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サイクル ロードレース コラム 2023年3月2日

【Cycle*2023 ストラーデ・ビアンケ:プレビュー】優勝経験者が5人参戦! ロードレース界に本格的な春到来を告げる“白い道” シエナ・カンポ広場に一番にやってくるのは誰か!

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ストラーデ・ビアンケ

ストラーデ・ビアンケ

タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)の衝撃的な独走劇から1年。イタリア・トスカーナの“白い道”では、また新たな伝説が生まれることだろう。

レース名の「ストラーデ・ビアンケ」は、イタリア語で“白い道”を意味する。トスカーナ州の各地にいまなお未舗装で白砂の道が残され、サイクリストたちは聖地として心を預ける。大会そのものは2007年初開催と、ビッグレースにしては新しい部類に入るが、それでも選手を、ファンを惹きつけるのはそうした理由が存在するからである。

シエナのメディチ要塞前をスタートし、再びシエナへと戻るルートは、レース距離184km。丘陵地帯を行き、左右にはブドウ畑を見ながらプロトンは進んでいく。この間、“白い道”いわゆる未舗装区間は全11セクション・総距離63km。つまりは、全行程のおおよそ3分の1がグラベルというわけ。距離こそ短いながらも急坂も多く、獲得標高は3200mを数える。

当然、スタートから気は抜けない。17.4km地点で早くも1つ目の未舗装セクションが登場し、55km地点まで4セクションが立て続けに現れる。気が付くと、メイン集団が崩壊しているかもしれない。

それからは、舗装路とはいえモンタルチーノの登坂距離4km・平均勾配5%の上りがあり、越えたと思ったら未舗装区間の連続。レース中盤からのグラベルは、距離にして10km前後と長く、白砂を巻き上げて突き進む勇者=選手の走りに感動を覚えることだろう。

フィニッシュまで55kmを切って訪れるセクション8からは、次々と仕掛ける選手たちの姿が見られるのではないか。このセクターは11.5kmで、途中モンテ・サンテ・マリエの上りが勾配10.3%。昨年、この区間でポガチャルが驚愕の瞬間を作り出しているし、その前年にはジュリアン・アラフィリップ(スーダル・クイックステップ)が展開を大きく変えるアタックを繰り出している。

連続するアップダウンと、なかば不意打ちのように現れるグラベルセクションに、選手たちはどこまで集中力を保てるだろうか。残り25kmからの未舗装路は、セクション9が最大勾配10%、セクション10が15%、セクション11が18%と難攻不落。昨年のポガチャルはひとりで攻略してしまったけれど、その前の年はマチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク)が11番目のグラベルで決定打を放った。

タデイ・ポガチャル

優勝したボガチャルを祝福する2位バルベルデ

グラベルセクションをすべて終えると、残りは約12km。最後には、シエナ旧市街のカンポ広場へ、いざないの急勾配。残り1kmを切って、500mで平均勾配12.4%、最大勾配16%の上りをこなし、道幅の狭い石畳の道を進んだ先に、中世の大広場が走り終えた者を出迎える。

ちなみに、先だってスタートする女子は136kmで争われる。コースの違いとしては、南部の大周回は男子のみの採用で、モンテ・サンテ・マリエのある東側のグラベルが女子では不採用に。あとはほぼ同じルートを走ることになっている。

昨年、世界を震撼させる強さを見せつけたポガチャルは、3月5日からのパリ~ニースに備えるため欠場。連覇には挑戦しない。

また、当初出場の意向を示していた2020年の覇者、ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ)も取りやめ。シクロクロスからロードレースへの移行段階で、体調を崩したため大事をとって先々への調整を優先させる。

ただ、この2人がいない寂しさを打ち消すように、豪華すぎるほどの顔触れがスタートラインに並ぶ見込みだ。

なにせ、優勝経験者が5人も走るのだ。シクロクロスで世界の頂点に立ち、意気揚々とロードシーズンを始めるマチューは優勝した2021年以来の参戦。不整地を戦う脚が残っているなら、このレースはまさにおあつらえ向きだろう。

前回大会は落車の影響で不発だったアラフィリップは、今季すでに1勝しており、上々のコンディションで乗り込めそうだ。このオフにはチームオーナーのパトリック・ルフェヴェル氏との確執も話題に上がったが、勝ってその力を証明できれば未来は明るい。

2018年に優勝しているティシュ・ベノート(ユンボ・ヴィスマ)は、ワウトに替わってチームリーダーを務める。前週は、ベルギー開催のワンデーレース幕開けとなる通称「オープニングウィークエンド」で大活躍。オムロープ・ヘットニュースブラットでチームの躍進に貢献すると、翌日のクールネ〜ブリュッセル〜クールネではみずからが優勝。昨夏の事故で傷めた首はもう心配なく、優勝候補にふさわしい立ち位置にある。

2014年、2017年と勝っているミハウ・クフィアトコフスキ(イネオス・グレナディアーズ)は、エースにもジョーカーにもなりうる。なぜなら、チームに若きエースのトーマス・ピドコックも控え、どこからでも攻撃が可能なのだ。同じくヤングライダーのカルロス・ロドリゲスやマグナス・シェフィールドもいるので、チーム力だけなら今大会ナンバーワン。そのキャプテンをクフィアトコフスキが務める。

2015年覇者のゼネク・スティバル(チーム ジェイコ・アルウラー)も健在だ。37歳になったが、その走りに衰えは感じられない。シクロクロッサーの先輩として、マチューやピドコックに負けられない思いは強いに違いない。今季からは新たな環境で、チャレンジングなシーズンを送る。

このほか、直前のトロフェオ・ライグエーリアで勝ったナンス・ペテルス(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム)も自信をもって臨むし、シーズンインから好調のペリョ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス)、このところステージレースでブレイクし中のルーベン・ゲレイロ(モビスター チーム)らもチャンスは十分。21歳のクイン・シモンズ(トレック・セガフレード)は、ここへきて一気に前評判が上がっており、押さえておくべき存在といえよう。

このレースを終えると、シーズンはステージレースにクラシックに、活況を呈していく。選手たちのコンディションを測る意味でも、ストラーデ・ビアンケは重要な意味合いを持つ。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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