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サイクル ロードレース コラム 2013年5月18日

ジロ・デ・イタリア2013 第13ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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ほんの2週間前には、優勝大本命トリオに名前を連ねていた2人が、第13ステージの金曜日の朝にジロから立ち去った。ディフェンディングチャンピオンのライダー・ヘシェダルは、「とにかく皆さんにお礼を言いたい。家族、友達、ファン、そして特にチームとジロ・デ・イタリアに。皆さんのサポートは素晴らしかった」とツイートを残して、ばら色のコースに別れを告げた。2012年ツール覇者のブラドレー・ウィギンスは、「こんな形でストップせざるを得ないなんて、本当にがっかりだ。でも、ツールに絶好調で戻ってくるための、決断だったんだよ」と、前向きにイタリアを離れた。ヘシェダルは32分55秒遅れの38位、ウィギンスは5分22秒遅れの13位が、今大会最後の成績となった。

ところで、やはり今ステージDNS(未出走)だったナセル・ブアニは、レース結果を聞いて後悔しなかっただろうか?「第12ステージが終わったら、あとは最終日までチャンスなし」なんてスプリンターたちは口々に言っていたけれど、結局はこの日も、集団スプリントで終わることになったのだから!

254kmというクラシック顔負けの距離が、スタートした選手の眼前には待ち受けていた。道中の3分の2は平坦だったけれど、ラスト70km頃から小さな起伏がいくつか襲い掛かってくる。しかも、強い風が絶え間なく吹きつけた。そんな中で、7人の選手が、真っ先にエスケープ集団を作り出した。

パブロ・ラストラス、ジャイロ・エルメッティ、ラルスイティング・バク、ダニーロ・ホンド、ニコラ・ボム、ラファエル・アンドリアート、トビアス・ルドビグソンの7人が21km地点で飛び出すと、後方プロトンはしばらく休憩タイムに突入した。一時は13分ものリードを許したが、長いステージ、特に焦る必要はなかった。走行時間も3時間を過ぎ、ステージも折り返し地点を越えた頃から、ゆっくりと追走が開始された。もちろん集団の先頭で音頭を取ったのは、前日に念願の赤いジャージを取り戻したマーク・カヴェンディッシュと、周りを固めるオメガファルマ・クイックステップの面々だった。

平坦な道をオメガ列車は黙々と突き進んでいく。ゴール前50km地点では、早くも1分15秒程度までタイム差を圧縮した。完璧なるコントロールで、レースを冷静に制御しているように見えた。……ただそれも、この時点まで。ゴール前46km、3級峠の上りで前方と後方とでほぼ同時にアタックがかかると、いつ終わるとも知れない飛び出し合戦が始まった。オメガファルマ勢は、飛び散る火の粉を消して回ったり、エーススプリンターを上りで牽引したりと、てんてこ舞いを強いられた。

エスケープ集団ではボムが加速を仕掛け、ラストラスとバクの3人に絞り込まれていた。メインプロトンではステファノ・ガルゼッリの猛加速を合図に、ヴィーニファンティーニ・セッレイタリアやカチューシャが前へと躍り出た。モヴィスターチームが激しく追いたてた。いずれのチームもちょっとした起伏など軽々と乗り越えられるスプリンター(それぞれオスカル・ガットにルーカ・パオリーニ、フランシスコホセ・ベントソ)を有している。裏を返せばカヴに直接対決へ持ち込まれると分が悪い。勝機を得るには、上りで千切ってしまわなければならない。第5ステージで、まんまと成功させたように(残念ながらゴール前の集団落車で、みなスプリントさえ切れなかったが)。

ただし、今日のカヴェンディッシュは、チームメートに励まされながら、3級峠を耐え切った。そして下りでは、6人のチームメートと共に再び集団先頭に陣取った。

続く小さな2つの起伏で、またしてもライバルチームたちが加速を畳み掛けた。特にヴィーニファンティーニからは、マッテーオ・ラボッティーニとガットが残り16kmで急突進。カチューシャのジャンパオロ・カルーゾ、モヴィスターのエラダ等々を連れて、すでに1人になっていた先頭ラストラスに追いついた。9人に膨れ上がった集団からは、ラスト7kmでカルーゾが単独でチャンスを試みた。

アシストは2人にまで減っていたけれど、ここでも、オメガファルマのジャージがカヴを連れて追走に力を尽くした。ちなみにプロトン内から総合8位(4分05秒遅れ)ベナト・インサウスティが飛び出そうとしたときだけは……、マリア・ローザのヴィンチェンツォ・ニーバリ自らが対応に回った。残り4.5kmでまたしてもヴィーニファンティーニからダニーロ・ディルーカが前に出ると、ようやく、キャノンデール プロサイクリングもエリア・ヴィヴィアーニのために追走作業を引き受けた。

「今日はちょっと怒っているんだ。ボクらのチームにばかり仕事を任せておいて、キャノンデールやオリカ・グリーンエッジは、ラスト15kmの一番厳しい時にはなにもしてくれなかった。それなのに、最後だけ勢い良く前に出てくるんだからね」(カヴェンディッシュ)

オリカ・グリーンエッジが先頭でラスト1kmのアーチをくぐりぬけ、キャノンデールが3人がかりでスプリントへと突入したとき、カヴェンディッシュにはもはや支えてくれるアシストはいなかった。しかし怒りと、明晰な状況判断能力と、他人にポジションを譲り渡させる才能と、なにより世界最強の加速力とで、カヴは長い長いスプリントを切った。前にいた7人など瞬時にごぼう抜きにして、300mを一息で駆け抜けた。

「今日は『スプリントしたくない』ってあらかじめ言っていたんだ。ステージは長かったし、ゴール近くに決して簡単ではない峠が待ち構えていたから。でも監督が、チームメートに引くように命じた。そして彼らは、それを1日中、100%の力で続けてくれた。山でボクを助け、追走のために加速を続けてくれた。ボクがスプリントしたくないって言っているにもかかわらずね!そしてボクの仕事は、スプリンターだから……。チームメートたちをがっかりさせるわけにはいかなかったんだ。チームは完璧だった。チームメートたちを誇りに思うよ」(カヴェンディッシュ)

カヴの今大会4勝目、プロ通算101勝目を見届けたジロ一行は、翌日から勝負の最終週へと突入する。ウィギンスとヘシェダルは消え去ったが、マリア・ローザ争いはこれからが本番だ。

「ジロは決して簡単ではない。たとえウィギンスが抜けたとしてもだ。エヴァンスとのタイム差はいまだ非常に近いし、他にもライバルたちが控えている。警戒し続けなければならない。次のステージでボクがアタックをかけるかどうかは、まだ分からない。調子にもよるし、天候にもよるね。天気予報の知らせは良くないみたいだけれど、とにかく、気温が下がりすぎないことだけを願ってる」(ニーバリ)

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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