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【ブエルタ・ア・エスパーニャ2023 レースレポート:第4ステージ】今大会最初のスプリンターズステージはカーデン・グローブス勝利 「僕のためのコースセッティングかのようだった」得意レイアウトで2日前の雪辱
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介フィニッシュ直後のカーデン・グローブス
例年山岳比重の高いブエルタ・ア・エスパーニャゆえ、スプリンターが活躍するチャンスは限られる。特に今年は平坦にカテゴライズされるステージが4つしかないから、平坦ステージ以外でもみずからの脚質で対応可能な日を見つけて、ねらいを定めていかねばならない。第4ステージは丘陵区間にカテゴライズされていたが、全体を見通すと下り基調で、最後の山岳はフィニッシュの約30km手前。そこから先は駆け下るだけだから、スプリンターの多くがねらい目としていた。
その見立て通り、ステージ優勝争いの主役は上れるスプリンターたちだった。2カ所の3級山岳を問題なくこなして、上り基調のフィニッシュ前も力強く走り切る。それを実行させたのは、カーデン・グローブス(アルペシン・ドゥクーニンク)だった。
「チームとしてアグレッシブに、そしてイメージ通りにレースを進めることができた。あとは僕が一番にフィニッシュするだけだった。勝敗を分けたのは我慢強さだったかもしれない。僕には忍耐力があったね」(カーデン・グローブス)
前日にマイヨ・ロホ争いの本命たちが競ったピレネーにいったん別れを告げ、前々日までのカタルーニャ州へと戻る1日。リアルスタート直後にアンドラからスペインに入国し、長く下り基調のルートを進む。レース後半に入って2つの3級山岳が待つが、これを越えればあとは再度の下り基調。フィニッシュ地タラゴナでの最終局面はコーナーが多く、少しばかり上っているがパワー自慢の選手たちが力を発揮しやすいレイアウトだ。
そんなレースは、スプリントフィニッシュを見越してか、リアルスタートとほぼ同時に飛び出した3人を容認して進行。逃げメンバーのうち、エドゥアルド・セプルベダ(ロット・デスティニー)は山岳賞争いで2位につける。同賞トップのレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)に代わって、繰り上がりで山岳賞ジャージを着用。もっとも、レムコは個人総合でもトップに立つから、マイヨ・ロホが優先される。
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【ハイライト】ブエルタ・ア・エスパーニャ 第4ステージ|Cycle*2023
「僕のようなライダーでも主人公になれると証明したい。狙うとしたら山岳賞ジャージだから、代理で着用するのではなく実際に首位に立ってこの水玉を着たいと思っているんだ」(エドゥアルド・セプルベダ)
その思いを体現しようと、アンデル・オカミカ(ブルゴスBH)とダビ・ゴンサレス(カハルラル・セグロスRGA)と協調しながらレースをリード。後半まできっちりタイム差を保って、2つの3級山岳ともに1位通過を果たした。このステージだけで6点を稼ぎ、晴れて山岳賞トップに。アルゼンチン人としては初めて、代理ではなく正規の形でグランツールの山岳賞ジャージを着用するライダーとなった。
メイン集団はというと、先頭3人とのタイム差を2分前後にキープ。グローブスで勝ちにいくアルペシン・ドゥクーニンクや、アルベルト・ダイネーゼのスプリント力に賭けるチーム ディーエスエム・フィルメニッヒなどが主にペーシングを担った。
フィニッシュまで100kmを切ってからは、その差は縮まる一方。完全に射程圏に捉え、2カ所の山岳区間も問題なくクリアすると、あとはどのタイミングで先頭メンバーを捕まえるかに。山岳ポイントにフォーカスしていたセプルベダが早々に集団へと戻り、残り19kmであとの2人もキャッチ。この頃には集団前方では複数チームが隊列を組んでポジショニングを図っており、フィニッシュに向けた準備は着々と進んでいた。
残り10kmでイネオス・グレナディアーズが先頭に出ると、プロトンのスピードはもう一段階上がる。そこにアルペシン・ドゥクーニンクやロット・デスティニー、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティなども絡む。
スプリントへの機運が高まる中、残り4kmで大規模なクラッシュが発生した。ステージ優勝候補のブライアン・コカール(コフィディス)や、個人総合8位につけるサンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス)らが巻き込まれてしまった。全体のペースが上がっている状況とあり、コカールは戦線から脱落。ブイトラゴも救済のある3km圏外での落車で、先々の総合争いへの期待が薄れる格好となってしまった。
フィニッシュへ急ぐプロトン。コーナーが連続する最後の2kmでは、めまぐるしく先頭が入れ替わる。アルペシン・ドゥクーニンクやロット・デスティニーに加えて、UAEチームエミレーツもトレインを組んで上がってくる。主導権争いが混沌としたまま最終局面へと突入した。
残り1kmのフラムルージュ通過直後に先頭に立ったのはアルペシン・ドゥクーニンク。それをUAEチームエミレーツがかわすと、フィニッシュ前350mでフアン・モラノを発射。これを真っ先に追ったのはグローブス。モラノの背後に入り、加速のタイミングを計りながら最後のコーナーを抜けると、あとは持ち前のパワーを発揮するだけ。モラノをパスして、一番にフィニッシュラインを駆け抜けた。
両手を広げてフィニッシュするグローブス
「正直言うと、集団コントロールに2人を送り込んだ時点では少し不安だった。できるだけアシストの枚数はフィニッシュ前に残しておきたかったからね。それに、最後の連続コーナーでは2人がクラッシュしてしまい、より難しい状況になってしまったんだ。それでも、僕には自信があった。一瞬モラノとの差が広がったけど、彼は早めに仕掛けていたからどこかでスピードダウンすると思っていたんだ。冷静に対処できて良かったよ」(グローブス)
ステージ2位に終わっていた2日前の雪辱を果たし、フィニッシュライン通過直後にはホッとした表情を見せたグローブス。ブエルタは通算2勝目。今季はジロ・デ・イタリアでも1勝しており、グランツールでしっかり強さを見せている印象だ。これでポイント賞でも首位に浮上。第5ステージではマイヨ・ベルデを着て走る。
「もう十分に良いシーズンだと思えるよ。でもいつだって勝ちたいから、これが今年最後の勝利とならないようチャレンジは続けていくよ。マドリードでのマイヨ・ベルデを目指すかって? さすがにまだ分からないね。個人的にも、チームとしてもねらいはステージ優勝。ポイント賞を狙うなら中間スプリントでも動いていく必要があるけど、ここまでは一度もトライしていないんだ。今後も優先順位は変わらないんじゃないかな」(グローブス)
総合系ライダーたちは、前日の激しい争いとは打って変わって静かにこのステージを完了。ブイトラゴが後退した以外は、全員が集団内で走り終えている。レムコは引き続き、マイヨ・ロホを着て走る。
レムコ・エヴェネプール
「最後の数キロは慌ただしかったけど、チームメートが僕を守ってくれたから不安なく走れたよ。昨日負った傷(フィニッシュ直後に関係者と接触し落車。右目上を負傷)は問題ない。チームドクターのおかげだね。明日も、今日と同様に穏やかなステージであることを願うよ」(レムコ・エヴェネプール)
第5ステージもスプリンターにチャンスがある。前半から細かなアップダウンが連続し、後半には2級山岳が控える。それでも、最後の25kmは下りと平坦だけ。レムコの言葉にあるように、総合系ライダーたちは穏やかにステージを終えたいと思っている。レースのコントロールを任されるのは、第4ステージ同様にスプリンターチームになりそうだ。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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