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【Cycle*2022 リエージュ~バストーニュ~リエージュ:プレビュー】コース難易度5つ星。グランツール王者たちが競り合うスプリングクラシック千秋楽
サイクルロードレースレポート by 辻 啓激坂をよじ登るプロトン
春のクラシック、ここに極まれり。ベルギーとオランダ、北フランスを舞台に繰り広げられてきたクラシックシーズンがリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで千秋楽を迎える。「モニュメント(世界五大クラシック)」の中で最も登坂力を要求される山岳レースが世界最高峰のクライマーたちの脚を試す時がきた。
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュという極端に名称が長いのは(長すぎるので以下LBL)往復コースの形式を取っているため。ワロン地域最大の都市リエージュからバストーニュまで南下する往路は比較的すんなりと、そしてバストーニュで折り返してリエージュまで北上する復路は蛇行しつつ名物峠を巡りながら激しく。つまり、行きは良い良い帰りは怖い。
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レース詳細情報 | サイクルロードレース | J SPORTS【公式】
出場予定選手やコースプロフィール、レース動画をご覧いただけます。
同じ「アルデンヌクラシック」にカテゴライズされるアムステルゴールドレースやラ・フレーシュ・ワロンヌが「丘のレース」であるのに対してLBLは「山のレース」。ベルギー南部、ルクセンブルク国境に近いアルデンヌ高原を走る257.2kmコース(奇しくもパリ〜ルーベと全く同じ距離)はジェットコースターのようなアップダウンが特徴だ。
4日前のラ・フレーシュ・ワロンヌの獲得標高差が3,000m、同じく山岳系モニュメントとして知られる秋のイル・ロンバルディアが3,500mであるのに対し、LBLのそれは4,400m。グランツールに出てくるアルプスやピレネーのような峠がある訳ではなく、標高は常に600mであり、登りは長くても4.4kmで高低差も200m前後。それで獲得標高差4,400mを稼ぎ出すのだから、登りと下りを断続的に繰り返すことがよくわかる。特にレース後半は平坦区間がほぼないと言っていいほど。
パリ〜ルーベのパヴェ区間をこなすたびに集団の人数が減ったように、合計10ヶ所の登りをこなすたびに集団の人数を減らすことになる。ノコギリ状の高低図が鋭さを増すレース終盤、英語のスパ(温泉)の語源にもなったスパの町(モータースポーツ好きにはスパ=フランコルシャンサーキットを触れた方がわかりやすいか)を抜け、フィニッシュまで50kmを切るとセレクションが本格化。地元の英雄ジルベールの背中を押すためのPHILペイントが施された残り30km地点のコート・ド・ラ・ルドゥット(全長2.1km/平均勾配8.9%)は破壊力抜群で、その後の吹きっさらし区間とセットで集団分裂は避けられない。
登った分だけしっかり下るレイアウトなので、テクニカルコーナーを利用して抜け出しを図る選手も現れるはず。そして残り15.6km地点から最後の難所コート・ド・ラ・ロッシュオフォーコン(全長1.3km/平均勾配11%)の登坂が始まる。例年、優勝狙いの選手はこの急坂を平均21km/hオーバーという凄まじいスピードで駆け上がる。ロッシュオフォーコンの正式な頂上通過後、約2kmにわたって登り返したところでこの日の全ての登坂作業が完了する。
今年もアンスの登りフィニッシュではなく、レース名の通りリエージュ市内の平坦路にフィニッシュするレイアウトが採用された。フェタンヌ橋をわたってフラムルージュ(残り1kmアーチ)をくぐり、ウルト川に沿ったアルデンヌ通りでレースは決する。過酷な山岳レースの最後に、昨年はトップスピード68km/hのスプリントで勝負は決した。
前回大会を制したポガチャル
出場を予定している優勝経験者は6人。その中でも、際立つのがディフェンディングチャンピオンのタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)の存在だ。4日前のラ・フレーシュ・ワロンヌでは、集団前方の好位置で「ユイの壁」の急勾配区間をこなしながらも失速して12位。家庭の事情でラ・フレーシュ・ワロンヌ後にスロベニアに一時帰国したため出場が危ぶまれたが、出場するからにはポガチャルは連覇を狙ってくる、マルク・ヒルシやディエゴ・ウリッシという強力なアシストたちを従えて。
2006年、2008年、2015年、そして2017年の優勝者で、ラ・フレーシュ・ワロンヌを2位で終えたばかりのアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)の強靭さは計り知れない。エディ・メルクスがもつ最多勝記録まであと1勝。衰えるどころか粘り強さを増している感すらあるバルベルデは、41歳最後の日に記念すべきラストタイトル獲得を狙う。2018年の優勝者ボブ・ユンゲルス(アージェードゥーゼール・シトロエン)と2019年の優勝者ヤコブ・フルサン(イスラエル・プレミアテック)ももちろん勝ち方を心得ている。
ミラノ〜サンレモの優勝に続いてパリ〜ルーベで奮闘して5位に入ったマテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス)は、2020年のLBLで驚異的な追い上げからの4位。ログリッチとポガチャルというスロベニア勢の2年連続優勝を引き継ぐのはモホリッチかもしれない。チームにはラ・フレーシュ・ワロンヌ勝者のディラン・トゥーンスだけでなく、2016年LBL優勝のワウト・プールス、そしてミケル・ランダもいる。再びモホリッチが早めに仕掛け、チームメイトがライバルたちのアタックを処理しながら勝機を伺うようなチーム戦に持ち込みたいところ。
まだすっきりとした春を迎えることができていないクイックステップ・アルファヴィニルはジュリアン・アラフィリップとレムコ・エヴェネプールの二枚看板を機能させることができるだろうか。そして、新型コロナウイルス感染の影響でロンド・ファン・フラーンデレンを欠場したワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ)はスケジュールを変更してリエージュに初出場。パリ〜ルーベを2位で終えたベルギーチャンピオンは、体重78kgの大柄な身体でLBLの登りをどれだけこなすことができるのだろう。ファンアールトはヨナス・ヴィンゲゴーとタッグを組む。
バルベルデとともに最後のLBL出場を迎えるのが、2011年の優勝者フィリップ・ジルベール(ロット・スーダル)だ。フランドル地域が幅を効かすベルギーにおいて、ワロン地域の自転車界を牽引してきたジルベールも39歳。フランドル出身ながらワロン人の母親をもつティム・ウェレンスのサポートに徹することになりそうだ。
文:辻啓
辻 啓
海外レースの撮影を行なうフォトグラファー
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