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【Cycle*2022 ジロ・デ・シチリア:プレビュー】エトナの道を知り尽くした男ヴィンチェンツォ・ニバリが連覇を目指してシチリア島に乗り込む
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか前回大会王者のヴィンチェンツォ・ニバリ
活火山の懐で、火花散る戦い。太古の昔から数々の伝説を紡ぎ出してきたエトナ山が、この春またしても勇者たちの脚を試す。険しい山道を上り詰めた先で、覇者に与えられるのは、まるで燃え上がる炎のようなオレンジレッドとイエローが溶け合うリーダージャージだ。
イタリア半島の「長靴」の、爪先に位置するシチリア島で繰り広げられるジロ・デ・シチリアは、古くて、新しい。ジロ・デ・イタリアよりも2年早い1907年この世に生を受け、同時にほんの3年前に、42年もの長い眠りから目覚めたばかりなのだ。つまり第26回目にして、第3回目でもある2022年大会は、4日間かけて野趣あふれる島を駆け巡る。
島北部のミラッツォから走り出すシチリア一周はまた、あらゆる脚質を歓迎する。ティレニア海岸道路を突き進む初日は、ずばりスプリンター向け。細かいうねりに彩られているし、ラスト350mは直角カーブ&微妙な上り坂と一筋縄では行かないものの、全体的に見れば道は1日中ほぼ平坦だ。
はるか遠くにアフリカ大陸を望むシチリア海峡岸から、内陸へと切り込む2日目と3日目は、様々な脚質が入り乱れた激しいバトルが巻き起こる。
第2ステージは、後半に向けて、徐々に起伏を増していく。特にラスト8.5kmは延々と3%前後の上り坂。さらには残り1kmを切った直後に、短いながらも勾配10%ゾーンが待ち受ける。第3ステージもまた、難しい峠こそ登場しないものの、平地もない。しかも最終3kmは上って下りてまた上って。単純な脚力だけでなく、力配分や位置取り、駆け引きも、大きく勝負を左右する要員となりそうだ。
もちろんクライマックスは、大会最終日にやってくる。140kmの短距離走で、累計標高は3500m。締めくくりにエトナ山へと挑みかかる第4ステージが、間違いなく、2022年大会の総合の行方に審判を下す。
エトナ山南西のラガルナからスタートすると、まずは時計回りに山の麓をぐるりと半周回。これまで以上に大きな起伏をいくつも乗り越えつつ、ステージ半ばでコントラーダ・ジウラーナ峠(登坂距離10.9km、平均勾配5%、最大11%)をこなす。
山のてっぺんから海抜スレスレまで、20km超のダウンヒルで下り切ったら、改めてコントラーダ・ジウラーナ峠へとアタック。異なる方角から攻め入る2度目は、距離面でも、勾配面でも、難度を増す(11.3km、6%、11%)。
ただし、すべては、前触れに過ぎない。上り詰めた先から、いよいよプロトンは、2月に2度の噴火を起こしたエトナ内部へと切り込んで行く。
全長17.4kmの長い山道は、3つのパートに分けられる。第1幕は約12kmに渡って続く、平均6.7%の上り。続く第2幕は、約2.5kmの下り。そして最終幕こそが、全長3km、平均9.1%、最大13%というとてつもない激勾配!鬱蒼とした森を抜け、ごつごつした溶岩の荒原を突き進み、スキーリゾートとしても知られる標高1793m地点のピアノ・プロヴェンザーナですべてが決する。
ちなみに今回は東側からエトナを攻める。2019年ジロ・デ・シチリアもやはりエトナ山頂フィニッシュが争われたが、3年前は南西からの登坂で、到着地点も火口の反対側だった。また2011年以降、ジロ・デ・イタリアのプロトンは全部で4度この山を上ってきたし、今年2022年大会も第4ステージでエトナと対峙するが、同じフィニッシュ地点が用いられたのは2020年大会のみ。その時でさえ、ラスト3km以外は、別の道を使用した。つまりは多くの参加選手にとって、今回のルートは、未知なる道なのだ。
その中で唯一、エトナの道を知り尽くした男とは、やはりヴィンチェンツォ・ニバリだろう。9月末の開催だった昨大会、22kmもの独走を成功させ総合制覇をもぎ取ったシチリアっ子は、この神聖なる山を見上げながら大きくなった。ジロでは3度エトナ登坂を行い、いずれもトップ10入りを果たしてきた。過去3大ツールを制した偉大なるチャンピオンは、今大会は当然、勝つために帰ってくる。
ニバリ属するアスタナ・カザクスタンと並んで、UCIワールドチームからはアンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオとトレック・セガフレードもシチリアへ飛ぶ。中でもイタリア南端出身ドメニコ・ポッツォヴィーヴォにとっては、得意の地形で、5年ぶりの勝利を手にするチャンス。
またジロ行きを控えるUCIプロチーム、エオロ・コメタやバルディアーニCSFファイザネ、ドローンホッパー・アンドローニジョカットリもスタートラインに集結。ついこの間までワールドツアーで活躍していたチャド・ヘイガやベンジャミン・キングも、ヒューマン・パワード・ヘルスの一員としてやってくる。
さらにはEFエデュケーション・イージーポストの「デヴェロップメントチーム」である、EFエデュケーション・NIPPOも参戦。日本選手5人と日本人スタッフを多数有する若手中心の集団が、強豪チームに混ざって、ハイレベルな戦いに挑む。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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