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【Cycle*2023 リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ ファム:レビュー】デミ・フォレリングが史上2人目のアルデンヌクラシック・ハットトリック達成! 「二度とやってこないかもしれないビッグチャンス。最高のパフォーマンスができた」
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ ファムでも優勝デミ・フォレリング、アルデンヌクラシック・ハットトリック達成
男子と同様にアルデンヌクラシックが整備された初年度に、当時ナンバーワンライダーだったアンナ・ファンデルブレッヘンがハットトリックを達成。鮮烈な連勝劇から6年、オランダ人ライダーの後輩にあたるデミ・フォレリング(チーム SDワークス)が鮮やかに、美しく、それを再現してみせた。
好勝負が繰り返されてきた春のクラシック戦線は、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ ファムが千秋楽。終盤の飛び出しからエリーザ・ロンゴボルギーニ(トレック・セガフレード)とのマッチスプリントに持ち込んだフォレリングが、この大会では2年ぶりの優勝。今シーズン5勝目、そしてウィメンズプロトン史上2人目の“アルデンヌクラシック・ハットトリック”を決めた。
「心の底から勝つことを望んでいました。アルデンヌクラシックでハットトリックを達成するチャンスなど、二度とやってこないと思っていましたからね。自分でも、今日の走りはスペシャルパフォーマンスだったと言い切れますよ!」(デミ・フォレリング)
2017年に初開催され、今回が7回目となる大会は、バストーニュからリエージュまでの142.8kmで争われた。早い段階でセヴェリーヌ・エロー(コフィディス)が飛び出し、最大で2分25秒のリードを得たものの、9つある登坂区間を前に集団へと引き戻された。
レースの流れを左右するポイントとなったのは、頂上が66.5km地点にあたる3つ目の上りコート・ド・ストクー(登坂距離1km、平均勾配12.5%)だった。急勾配を使って、マーレン・ローセル(チーム SDワークス)、アマンダ・スプラット(トレック・セガフレード)、カタジナ・ニエウィアドマ(キャニオン・スラム レーシング)、エスミー・ペイパーカンプ(チーム ディーエスエム)、アンナ・ヘンダーソン(ユンボ・ヴィスマ)が集団から抜け出した。その後ニエウィアドマがパンクをきっかけに集団へと戻ったが、あとの4人は逃げ続けて、終盤の重要区間へと入っていった。
J SPORTS サイクルロードレース【公式】
【ハイライト】リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ ファム|Cycle*2023
独走するマーレン・ローセル
とりわけローセルの動きが冴えた。勝負どころの1つであるコート・ド・ラ・ルドゥート(1.6km、9.4%)で、これまで一緒に逃げてきた3人を切り離して単独先頭に。メイン集団では、前回女王のアネミエク・ファンフルーテン(モビスター チーム・ウィメン)がアタックするも集団を崩すまでは至らない。逃げていた選手たちをキャッチした集団は、トレック・セガフレードが中心となってひとり逃げ続けるローセルを追いかけた。
その構図のまま迎えた最後の難所、コート・ド・ラ・ロシュ・オー・フォコン(1.3km、11%、最大勾配13.2%)でトレック・セガフレードはシリン・ファンアンローイを牽引役に充てる。すると集団前方で中切れが発生し、それに合わせてロンゴボルギーニが追撃開始。それまで脚を残してきたフォレリングがみずからロンゴボルギーニとの差を埋めると、集団はいよいよ精鋭メンバーだけに絞られた。
ラ・ロシュ・オー・フォコンを上り切ったところでローセルに追いついた精鋭グループだったが、再びローセルがスピードアップ。ロンゴボルギーニが反応し、2人で抜け出す形になった。
「ロンゴボルギーニがついてきた時点で、逃げ切るのは戦術として現実的ではないと感じました。どこでデミ(フォレリング)に引き継ぐかを考えていましたが、ベストなタイミングで合流してくれましたね」(マーレン・ローセル)
フォレリングは小さな上りを利用して前の2人に追いつくと、そのままロンゴボルギーニを引き連れて先行開始。優勝をかけたマッチアップが始まった。
「エリーザ(ロンゴボルギーニ)がそのまま行こうと言ってくれたことは幸運でした。彼女との勝負に集中できましたし、後ろのグループにマーレン(ローセル)が控えていたのでギャンブルできる状況が整いました」(フォレリング)
下りと平坦を経て、ついにリエージュの街へ。残り1kmでロンゴボルギーニをを前に位置させたフォレリングは、相手の仕掛けを待ってスプリントを開始。ロンゴボルギーニのかかりも悪くはなかったが、残り100mから抜群の伸びを見せたフォレリングに軍配が上がった。
コート・ド・ラ・ロシュ・オー・フォコンで先頭に出るロンゴボルギーニ、フォレリング、シャベイ
「みんなが私をマークするであろうことは分かっていました。よくあるシチュエーションですが、臆せず一歩踏み出せたことが勝ちにつながりました。チームが私に勇気を与えてくれていることも大きいです。チームメートみんなが私に信頼を寄せてくれていたので、何としても勝たないといけないと思っていました」(フォレリング)
史上2人目のアルデンヌクラシック・ハットトリック。初代達成者のファンデルブレッヘンは現在、チーム SDワークスのスポーツディレクター(監督)を務めているが、このレースの指揮は割り当てではなかったそう。
「彼女の目の前で達成したかったので、この場にいないのは少し残念。でも、自宅のテレビの前で飛び跳ねていると思いますよ。彼女は私のコーチでもあるので、日頃から密に連絡を取る間柄です。一緒に特別な仕事を果たせたと言って良いでしょう」(フォレリング)
チーム SDワークスは、これで今季のUCIレース13勝目。そのうちの5勝をフォレリングがたたき出している。名実ともに今のウィメンズプロトンを牽引する最強チーム。この先はステージレースがメインになるが、果たしてどこまでこの勢いで飛ばしていくだろうか。
まずは5月に控えるスペインでのステージレース3連戦、ラ・ブエルタ フェメニーナ、イツリア・ウィメン、ブエルタ・ア・ブルゴス フェミナスへ。エースはもちろん、フォレリングだ。
「ツール・ド・フランス ファムがこれからの最大目標になります。近々控えるレースと高地トレーニングでツールに向けたモチベーションを高めていきたいと思います」(フォレリング)
春の主役の視線は、早くも次へと向けられている。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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