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サイクル ロードレース コラム 2023年7月17日

【ツール・ド・フランス2023 レースレポート:第15ステージ】“ワウト対決”はプールスに軍配!サン・ジェルヴェ・モン・ブラン頂上一番乗り。ヴィンゲゴーとポガチャルの頂上決戦は「引き分け」

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ワウト・プールス(バーレーン・ヴィクトリアス)

ワウト・プールス(バーレーン・ヴィクトリアス)

ツール・ド・フランスのメンバー入りがかなうかは、ギリギリまで分からなかった。前哨戦クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでスッキリ決めたかったのに、高地トレーニング中に体調を崩してしまった。ツアー・オブ・スロベニアでの走りが評価されメンバー入りを果たすことになるわけだが、ツールを走れば大会後半に好成績を残せる手ごたえは早くからあった。調子のピークがそこへ行くよう、早くから準備していたからだ。

ツールはアルプスの山々を進んでいる。本格山岳3連戦の最後にして、第2週の最終日。5つのカテゴリー山岳を上って、1級山岳サン・ジェルヴェ・モン・ブランの頂上にフィニッシュした第15ステージは、ワウト・プールス(バーレーン・ヴィクトリアス)が勝利。35歳288日にして初めてとなる、ツールのステージ優勝だ。

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「こういう瞬間がたまらなく大好きなんだ。ツール・ド・フランスで勝つことを子供の頃から夢見ていた。今日は本当にアメイジング! パーフェクトだ!」(ワウト・プールス)

いつものことながら、ツールの第2週はただただ厳しい。その最終日は、コース上に5つの峠が待ち構え、今大会4度目にして最後となる山頂フィニッシュである。スタート地のレ・ジェは、過去2回マウンテンバイクの世界選手権を開催。だからか、スタート会場へMTBで向かうサイクリストの姿が多かったように映った。

この街を出発してしばらくは山らしい山を行かないけれど、72km地点に置かれる中間スプリントポイント通過を機にテイストは山向きに。レース中盤以降は立て続けに5つのカテゴリー山岳を上ることになり、フィニッシュ前約12kmから上る2級山岳アメランは最大勾配17%。これを上り終えたらすぐに1級山岳サン・シェルヴェ・モン・ブランへと突入する。ここ数日と同様、現地は30度を超える気温となり、消耗戦となるのは必至である。

前日の大規模落車の影響で脳震盪の診断を受けたダニエル・マルティネス(イネオス・グレナディアーズ)が未出走。157選手がコースへと繰り出した。マチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク)のアタックで幕を開けたレースは、この日も簡単に逃げは決まらず、アタックとキャッチの繰り返し。30kmほどこの状態が続いた。

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【ハイライト】ツール・ド・フランス 第15ステージ|Cycle*2023

ニルス・ポリッツ(ボーラ・ハンスグローエ)のアタックを数人が追いかけ、さらに次々と選手たちが追随。40km地点手前で27人の先頭グループが形成され、そこからさらにジュリアン・アラフィリップ(スーダル・クイックステップ)とアレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・カザクスタン チーム)が抜け出す。先頭2人の後ろでは、追走となるグループが最大37人まで膨らんでいた。

全体的にハイペースで進行する中、メイン集団でまたも大規模クラッシュが発生した。集団前方を走る選手が沿道の観客と接触。バランスを崩したところに次々と選手が絡んでしまった。落車した選手たちは全員バイクに戻ったが、集団はこれら選手たちを待つ判断をしたことで意識的にスピードダウン。結果的に、これが逃げを容認する格好になった。

やがてアラフィリップとルツェンコを捕まえて39人になった先頭グループは、メイン集団に対して8分のリード。中間地点を過ぎたあたりからマルコ・ハラー(ボーラ・ハンスグローエ)がひとりで抜け出したが、10kmほど進んだところでルイ・コスタ(アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)がジョイン。コスタはすぐにハラーを引き離して単独先頭に立つが、このステージ2つ目のカテゴリー山岳である1級山岳クロワ・フリで後続が再合流。この時点で前線に残ったのは20人。

続く3級の上りで、今度はマルク・ソレル(UAEチームエミレーツ)がアタック。頂上通過後の下りでプールスやワウト・ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ)、クリスツ・ニーランズ(イスラエル・プレミアテック)が追いつく。このうち、ニーランズはモーターバイクからのボトル受け渡しの際に接触し落車。残った3人は後ろの選手たちに対して1分以上のリードを確保し、さらにはメイン集団とは約7分30秒差。先頭3選手の中からステージ優勝者が出る可能性が高まってきた。

約10kmにわたるダウンヒル区間では、ソレルが慎重に下るあまりに2人の“ワウト”から差をつけられてしまう。両ワウトはソレルを待つことなく2級山岳アメランを上り始める。その途中、フィニッシュまで残り10.7kmでプールスがアタック。ファンアールトはついていけず、プールスが独走態勢に持ち込んだ。

ワウト・ファンアールト(右)

ワウト・ファンアールト(右)

「ステージ優勝するためには、彼(ファンアールト)と戦うしかなかった。自信があったわけではないけど……チャレンジのしがいはあったね」(プールス)

フィニッシュへ続く1級山岳サン・ジェルヴェ・モン・ブランの上りでもプールスの快調なペースは変わらず。後ろでは一度追いついてきたソレルをファンアールトが再び引き離し、テンポでプールスを追うがその差は開く一方。

十分なリードを確保したプールスが、サン・ジェルヴェ・モン・ブランを一番登頂。35歳288日でのステージ優勝は、ツール史上23番目の年長者にあたる。

「僕のアタックにファンアールトがついてこなかったから、このまま行くしかないと思ったんだ。ダウンヒルは彼の方が間違いなく速いし、勝負をかけるなら上りしかないのは分かっていた。後ろにはミケル・ランダが控えていたから、僕で勝負できなくても問題はなかった。チーム戦になれば僕たちは強いからね。自信はあったよ」(プールス)

2016年にはリエージュ~バストーニュ~リエージュを制し、ワンデーレースからステージレースまで幅広くこなすマルチライダーだけに、ツール初勝利は意外に感じるファンも多いかもしれない。2019年まで所属したチーム スカイ(現イネオス・グレナディアーズ)の頃について問われると、こう答えた。

「嘘でも何でもなく、チーム スカイで走った時間は本当に楽しかったよ。プロトン最高のチームだと今でも思っている。僕はそのチームの一員としてツールを4回走って、すべてでチームリーダーがマイヨ・ジョーヌを獲得している。名誉なことだよ。でも、ステージ優勝を目指して走る機会は一度もなかったね。仕方ないことは分かっているよ。それでも、ライダーであれば勝ちたいと思うのが当たり前じゃない?」(プールス)

今大会直前までメンバー入りできるかのボーダーライン上にいたというが、きっちり結果で示してみせた。前述したように、大会後半になれば実力を発揮できる自信はあった。本当は第3週で力を見せられる算段だったから、ちょっと想定より早まったけど、成功は成功である。

ワウト・プールスがグランツール区間初優勝

ワウト・プールスがグランツール区間初優勝

「今日はただの勝利ではないよ。ジーノ(6月のツール・ド・スイスで事故死したジーノ・メーダー)の存在がより意味を持たせている。最後は彼が背中を押してくれたと思っているよ。彼が亡くなった時はスロベニアで走っていたのだけれど、ライダーである以上ペダルを止めるわけにはいかないんだ。寂しいけど、僕は走り続けるよ」(プールス)

ステージ優勝争いとは別のレースになったマイヨ・ジョーヌ争い。アメランめがけて集団のペースが上がると、UAEチームエミレーツが上りでペーシング。人数が一気に絞られていき、上位陣による戦いのムードが高まっていく。カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアーズ)がアタックを試みたが決まらず、UAEチームエミレーツがペースを維持。個人総合4位につけるジャイ・ヒンドレー(ボーラ・ハンスグローエ)や同7位のサイモン・イェーツ(チーム ジェイコ・アルウラー)らが遅れ、サン・ジェルヴェ・モン・ブランでは同10位のダヴィド・ゴデュ(グルパマ・エフデジ)も後ろへ。

アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ)の牽きが始まると、ロドリゲスとセップ・クス(ユンボ・ヴィスマ)も下がって、残ったのはヴィンゲゴーとポガチャル。残り2kmを切ってからはイェーツを前に行かせたまま、2人が牽制状態に。互いが見合っている間にロドリゲスが追いついたが、それでも両者は依然牽制。残り1kmでポガチャルがアタックしたけど、ヴィンゲゴーも負けない。前待ちしていたソレルとイェーツの牽きからポガチャルがもう一度仕掛けたがそれも決まらず、両者がっぷり四つのままフィニッシュラインへ。総合タイム差10秒のまま、第2週を終えることになった。

「今日のところは引き分けだね。これがマイヨ・ジョーヌを争うということだよね。観る側はワクワクしているんじゃない?」(ヨナス・ヴィンゲゴー)

2回目の休息日を経て、第16ステージは今大会唯一の個人タイムトライアル。山岳比重の高い今大会らしく、TTコースも起伏に満ちたものになった。主役は個人総合上位陣で決まりだろう。主催者によれば、36分程度のフィニッシュタイムで争われるのではないか……とのことだけれど、さあどうなるだろう。“2強”のタイム差はきっと大なり小なり揺らぐことだろう。

「コースは5月にチェック済みだし、明日(休息日)も、当日の朝も見直すつもりだよ。僕は短めのタイムトライアルが得意だから、22.4kmという距離はピッタリだ。特に今回のような変化の多いコースは大好きだよ」(ヴィンゲゴー)

「タイムトライアルで何らかの変化が出ると思うけど、そこだけで勝負は決まらないだろうね。まだ山岳も残っているし、最後まで気は抜けない。TTコースは僕向きで得意なレイアウト。明日最終調整して走り方を決めるよ」(タデイ・ポガチャル)

●ステージ優勝 ワウト・プールス(バーレーン・ヴィクトリアス)コメント
「リエージュ~バストーニュ~リエージュに勝って、ツールのステージ優勝もできた。自分でもすごいと思うよ。テレビや沿道でツールに熱くなる人たちを見て、僕もツールを走りたいと思うようになったんだ。そこで勝てて本当に幸せだ。

ツールを走るのは10回目なのだけど、今回もとても良い思い出になりそうだよ。僕は基本、サポート役として走るので、限られたチャンスを生かすしかないんだ。実は昨日もチャンスはあったのだけれど、うまくいかなかった。今日こそはと思って臨んだよ。逃げの人数が多すぎることが気がかりだったけど、迷わず行ったことがその後につながったね。ソレルのアタックをファンアールトが追ったのを見て、僕も行かなきゃと思ったんだ。

最後の1kmは楽しもうと思ったけど、勾配が急すぎてそれどころではなかった。改めて、勝つことの難しさを教えてくれたステージだった。この1カ月間は感情の起伏がジェットコースターのようだったけど、この勝利はジーノ(メーダー)に捧げたい」

●マイヨ・ジョーヌ ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ)コメント
「僕たちの戦いをみんな楽しんでくれているとうれしいね。個人的にもチームとしても、今日のステージに自信をもっていたけど、クラッシュがチームメートに影響を与えてしまった。

落車した選手みんなが次のステージも走れることを心から願うよ。沿道のみなさんには、“路上に出たり、ビールを選手にかけたりせず、純粋にレースを楽しんで応援してください”と伝えたい」

●マイヨ・ブラン タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)コメント
「終盤勝負と考えていた。ただ、ヴィンゲゴーの状態の良さも走りながら感じていて、簡単に引き離すことはできないとは分かっていた。上りの勾配が彼に合っていたようだね。

第3週へは自信をもって入っていくことができそうだよ。チームみんな絶好調なんだ。休息日も楽しんで過ごしたい。僕だけでなく、アダム・イェーツも順位を狙っていけるので、ともに最後まで良いレースをしていきたいと思っているよ」

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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