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167kmにも渡る逃げを終えたダヴィ・モンクティエ(コフィディス・ル クレディ アン リーニュ)は、ゴール後に「自分の走りには満足している」と語った。念願の山岳賞ジャージにも袖を通した。ただしコメントは「でも勝利だけが足りなかった」と続く。そう、勝利まではわずか800m足りなかった。ゴール前3kmのアーチをくぐった時点では後続に1分25秒ものタイム差をつけていたというのに、その直後に目が覚めるほど鮮やかなアタックを決めたダミアーノ・クネゴ(ランプレ・N.G.C)に、あっさりと追い抜かれてしまったのだ。そして2004年ジロを制した「ピッコロ・プリンチペ(小さな王子)」クネゴが、実に……2004年ジロ以来5年半ぶりとなるグランツール区間勝利をアイタナの頂上でつかみ取った。あれから現在までビッグクラシックタイトルを4つ(ジロ・ディ・ロンバルディア3回、アムステル・ゴールドレース1回)手に入れ、ワンデーハンターとしては確かな名声を築いてきたが、一方でステージレーサーとして苦しんできたクネゴにとって、起死回生の大きな勝利となるに違いない。
2009年のブエルタは大会2週目にしてついに難関山岳ステージに突入した。しかもこの日は7つの難関峠と超級山頂ゴールが待ち構える今大会最難関。序盤1時間は時速44kmでアタック合戦が巻き起こり、ようやく37km地点で6人の逃げ集団が出来上がる。地元オランダスタート以来ずっと逃げ常連チームとなっているピーター・ウェーニング(ラボバンク)とジョニー・フーガーランド(ヴァカンソレイル プロサイクリングチーム)の2人、そしてスペイン一周では珍しくフランスからモンクティエ、セバスティアン・イノー(アージェードゥゼール・ラ・モンディアル)、ウィリアム・ボネ(Bbox ブイグ テレコム)の大量3人、さらにポール・ヴォス(チーム ミルラム)を加えた6人は、一時はメインプロトンから最大15分差をつけた。
先頭集団がこの日4つ目の登りに挑もうとしているとき、後方では今ツール総合2位のアンディ・シュレク(チーム サクソバンク)が自転車を降りた。第8ステージの88km地点で胃の痛みを訴えてのリタイア。メンドリジオでの世界選手権を最大の目標にしているため、体の不調をおしてまで無理したくなかったというのが本音だろうか。兄フランクは今ステージ10分42秒遅れで、ヒルクライマーとして本領発揮せずにゴールしている。またルクセンブルク代表のチームメイト、キム・キルシェン(チーム コロンビア・HTC)はすでに第6ステージで帰宅した。ブエルタ的には残念としか言いようがないが……、世界選手権では本気のルクセンブルク勢を目撃できそうだ(J SPORTSで生中継!ちなみに上記3人のほかに、23歳の若きジャンピー・ドリュケールと来年サクソバンクに入団するローラン・ディディエが代表メンバー入り確定)。
7つの峠を乗り越えて、先頭集団は21.7kmという恐ろしく長い最終峠へ3分18秒差で突入した。背後ではアレハンドロ・バルベルデ擁するケースデパーニュが、プロトン先頭で容赦ない加速を行っていた。プレッシャーを感じ始めた6人の中で、真っ先に動いたのはフーガーランド。何度もアタックをかけると、ついには短時間ながら単独で先頭に立った。ただしマイペースで登ってきた2008年ブエルタ山岳賞モンクティエが追いつくと、逆にゴールまで5.5km地点、長い登りの中でも9〜9.5%という最も勾配のきついゾーンで振り切ってしまった。あとは1年前のまさに第8ステージのプラ・デ・ベレで独走勝利を決めたときのように、1人で黙々とゴールを目指せばいいはずだったのだが。
すでに25人程度に絞り込まれていたメイン集団を、より一層加速させたのはシルヴェスタ・シュミットとイヴァン・バッソのリクイガスコンビだった。そしてゴール前2.5kmでバッソが加速すると、すかさずクネゴがカウンターアタックを仕掛ける。「でもクネゴは総合を狙っている選手じゃない。だから追わずに、他のライバルたちを警戒し続けた」とバルベルデが語るように、マドリードでの総合表彰台だけを本気で狙っている選手たちは、世界選手権イタリア代表リーダーを務めるクネゴの背中を静かに見送った。
ただしロベルト・ヘーシンク(ラボバンク)だけは監視を潜り抜けて残り数百メートルでアタック。総合ライバルたちから軒並み8秒以上を失っただけでなく、モンクティエに続く3位に入りボーナスタイム8秒も手に入れた。またゴール前のスパートに定評のあるカデル・エヴァンス(サイレンス・ロット)、バルベルデ、サムエル・サンチェス(エウスカルテル・エウスカディ)が、バッソを筆頭とする小グループを6秒突き放した。この結果、エヴァンスがファビアン・カンチェッラーラ(チーム サクソバンク)から総合リーダーの証マイヨ・オロを引き継いだ。2008年ツールで5日間マイヨ・ジョーヌを着用して以来となるグランツールのリーダージャージに、俄然、エヴァンスはやる気を出している。また2秒差でバルベルデが総合2位、8秒差でサンチェスが区間3位につけている。サンチェスは前日のTT下見中に転倒し、この日も下り右カーブで落車して右半身を強打。ゴール後には「なんとか今日1日は生き残ることが出来た」と語り、右太ももと右鎖骨に強い痛みを抱えている。
ヘーシンクは29秒差の総合5位、何度も加速したバッソは50秒差の総合8位。「今日はライバルたちの脚の状態を試した。タイム差は稼げなかったけれど、ライバルたちを疲労させ、持久力を奪えたはずだ。明日の難関ステージに効いてくる」と、バッソは次なる機会を虎視眈々と待ち構えている。
●ダミアーノ・クネゴ(ランプレ・N.G.C)
ステージ優勝
すごく満足してる。かなり長い間勝てなかったから、なおのことこの勝利が嬉しいね。監督とも話し合って、今日か明日のステージで、チャンスがあればボクの調子をテストしてみようとあらかじめ決めていたんだ。今日は朝から調子がいいと感じていたから、ボクの日に出来ると感じていたよ。だからメイン集団で競り合いが始まって、バッソが加速した後、ボクもアタックを仕掛けてみた。誰がついてこれるのかを見極めようと思ったんだ。でも誰もついてこなかったから、そのまま集中して勝利を狙いに行った。
でもボクの目標は変らない。今大会に参加したのは、あくまでも世界選手権に向けて調子を上げていくため。でもブエルタで区間勝利を挙げられて本当に嬉しいよ。だってこれは大きな勝利だ。難しいステージで、強力なライバルたち相手に勝ちを手に入れたんだからね。本当に気分がいいよ。勝てないことでかなり批判されてきたから、自分の力を証明したかったんだ。
●カデル・エヴァンス(サイレンス・ロット)
総合リーダー
ブエルタには特別な目標を持たずに来た。世界選手権を目標としていたけれど、だからといって途中で家に帰ろうとも考えていなかった。自分がいいレベルで走れていることは分かっていたから、このレースに全力を尽くそうとは思っていたんだ。とにかくヴァレンシアの個人タイムトライアルでいい走りが出来たし、さらに総合首位に立ったことで、事情は変わったね。この先どこまでやれるか、見ていこうじゃないか。明日からは毎日、チーム一丸となって働いていくよ。
今年のツールはキャリアで最悪の大会だった。様々な問題が複雑に絡み合って、特に山岳ステージはどうしようもなかったね。でもその後バカンスをとってリラックスした。フレッシュな気分を取り戻したし、またやってやろうというエネルギーもわいてきた。今ブエルタでのサイレンス・ロットはツールでのチームよりも若いし、経験も少ない。でも誰もがモチベーションに溢れているのが感じられるんだ。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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