンデルプールにラップされる(周回遅れにされる)選手が出るほど力の差が出るコース。ファンアールトに対して42秒のリードをもって最終周回の鐘を聞いたファンデルプールが、1時間以上にわたる独走劇をガッツポーズで締めくくった。

「恐ろしく難しいコースだった。粘着性のある泥で、周回を重ねるごとに難易度が上がっていった。雨が降り続いてくれた方が楽だった」と、顔に泥を付けたまま優勝者インタビューに応じたファンデルプール。合計7周回で行われたレースのラップタイムを見ると、8分56秒、9分11秒、9分28秒、9分45秒、9分39秒、9分47秒、10分5秒と、後半にかけてスピードが落ちているのがわかる。この日の平均スピードは17.615km/h。3日前の第9戦アントワープが26.342km/hだったことを鑑みると、どれだけ厳しいコースだったかが分かる。

 

2位にはファンアールトが入り、「今日はずっと前を追撃していた気分」というピドコックがニューエンハイスとのマッチレースとの末に3位に入る。終わってみれば「ビッグ・スリー」が表彰台を独占。そして同じガーフェレで開催された一年前のUCIワールドカップと同じメンバー、同じオーダーだった。

「マチューは別の次元にいる(byファンアールト)」。「現状、どんなコースでもマチューが強いのは明らか(byピドコック)」。ファンデルプールの強さは誰もが認めるところ。今季シクロクロス4戦全勝の世界チャンピオンは、次戦フルストを含めて年内まだ残り3レースを走る予定。2024年2月4日のUCI世界選手権に向けて常勝街道を突き進んでいる。

文:辻 啓

代替画像

辻 啓

海外レースの撮影を行なうフォトグラファー

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