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【ブエルタ・ア・エスパーニャ2023 レースレポート:第5ステージ】カーデン・グローブスがステージ2連勝 「似ているようで実際はまったく違った」2つのステージを攻略
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介レース後に肩を組んで記念ん撮影するアルペシン・ドゥクーニンク
スプリントを見越して3人の逃げを途中まで泳がせた前日と同様に、第5ステージはたった1人が先行する流れに。総合狙いの選手・チームも翌日以降に控える“大物”に向けて、この日は意識的に「移動ステージ」にした格好だ。
野生動物の宝庫とされるイベリコ山系を横切り、南へと進んだプロトンは、大小のアップダウンをこなして最後は2日連続のスプリント。ステージカテゴリーこそ丘陵だが、スプリンターチームが中心に立ってスピード勝負へと持ち込んだ。最後はカーデン・グローブス(アルペシン・ドゥクーニンク)が地力の差を見せて、ステージ2連勝。今大会ナンバーワンスプリンターの地位を固めている。
「最高の気分だよ。マイヨ・ベルデを着て勝ったのだから、大きな自信になる。見た感じは昨日と似たようなレイアウトだったけど、実際はまったく異なるものだった。フィニッシュ前が上りじゃなかったので、今日の方がよりスピードを試されるようなスプリントだったんだ」(カーデン・グローブス)
この日は、レースを前にブライアン・コカール(コフィディス)、コーブ・ホーセンス(アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)、ルーベン・ゲレイロ(モビスター チーム)の3人が出走を取りやめ。いずれも前のステージ終盤で発生した大規模なクラッシュに巻き込まれており、コカールについてはフランスに帰国してすぐに検査に臨むという。
さらには、リアルスタートを前にエディ・ダンバー(チーム ジェイコ・アルウラー)が落車し負傷。一度は走り直したが、状態は芳しくなく途中でバイクを降りた。チームはこのステージ途中にもフィリッポ・ザナが胃の不調でリタイアを決めることとなり、中核の2人を1日で失ってしまった。
それでも当然、レースは続いていく。スペインでも最も美しい村とされるモレラの街をスタートした一行は、リアルスタート後の少しばかりの出入りの後にエリック・ファグンデス(ブルゴスBH)ひとりを前方に送り出し、早い段階でスプリンターチームを中心にペースコントロールに入った。
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【ハイライト】ブエルタ・ア・エスパーニャ 第5ステージ|Cycle*2023
ひとり逃げとなったファグンデスは、ブエルタ史上3人目のウルグアイ人ライダー。スタート前には逃げ宣言をしており、有言実行のチャレンジとなった。
「自信はあるんだ。初めてのグランツールでどんな走りができるのか、自分自身が一番興味を持っている。個人的には今日が逃げるには狙い目だと思っているし、チームの目標である“存在感を示す”ことを体現できると良いね」(エリック・ファグンデス)
最大で5分20秒まで開いたタイム差は、アルペシン・ドゥクーニンクがペーシングを本格化させるとあっという間に縮小。残り100kmの段階でおおよそ3分30秒として、ときおりペースの調整を施しながら逃げを捕まえる然るべきタイミングを待った。
このステージ唯一のカテゴリー山岳である2級の上りが始まって、ようやく次なる動きが生まれた。フィニッシュまでは約60km、上りの頂点までは5kmのところでエドゥアルド・セプルベダ(ロット・デスティニー)が追走を開始。前日のステージで山岳賞トップに立ち、アルゼンチン人ライダー初となる同賞ジャージに袖を通したセプルベダは、ペースを上げるとすぐにファグンデスに追いついた。130km近く独走していたファグンデスには付いていく力が残っておらず、頂上を前にセプルベダのひとり逃げの状態へ。もちろん狙いは山岳ポイントで、5点を加算させている。
「1日でも長くこのジャージを着ていたいからね。どこまで着続けられるかはイメージできていないけど、しばらくは水玉ジャージを楽しむつもりだよ」(エドゥアルド・セプルベダ)
マイヨ・ロホを来て走るエヴェネプール
フィニッシュまで40kmを残した段階でファグンデスを捕まえ、直後にはセプルベダも引き戻したメイン集団。あとはおおむね下りと平坦とあり、残り距離を急いだ。スプリントに向けて各チームが隊列を組んで進む最中には、この日唯一の中間スプリントポイントへ。ボーナスタイムも設定されていた局面では、スプリンターたちの間隙を縫ってマイヨ・ロホのレムコ・エヴェネプールが動いた。グローブスらの追撃をかわして見事1位通過に成功。個人総合争いに貴重な6秒をゲットしている。
「この“6秒”がすぐには意味をなさないかもしれない。でも、ここぞという場面で大事なアドバンテージになる可能性は大いにある。そうなることを願ってスプリントにトライしたんだ」(レムコ・エヴェネプール)
最終盤の平坦区間は、アルペシン・ドゥクーニンクやスーダル・クイックステップなどが前を固めてスプリント態勢を整えていく。残り3kmのラウンドアバウトでは集団前方の選手たちがクラッシュし、ステージ優勝候補のひとりと目されていたミラン・メンテン(ロット・デスティニー)らが巻き込まれた。これをきっかけに縦長になったプロトンは、前方に位置する選手たちを中心にスプリントモードへと突入する。
最終局面へ良い状況を作ったのは、やはりアルペシン・ドゥクーニンク。残り1kmを切ってからは他チームに先頭を譲らない。あとは飛び出すだけとなったグローブスは、フィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ)やドリス・ファンヘステル(トタルエネルジー)らの追い上げをかわして一番にフィニッシュラインを通過。2日続けてのステージ優勝は、ポイント賞トップの証であるマイヨ・ベルデを着てのものとなった。
レース後に仲間と喜び合うグローブス
「グリーンジャージを着て勝つのは、また違った気分だね。スペシャルだよ。クラッシュの影響で残り2.5kmまでにチームメート3人を失ってしまったのだけど、それでもまだリードアウトマンを残せていたのは幸運だった。パーフェクトに役目を果たしてくれた仲間のためにも、どうしても勝ちたかったんだ」(グローブス)
この勝利で、ポイント賞争いでは完全な独走態勢に。2位以下に60点以上の差をつけている。前日には特に意識していないと語ったマイヨ・ベルデだが、ジャージについてはこの先どう捉えていくつもりだろうか。
「まぁ、ステージ優勝狙いは変わらないと思うのだけど、このジャージも可能なら着続けたいよね。今日も中間スプリントは当初予定していなかったけど、調子が良くてチームメートとの連携もうまくいっていたからチャレンジしてみたんだ。レムコが1位通過したがっていたのは横にいて分かっていたので、あえて動きを合わせてみたところもある。あの状況では2位通過でも満足できるし、ジャージについては様子を見ていくことにするよ」(グローブス)
レースリーダーを示すマイヨ・ロホは、引き続きレムコが着用する。ボーナスタイムが生きて、個人総合2位のエンリク・マス(モビスター チーム)とはタイム差11秒となった。
ここ2日間をうまくやり過ごした総合系ライダーたちは、次の第6ステージで再び“出番”を迎える。ブエルタではおなじみとなったハバランブレ天文台を目指す、今大会2回目の山頂フィニッシュ。行程183.5kmの最後10.9kmは、15%の急坂が続く険しきクライミング。ほんの一瞬で大差がつくこともあるこの上りで、今年はどんな展開が待っているだろうか。極端に言ってしまえば、何もせずともマイヨ・ロホ争いに変化が生じる区間なのである。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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