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サイクル ロードレース コラム 2023年3月3日

【Cycle*2023 パリ〜ニース:プレビュー】いきなりクライマックス!パリの表彰台をあらそうヴィンゲゴーとポガチャルがしのぎを削る8日間

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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パリ〜ニース

「ミニ・ツール」の名にふさわしく黄色いジャージを巡る争いは今年も熱く激しく燃え上がる

いきなりクライマックスがやって来る!2夏連続でパリの表彰台の上から2つの場所を分け合ってきた2人が──2021年はタデイ・ポガチャルが頂点に、ヨナス・ヴィンゲゴーが2段目に立ち、2022年は順番を入れ替えた──春のニースへ向かって、シーズン最初の直接対決を繰り広げる。「ミニ・ツール」の名にふさわしく、2023年パリ〜ニースの黄色いジャージを巡る争いは、今年も熱く激しく燃え上がる。

未だ冬色のパリ郊外から、太陽が待つニースへと向かう8日間。そもそも出場選手が誰であろうと関係なく、例年、パリ〜ニースは初日から最終日まで熾烈な戦いが繰り広げられるのだ。

たとえば序盤2日は「スプリンター向き」と言われ、赤丸急上昇中のアルノー・ドゥリー(ロット・デスティニー)やジョナサン・ミラン(バーレーン・ヴィクトリアス)、オラフ・コーイ(ユンボ・ヴィスマ)から、脂の乗ったティム・メルリール(スーダル・クイックステップ)にマッズ・ピーダスン(トレック・セガフレード)、ブライアン・コカール(コフィディス)、さらにはベテラン勢のサム・ベネット(ボーラ・ハンスグローエ)やアルノー・デマール(グルパマ・FDJ)まで、幾多の俊足たちがフランスに集結するけれど……パリ〜ニース前半名物の強風が、プロトンをズタズタに切り裂いてしまう危険性大。特に第2ステージは警戒したほうがいい。線の細いクライマーたちが、総合争いから早くも吹き飛ばされてしまうかもしれない。

パリ〜ニース

2022年第1ステージはまるでチームTTのような結果に

大会3日目には、なんと30年ぶりに、チームタイムトライアルが行われる。ただでさえ総合争いを大きく左右する種目である上に、今回は飛び切りスペシャル。今までのように4人目や5人目ではなく、1番最初にフィニッシュラインを横切った選手のタイムが採用されるのだ。つまり32.2kmの全力疾走の終わりに、総合エースたちが先頭でスプリントする姿が目撃できるというわけ。

週の半ばの4日目に、早くも本格的な山の争いが巻き起こる。(今大会には不出場ではあるが)ジュリアン・アラフィリップの故郷から走り出す第4ステージは、大会史上初めて、スキー場ラ・ロージュ・デ・ガルドにたどり着く。1級山頂のフィニッシュへと誘う山道は、全長6.7km・平均勾配7.1%と本格派。ただし序盤110kmは道は緩やかで、最終峠以外は小さな3級山岳が2つ待ち受けるだけだから、むしろトーマス・デヘント(ロット・デスティニー)、ニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)、クレモン・シャンプッサン(アルケア・サムシック)……等々、大逃げ向きとの予想も多い。

パリ〜ニース

北からの強風が吹きつける

木曜日はスプリンターの出番。かといって決して単純明快でもない。スタート直後にいきなり3つの山越えが待ち受けてる。山岳ジャージが欲しい脚自慢たちが、次々と飛び出しを試みるはず。しかも南へとほぼ一直線に下る道は、たいてい北からの強風が吹きつけている。スプリンターチームは逃げ制御に大いに苦労させられることになるだろう。

週末に入ると、いよいよ戦いの舞台は南フランスへ。青い空と青い海、ミモザの黄色の鮮やかなコントラストを、ゆっくりと堪能している余裕があるだろうか。なにしろ第6ステージは、お隣イタリアで同時開催中のティレーノ〜アドリアティコのいわゆる「壁ステージ」に対抗したかのような、まさに超激坂ステージ。コース上に散らばる5つの山岳のうち、後半4つは最大勾配が15%から20%。しかも、この日最後の2級峠コル・シュル・ルーの全長1.8kmの坂道は、平均勾配10%・最大19%と飛び切り厳しい。

クイーンステージは、例年通り、最終日前日に組み込まれた。翌日の決戦地ニースから走り出すと、142.8kmの短距離コースで、2つの巨大山岳へと立ち向かう。1つ目は1級トゥレット・デュ・シャトー。平均勾配こそ4.6%と比較的緩やかながら、登坂距離は17.8kmと、今季ここまでのヨーロッパでの戦いで最も長い。一方で2つ目にしてフィニッシュは1級ラ・クイヨール(15.7km、7.1%)で、標高1678mまでよじ登る。ずばりパリ〜ニース史上最高標高地点(使用は2度目)であり、選手たちに、早くも本格山岳用の肉体に仕上がっていることを求めるのだ。

そして最終日は素敵なカオスを。過去10年間で、最終日にパリ〜ニース表彰台の顔ぶれがまるで入れ替わらなかったのは、コロナ禍で途中打ち切りとなった2020年大会と、昨2022年大会のみ。たったの2回だけ。つまりほぼ毎年何かが起こってきた。総合首位の交代劇さえ、この10大会で3回も発生した。

パリ〜ニース

山岳ステージは厳しい峠が続く

今年も、最後の日曜日には、手に汗握る興奮のレースが巻き起こる可能性あり。ニースを中心に描かれたコースは、118.4kmという超短距離走に、5つの山岳がぎゅうぎゅうに詰め込まれている。上っては下り、下りては上っての繰り返し。しかも南フランスの山道は、極めて細い上に、執拗に曲がりくねる。特に大会最終峠エズ峠からの高速ダウンヒルの、どきどきはらはら感といったら!

このパリ〜ニース特有の緊迫感を、注目のヴィンゲゴーもポガチャルも、生まれて初めて体験する。「パリ以外=ニース」で史上初めてフィニッシュする来年2024年のツールを睨んで、早めの下見も兼ねているのかもしれない。。ちなみに「ツール以外」のステージレースでの2人の直接対決は、2022年ティレーノに続く2度目。1年前は総合優勝がポガチャルで、1分52秒後の2位にヴィンゲゴーが続いている。

それにしても今季開幕直後から、2人とも超が付くほど猛烈に飛ばしている。ポガチャルがレースデー計6日、ワンデー優勝1回、ステージ優勝3回、総合優勝1回、ポイント賞1回、勝てなかった日は2日のみ……と凄まじい成績を並べた直後に、ヴィンゲゴーもレースデー4日、ステージ優勝3回、総合優勝1回、山岳賞1回、勝てなかった日はにレース自体が悪天候ニュートラルになった1日だけ……と素晴らしいカニバルぶりを披露。手の付けられないほどに強い両者だが、残念ながらこのパリ〜ニースでは、どちらか1人は必ず敗者にならねばならない。

もちろんツール・ド・フランスもパリ〜ニースも、決してヴィンゲゴーとポガチャルだけのものではない。ダニエル・マルティネス(イネオス・グレナディアーズ)やダヴィド・ゴデュ(グルパマ・FDJ)、サイモン・イェーツ(ジェイコ・アルウラー)、ロマン・バルデ(チームDSM)、さらにはジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス)等々も、2人に割って入るチャンスを虎視眈々と狙っている。少なくとも、すべての選手にとって、自らの現在の位地を知り、肝心の夏に向け強化計画を立て直す最高の機会になるはずだ。


文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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