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【Cycle*2023 リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ ファム:プレビュー】フォレリングが史上2人目のアルデンヌ・ハットトリックに挑む 無双のクラシック女王に誰かがストップをかけるのか!?
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介アルデンヌクラシック最終戦、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ ファム
“ラ・ドワイエンヌ”(最古参)として世界で愛されるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュだが、ツール・ド・フランスよりも古い歴史を持つメンズレースとは対照的に、ウィメンズシーンにおいては今年が7回目とまだまだ歴史は浅い。2017年に男子と同様にアルデンヌクラシックのレースセッティングが整い、春の重要イベントに数えられるようになった。
その年、初代女王に就くと同時にアルデンヌクラシック・ハットトリック(3連勝)を達成したのがアンナ・ファンデルブレッヘン。現在はウィメンズプロトン最強との呼び声高いチーム SDワークスのスポーツディレクター(監督)を務めており、今回は自国の後輩を“真の後継者”へと導くことが最大のミッションになる。
チーム SDワークスのスーパーエース、デミ・フォレリングが史上2人目となるハットトリックへの挑戦権を獲得した。アムステルゴールドレース、ラ・フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌでそれぞれ優勝。リエージュも勝てば、ファンデルブレッヘンの記録に並ぶ。
新たな伝説への期待が高まる今大会。バストーニュからリエージュまでの142.8kmにレース距離が設定され、スタートから約35kmで男子レースの後半部分とほぼ同じルートを走行する。
ポイントとなる登坂区間は9カ所。
51.7km地点 コート・ド・モン=ル=ソワ(登坂距離1.7km、平均勾配7.9%)
60km地点 コート・ド・ワンヌ(3.6km、5.1%)
66.5km地点 コート・ド・ストクー(1km、12.5%)
70.8km地点 コート・ド・オート・レヴェ(2.2km、7.5%)
84.9km地点 コル・ドゥ・ロジエ(4.4km、5.9%)
97.6km地点 コル・ドゥ・マキザール(2.5km、5%)※女子のみ採用される区間
108.8km地点 コート・ド・ラ・ルドゥート(1.6km、9.4%)
119.3km地点 コート・デ・フォルジュ(1.3km、7.8%)
129.5km地点 コート・ド・ラ・ロシュ・オー・フォコン(1.3km、11%、最大勾配13.2%)
上りひとつひとつの距離が長く急勾配も多い
他のアルデンヌ2戦と比較すると、上りひとつひとつの距離が長く、急勾配も多い。それゆえ、登坂区間を過ぎるたびに集団は人数が絞り込まれていく。レーススピードや天候に関係なくサバイバル化していき、フィニッシュまで残り34kmで迎えるコート・ド・ラ・ルドゥートでは戦力の高いチームを中心にサブエースクラスが仕掛けることが想定される。
2年ぶりに採用されるコート・デ・フォルジュでワンパンチあって、最後の難所コート・ド・ラ・ロシュ・オー・フォコンが一番の勝負どころ。この頂上からフィニッシュまでは13.3km。少しばかりの上りと一気にスピードに乗るダウンヒルをこなすと、リエージュの街へ向かう平坦区間となる。この時点で独走する選手が現れているのか、または小集団で最終局面に突入するのかで、フィニッシュ前の状況は大きく変わってくる。ちなみに前回は、アネミエク・ファンフルーテン(モビスター チーム・ウィメン)がコート・ド・ラ・ロシュ・オー・フォコンでのアタックを成功させ、ひとりでフィニッシュに到達している。
今年の焦点は、「誰かフォレリングを止める選手が現れるのか」。前述の通り、アルデンヌ2戦を制しているフォレリングがこの大会でも当然、優勝候補筆頭に挙がる。
このレースの戦い方もすでに熟知している。もっとも、前々回勝っていて、そのときは5人のスプリントを制してのものだった(最終局面ではファンデルブレッヘンがアシストした)。先のアムステルでは独走で、フレーシュでは難所・ユイの壁での圧倒的なプッシュで勝利。レース展開に合わせてあらゆる勝ち方ができるあたり、死角はかなり少ないといえる。
強いて別要素を挙げるとするなら、前回より登坂区間が2カ所増えている点。前記したように男子レースの後半部とほぼ同じルートを走る形になったことで、共通の登坂区間が増加。長い上りや高低の変化がこれまでより多くなったあたりは、フォレリングにとってプラスになるのか、はたまたマイナスとなるのか。アシストにフレーシュでも機能したマーレン・ローセルらが控えていることを思うと、後者はなかなか考えにくい。
熱狂的なファンが多く路上ペイントも力作揃い
とはいえ、ライバルたちからすればフォレリングの強さをただただ黙って見ているわけにはいかない。2連覇がかかる現・世界女王のファンフルーテンは前回の独走を再現できるか。フレーシュ2位のリアヌ・リッパートとの共闘で打倒フォレリングを目指す。
トレック・セガフレードは、エリーザ・ロンゴボルギーニ、ルシンダ・ブラント、シーリン・ファンアンローイと勝利を狙える選手が複数そろう。そこに、フレーシュでは一時独走したアマンダ・スプラット、育休から復帰のリジー(エリザベス)・ダイグナンらが加わり、出場チーム随一のチーム力。
前回2位のグレース・ブラウン(FDJ・スエズ・フチュロスコープ)、上位常連のカタジナ・ニエウィアドマ(キャニオン・スラム レーシング)、前回4位のアシュリー・モールマン(AGインシュランス・スーダルクイックステップ)、調子を上げているマビ・ガルシア(リブレーシング・エクストラ)あたりも、終盤のエース対決には確実に加わってくるだろう。
また、ヒューマンパワードヘルスは與那嶺恵理を出走予定リストに加えており、本番での走りにも期待が膨らむ。
泣いても笑っても、これが2023年のスプリングクラシック最終戦。熱狂的なファンが待つリエージュのフィニッシュラインで、誰が栄誉に浴するだろうか。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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