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【Cycle*2023 イル・ロンバルディア:プレビュー】シーズン最後のモニュメントはポガチャル、ログリッチ、レムコが3強をなす! 2018年覇者のピノは思い出の地でキャリアを終える
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介イル・ロンバルディア
世界的な夏の猛暑から、本格的な秋の訪れを感じられるようになった昨今。サイクルロードレースシーズンは、終わりの時期に差し掛かっている。
特に「イル・ロンバルディア」の名を聞くと、まるで1年が終わるかのような錯覚に陥ってしまう。暦のうえではあと2カ月半ほど残されているのだけれど、“レースロス”になる日々が目に見えていて、スタート前から寂しくて仕方がない。今シーズン最後のモニュメントに寂寥感を抱くのは、終わるその瞬間まで真剣勝負を繰り広げるスターたちの姿に心打たれるからなのかもしれない。
イル・ロンバルディア コースマップ
現地10月7日に開催される“落ち葉のクラシック”イル・ロンバルディア。北イタリアの街、コモとベルガモが交互にスタート地とフィニッシュ地を担当する。今年は前者が出発地になって、後者が走り切った勇者たちを迎え入れる。
238kmに設定される今回のルートは、いつもと同様にイタリア・ロンバルディア州のタフな丘越えが含まれる。主催者発表による登坂区間は以下の通り。
38.3km地点 マドンナ・デル・ギザッロ
100.9km地点 ロンコラ(登坂距離9.4km、平均勾配6.6%、最大勾配17%)
129km地点 ベルベンノ(6.8km、4.6%、8%)
161.9km地点 パッソ・デッラ・クロチェッタ(11.0km、6.2%、11%)
174.7km地点 ザンブラ・アルタ(9.5km、3.5%、10%)
206.6km地点 パッソ・ディ・ガンダ(9.2km、7.3%、15%)
234.8km地点 コッレ・アペルト
高低差図
獲得標高4400mは昨年ほどではないものの(昨年は4800mだった)、それでもハードなコースであることには変わらない。とりわけ、スタートから100kmに達しようかというタイミングから厳しい上りが本格化し、選手たちに休む間を与えない。
レース展開が大きく動くと見られるのが、最後から2つ目の登坂区間パッソ・ディ・ガンダ。9.2kmの長い上りをこなすと、頂上からは19ものヘアピンコーナーが待つテクニカルなダウンヒル。この上りで前線のメンバーが絞り込まれたら、あとはフィニッシュへ向かって急ぐばかり。
イル・ロンバルディア
最後の登坂コッレ・アペルトでは、200mと短いながらも石畳区間が登場。上り終えると残りレース距離は3.2km。ベルガモのフィニッシュラインへ一気に駆け下っていく。
シーズン最後の大一番。今年もビッグネームが集結だ。
タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)は3連覇をかけて乗り込む。初制覇の2021年には、パッソ・ディ・ガンダでの仕掛けでライバルのお株を奪った。今季前半にたびたび見せた衝撃の独走劇を再現する場は、やはりロンバルディアしかないだろう。ツール後に少しばかり悩んだシーズン終盤のスケジュールだけど、9月半ばからは今大会と同じイタリアで連戦をこなしてきて、いずれも上位フィニッシュ。勝利こそ果たしていないが、そんなときこそ不気味である。溜めていたパワーをロンバルディアで発散……なんてことも大いにあり得る。
一方で、挑戦者たちも最強メンバーがそろった。ポガチャルと同じスロベニアンにして友人でもあるプリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ)が、今回は立ちはだかる。チーム全体でブエルタ・ア・エスパーニャを席巻し、みずからは個人総合3位で終えているが、その後も好調をキープ。9月末にはジロ・デル・エミーリアでポガチャル討ちに成功。8年間所属した現チームを今季限りで去ることが決まり、これが最終レースになる。
両選手に好き放題させまいと、レムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)も腰を上げる。ブエルタはよもやのバッドデイに泣いたが、ステージ狙いにシフトしてからの強さも見事だった。今季はワンデーレースでも好調で、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュやクラシカ・サンセバスティアンを華麗に勝ってみせたことを思えば、今大会も観る者の想像をはるかに上回る走りを見せることだって大いにある。ロンバルディアのタイトルはまだ獲っておらず、今回勝てば初制覇である。
ポガチャル、ログリッチ、レムコの3強であることは確かだが、他の選手にもチャンスは当然ある。エンリク・マス(モビスター チーム)は前回、ポガチャルに真っ向勝負を挑んで惜しくも2位。今こそ雪辱のときだ。彼らに続いて3位を収めたミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)も、ロンバルディアのコースとは相性が良い。
イル・ロンバルディア
今季完全ブレイクのベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト)も順当であれば上位戦線に顔を出すはず。グランツールレーサーのベン・オコーナー(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム)もコース適性は高い。
この1週間後に控えるジャパンカップに参戦するメンバーでは、バウケ・モレマ(リドル・トレック)がスタートラインにつく予定。ゲオルク・ツィマーマン(アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)も調子を上げてきている。
そして、この大会ではティボー・ピノ(グルパマ・エフデジ)が長きにわたったレースキャリアに終止符を打つ。ツール・ド・フランスの総合表彰台を始め、たくさんの栄光をつかんだ一方で、涙にくれたレースもあった。そんな苦楽を乗り越えつかんだのが、2018年大会の優勝だった。あれから5年。「強い思い入れがある」と公言するイル・ロンバルディアで最後の雄姿を見せる。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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