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サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかミサイルのように一気に後続を突き放したベルナル
残り9.5kmでブシャールは加速を打つと、ライバルたちを置き去りにし、勇敢にフィニッシュを目指した。全長6.6kmの最終峠に真っ先に挑みかかると、ラスト3kmのトンネルも、ラスト1.6kmから始まる未舗装路も、ひとり先頭で飛び込んだ。残り1.1kmでクーン・ボウマンに合流されるも、残り400mまでは、2人で並走を続けた。ボウマン曰く「ミサイルのように飛んできた」ベルナルに、追い抜かれるまでは。
グルパマ・FDJが8人全員で隊列を引き続けたメイン集団では、残り33km、満を持してイネオスが制御権をむしり取る。ベルナルの指示ではなかった。エース自身は単に「他の選手からタイムを失わぬこと」を第一目標に掲げていた。しかしチームメートたちが、自発的に、エースを勝たせるために働き始めたのだという。
「チームメートたちは僕を信頼してくれた。僕自身は確信がなかったのに、彼らが『君はできる。僕らが君のために主導権を取る。その後はなるようになるさ』と言ってくれたんだ」(ベルナル)
仲間のために一肌脱いた擲弾兵たちは、高速テンポを刻み、その時点で3分あった逃げ集団との差を急速に縮めていく。最終登坂には2分差で突入し、トンネルにはブシャールの約1分後に入った。
そのトンネルを先頭で抜け出したのが、イネオス隊のジョナタン・カストロビエホとジャンニ・モスコンだった。前者がこの日最後のアスファルト部分で最後の力を振り絞ると、グラベル路では、後者がまるで輓馬のように力強く牽引した。もちろん背負うはエースのベルナル。小砂利を跳ね飛ばす勢いで突進し、残り600mまで見事にアシスト作業を全うした。
そのタイミングでアレクサンドル・ウラソフがアタックを仕掛けるも、「あの路面でバイクの安定を保つのが難しかった」せいで、すぐさまベルナルに先頭を奪い返された。その背中にはジュリオ・チッコーネがすかさず飛び乗ったが、目の前のベルナルが「フロントギアを53Tに切り替えたのを見て、自分のテンポで上ることに決めた」。
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