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【Cycle*2021 UCI世界選手権大会 男子エリート ロードレース:プレビュー】記念すべき100年目の世界一決定戦!最多13回目出場の新城幸也「どう考えても厳しくなるコース」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかコースMAP
9月最後の日曜日、ベルギーのフランドルが世界の中心になる。1921年にデンマークのコペンハーゲンで始まった自転車ロードレース男子世界一決定戦が、100年目の今年、地上屈指の自転車大国で繰り広げられる。その石畳と激坂、風、そして世界一熱狂的なファンたちが……強くて勇敢なるチャンピオンたちの死闘を見届けるのだ!
マイヨ・アルカンシェルをかけた激戦は、伝統に則って、周回コースで争われる。おなじみジャパンカップで走るコースも、1990年大会の舞台となった周回だ。ただし年々世界選手権は進化を遂げている。近年は周回突入前にラインレースを組み合わせる場合が増えてきた。2018年のインスブルック大会では、最終周回で、ほんの少しだが(激坂に)寄り道した。そして2021年ベルギー・フランダース大会は……通過すべきサーキットが2つに増えた。
つまり全長268.3kmのコースはかなり変則的である。フランドル語でアントウェルペン、フランス語でアンヴェール、英語でアントワープと呼ばれる北の港町をスタートすると、8kmのパレードランの後、まずは56kmのラインレースが行われる。そこから赤と黄に色分けされた2つのサーキットを、プロトンは行ったり来たり。
★全長268.3km
パレード8km→ライン56km→赤1.5周→黄1周→赤4周→黄1周→赤2.5周
1つ目の「赤」コースが、ルーヴェン(仏語ルヴァン)の「ローカルサーキット」。市街地を駆け抜ける1周15.5kmのコースには、4つの「ベルヒ=山」が組み込まれた。そしてルーヴェンの南側に位置する2つ目の周回が、名付けて「フランドリアンサーキット」。1周32.18kmで5種類6つの坂道を登る「黄」コースには、いかにもフランドルらしい細道と激坂、石畳と農地の、美しくて、恐ろしくて、血沸き肉躍る風景が広がっている!!!
★赤サーキット
場所:ルーヴェン
全長:15.5km
坂道:4
ケーイゼルスベルヒ(登坂距離290m、平均勾配6.6%、最大9%)
ドゥクーラーン(975m、2.5%、6%)
ヴェィンペルス(360m、8%、9%)
スィント・アントーニウスベルヒ(230m、5.5%、11%、道の真ん中に石畳レーンあり)
★黄サーキット
全長32.18km
坂道:5
スメイスベルヒ(700m、8.8%、16%、周回の最初と最後の2度通過)
モスクスストラーツ(550m、8%、18%、石畳あり)
エス・ボフト・オーヴレイス・タイマンスストラーツ(738m、5.5%、18.3%)
ベークストラーツ(439m、7.6%、15%、石畳)
ヴェーヴェイト(484m、5.1%、12%)
※発音は地元プレスデスクの方に教えていただきました
赤と黄を交互に通過しつつ、選手たちは全部で42の上りをこなさねばならない。たとえば昨大会が18回、2年前は周回部分では8回しか上らなかったことを考えると、とてつもない数である。ただ2年前の累計獲得標高差4670mに対して、今年はたったの2562mのみであり、最も長い登りでも1kmに満たない。
現世界王者のアラフィリップ
「たしかに何キロも続く上りはないけど、すごく、すごく、すごく厳しい戦いになる。位置取りにエネルギーを要するレースになるし、1日中集中力を切らすことができないだろう」(ジュリアン・アラフィリップ)
「ルーヴァンの周回は起伏自体は難しくないけれど、極めてテクニカル。減速と加速を要するたくさんのカーブや障害物が、違いを生み出すだろう。激しく濃密な、いわばクラシックのようなコースだ。」(ワウト・ファンアールト)
「スピードの出る危険なコースだ。しかもカーブやうねりが多発する。だから常に前に位置取りしなければならない」(ソンニ・コルブレッリ)
つまりすべての上りは、単純に、「上れない選手」を振り落とすための材料ではないようだ。今大会の出走選手の中では最多13回目のスタートを切る日本の新城幸也が、この特殊なコースについて、詳しく解説してくれた。
「コース地形図から受ける印象と、実際に走ってみての感覚は、かなり違いますね。もちろん高低差は大きくないですし、1人でコースを走るだけならハードではありません。でも、そこに、195人の選手が入るんです。道は細いし、コーナーは多いし、石畳はあるし。しかも石畳の坂を抜けた先は、開けていて、風が吹いています。……どう考えても厳しくなるコースですね。
コーナーのたびに前方のチームがちょっと踏んで、後ろはアコーディオンみたい伸び縮みして……という展開になるでしょう。後方にいると地味に脚を使う羽目になります。さらに下りながら曲がったり、と『時限爆弾』的なパートもありますし、そもそもベルギーの道路の作り自体が広くなったり狭くなったり中央分離帯があったりですから。危険な箇所が多いんです」(新城)
24日(金)に行われた男子ジュニアと男子U23では、落車の多いナーバスなレースとなった。いずれも最終盤のアタックで独走逃げ切りが決まり、その背後ではジュニアは3位争いが、U23では2位争いが、いずれも30人程度のスプリントで決した。例年、男子エリートは、下部カテゴリーの反省と改善を経て全く違う展開になることが多いのだが、それでも同じようなスプリントに持ち込まれる可能性はある。
「最終周回に100人の大集団で突入することはないはずですが、30〜40人のスプリントになる可能性はあるコースです。近頃は厳しいコースでも前に残れちゃうような、打たれ強いスプリンターばかりですし(笑)」(新城)
もちろんアラフィリップは集団スプリントフィニッシュを避けたいし、コルブレッリは「ファンアールトのいない集団スプリント」に持ち込みたい。またアタックして良し、スプリントして良しのファンアールトは、要注意人物として宿敵マチュー・ファンアールト、トマ・ピドコック、マテイ・モホリッチ、フランス・デンマーク・イタリアの複数選手に加えて、ピュアスプリンター、カレブ・ユアンの名を挙げる。
ちなみに男子ジュニアと男子U23の成績から、ファンアールトが受けるべきインスピレーションがあるとしたら、それは2位の悔しさが世界制覇につながっていること。ジュニア世界王者のノルウェー人ペル・ストラント・ハーゲンもU23アルカンシェルのイタリア人フィリッポ・バロンチーニも、2週間前は欧州選手権ロードレースで2位だった。すると1年目、2カ月前、1週間前の2位が……七色に輝く1位につながっているだろうか。
そんなファンアールトがもしも優勝した場合、2012年フィリップ・ジルベール以来9年ぶりのベルギー人世界王者が誕生する。また開催国の選手が大会を制するのは、2008年イタリア・ヴァレーゼ大会のアレッサンドロ・バッラン以来13年ぶりとなる。フランドルの期待は、いまだかつてないほど高まっている。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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