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サイクル ロードレース コラム 2023年3月19日

【Cycle*2023 ボルタ・ア・カタルーニャ:プレビュー】上れなきゃ始まらない! ワールドツアー屈指の山岳ステージレースは「グランツール前哨戦」の様相

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ボルタ・ア・カタルーニャ

最終局面モンジュイックの丘へと入る大通り

パリ〜ニースティレーノ〜アドリアティコと続いたステージレース戦線は、いよいよスペインへ向かう。同国に春の到来を告げるのが、北東部の地中海に面したカタルーニャ州を舞台にする「ボルタ・ア・カタルーニャ」である。

とにかく攻略が難しい。クイーンステージを征服すれば大会そのものも勝てるかというと、決してそうではない。“ド平坦”のステージは存在しないし、大なり小なり重要な登坂区間が毎ステージあって、それらをしっかりクリアしていかねば、全日程を完走することすら危うい。速さもさることながら、“強さ”と“スマートさ”が問われるレースといえる。2021年にイネオス・グレナディアーズが見せたチーム戦や、前回の2022年大会でセルヒオ・イギータ(ボーラ・ハンスグローエ)がステージ狙いの選手とともに逃げて最終的にリーダージャージを奪取したように。

それでは、コースをチェックしながら、いかにタフなレースなのかを実感していただこう。

第1ステージからカテゴリー山岳が4つ登場。とはいえ、2級と3級が2つずつと、これはまだ序の口。164.5kmで獲得標高は2088m。フィニッシュ前は上り基調で、昨年は同じ場所でマイケル・マシューズ(現チーム ジェイコ・アルウラー)がスプリント勝利している。

第2ステージで総合争いが動き出す。この大会ではおなじみのヴァルテルへ。前半の平坦区間を過ぎ、後半から山岳地帯へ。1級山岳を越えてからは、標高2135mのヴァルテル頂上へ約20km登坂。中腹から一気に勾配が厳しくなるこの上りで、2年前はイネオス勢が大暴れ。最終的にアダム・イェーツ(現UAEチームエミレーツ)が大会制覇へつなげている。

第3ステージも重要な山岳ステージ。超級山岳コル・デ・ラ・クレエタを上り、最後はこれまたおなじみの1級山岳ラ・モリナへと上がる。獲得標高は3962mを数える。同地にフィニッシュした昨年の第3ステージでは、今年も出場するベン・オコーナーAG2Rシトロエン)が勝利している。

アントニオ・ガウディもインスピレーションを受けたモンセラート山

建築家アントニオ・ガウディもインスピレーションを受けたと言われるモンセラート山

第4ステージは今大会最初の平坦ステージ。とはいっても、前日に上ったラ・モリナをもう一度上らないといけないし、2つの3級山岳と何もカテゴライズされない上りがあったりと、それなりにハード。

個人総合争いの形勢がはっきりするのが第5ステージ。最後に上る超級山岳ラ・ポートに尽きる。最後の17.2kmで高度にして965mを一気に駆け上がる。上りが進むにつれて勾配が厳しくなっていくのも特徴的だ。

今大会2回目の平坦ステージにカテゴライズされる第6ステージは、スタート直後から大小さまざまなアップダウンがあって、レース後半には2級と3級1つずつカテゴリー山岳も。高低図にするとのこぎりの歯のようなイメージで、スプリンター向けとは正直言い難い。

そしてフィナーレは今年もバルセロナ。前半で2級山岳を含むいくつかの上りをこなして、後半からは名所・モンジュイックの周回コースへ。6回丘越えをして、大会が閉幕する。

これだけのコースが用意されたとあり、グランツールを見据える猛者たちが集結する。さながらグランツールの個人総合争いである。

五つ星ライダーとして、世界王者レムコ・エヴェネプールスーダル・クイックステップ)と、先のティレーノ~アドリアティコを鮮やかに制したプリモシュ・ログリッチユンボ・ヴィスマ)の2人を挙げたい。エヴェネプールはUAEツアーを制した後、この大会に照準を定めると宣言。ログリッチは急遽参戦したティレーノ~アドリアティコで“まさかの”快進撃。昨年負った肩の大けがからの回復が思った以上に進んでいることを証明した。そして何より、両人ともジロ・デ・イタリアが当面の最大目標。まさに前哨戦である。

ジロ組でいえば、ティレーノ~アドリアティコで個人総合2位に入ったジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)、ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ)、ジュリオ・チッコーネトレック・セガフレード)もこの大会を足場に目指すべき本番へとつなげる。

カタルーニャサーキットを通過

カタルーニャサーキットを通過

かたや、ツールを予定する選手としては、2年前の覇者A・イェーツ、昨年この大会で個人総合2位のリチャル・カラパスEFエデュケーション・イージーポスト)、昨年ステージ1勝のオコーナー。さらにロマン・バルデチームDSM)、ミケル・ランダバーレーン・ヴィクトリアス)の名が挙がる。

これだけでも十分お腹いっぱいなメンツだけれど、まだまだ忘れてはならない選手たちが。大事故からの完全復活を目指すエガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ)は、これが今季ヨーロッパ初戦。南米でのレースで膝を痛めて戦線を離れていたが、いよいよ本格始動。

エヴェネプールを支えるスーダル・クイックステップのアシストには、ファウスト・マスナダとイラン・ファンウィルデル、ヤン・ヒルト。ログリッチシフトのユンボ・ヴィスマにはセップ・クストビアス・フォス。アシスト陣による両チームの削り合いも見どころ。

この大会では過去にステージ5勝しているトーマス・デヘント(ロット・デスティニー)、昨秋以降の不調から脱却を目指すトビアス・ヨハンネセン(ウノネックス・プロサイクリングチーム)、平坦ステージでは優勝候補になるであろうブライアン・コカールコフィディス)といった選手たちの走りも押さえておきたい。

UCIワールドチーム18、同プロチーム7、合計25チームがスタートラインに並ぶ今大会。本記最後に大会の歴史に触れておくと、1911年初開催で、1935年に開始されたブエルタ・ア・エスパーニャより歴史のあるレースである。その後開催時期が秋から初夏へと移り、2010年から現在の3月下旬に。主催は長くボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ協会が務めてきたが、近年はツール・ド・フランス同じA.S.O.(アモリ・スポル・オルガニザシオン)が実務を担っている。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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