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サイクル ロードレース コラム 2014年5月17日

ジロ・デ・イタリア2014 第7ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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暗黒の木曜日から一夜明けて――。前ステージの大集団落車で4人が即時棄権し、この朝は、2人がスタート地に姿を現さなかった。今ステージの途中にも、2人が自転車を降りた。開幕からちょうど1週間。ジロ・デ・イタリアのプロトンは186人にまで小さくなった。

満身創痍の一行は、3日連続の「200km超」ステージに走り出した。スタート直後からアタック合戦が繰り広げられた。逃げ切りの可能性が、ゼロではなかったからだ。

なにしろ前日の出来事のおかげで、マリア・ローザのマイケル・マシューズは、プロトンの大多数から十分なアドバンテージを得ていた。タイム差調整さえ怠らなければ、逃げ切り勝利を許したところで、ジャージを失う恐れはない。さらには疲れや傷を背負う総合本命たちも、翌日からの本格山岳2連戦へ向けて、こんな平坦ステージで無茶はしてこないはずだった。そもそもオリカ・グリーンエッジだって牽引役スヴェイン・タフトは体を痛めていたし、ブレット・ランカスターはDNS(出走せず)で、マシューズ本人も疲労困憊だった。

「昨日あれだけ努力したからね。今日のボクは100%じゃなかった。だから、ステージ中は、ジャージを守ることだけを考えた」(マシューズ)

スタートからしばらくして始まった4級峠で、ついに5選手が飛び出した。ロビンソン・チャラプド、ウィナー・アナコナ、ビョルン・トゥーラウ、ニコラ・ボーエム、ネイサン・ハースの先頭集団は、最大9分のリードを許された。ゴール前39.5km地点の4級峠山頂でも、タイム差はいまだ4分半近く残っていた。

「むむ、これはいけないぞ、と思って、チームメート3人を集団前線に送り込んだ。追走作業に取り掛かってもらった。そこからの彼らは、素晴らしく模範的なアシスト作業を行ってくれた」(ナセル・ブアニ)

そこまでのスプリンターチームは、前方に1〜2名ずつ送り込んで、なんとなく牽引する程度だった。断然張り合ったのは中間ポイントのみ。とはいっても、エリア・ヴィヴィアーニは奮闘したが(6位通過で6pt獲得)、ブアニはほんの軽くしか加速しなかった(10位通過で1pt獲得)。発射台役のセバスティアン・シャヴァネルは、リーダーを急かしたそうだが、「オレは参加しねぇ。ゴールのために力を取っておきたいから」と言い返されたとかなんとか……。

ともかく、山頂を過ぎると、本気の追走が始まった。FDJ ポワン エフエール、キャノンデール、ジャイアント・シマノ等々、複数のスプリンターチームが必死で先頭交替を繰りかえした。エーススプリンター、ジャコモ・ニッツォーロのために、トレックファクトリーレーシングの別府史之も高速牽引を敢行した。

残り30kmで3分50秒、20kmで2分40秒、10kmで1分12秒。前を行く5人も、必死で協力し合って先を急いだが、無常にもタイム差は急速に縮まって行った。2日前にも最後まで粘ったトゥーラウや、ハースは、最後のあがきを見せた。それでも、ほんの少したりなかった。ラスト3kmのアーチを抜けた直後に、集団に飲み込まれていった。

先頭列車を走らせたのは、大会初日2日間と同じように、ジャイアント・シマノだった。たとえ区間2勝のマルセル・キッテルがいなくとも……、完璧なトレインメンバーは揃っている。最終車両には、いつものリーダーの代わりに、ルカ・メズゲッツを乗せた。ラスト250mの緩やかなカーブを抜けるまで、プロトン随一の高速列車に引かれ、スロベニア人は好位置を守り続けた。しかし「代替リーダー」は、ラスト200mからの本気の殴り合いには、まだ慣れていなかったのかもしれない。

むしろ、シャヴァネルの後輪を見失い、そのメズゲッツの背中にぴたり張りついていたブアニが、するりと脇を抜けだした。フェンスの間の、ほんの小さな隙間だったけれど!

「メズゲッツが加速を始めた後、フェンスに沿って右側からスプリントを打った。マシューズとニッツォーロが左側から飛び出したから、左へ行く道は塞がれてしまった。つまり右しか選択肢がなかったんだよ。メズゲッツが寄せてこなくて幸いだったね。じゃなきゃ、間違いなく落車してただろうから」(ブアニ)

エアロヘルメットにエアロスーツを着込んだフレンチスプリンターは、荒々しく2勝目を手に入れた。2013年ブエルタ・ア・エスパーニャでも、フランスの若手ヒルクライマー代表ワレン・バルギルが、区間2勝を上げている。これが3勝になると、1999年ジロのローラン・ジャラベールまで遡らねばならない……。またグランツールのポイント賞をフランス人として持ち帰ったのも、1999年ジロのジャラベールが最後だ。果たして23歳のブアニは、「フランス最後の大チャンピオン」ジャラベールに並ぶ快挙を、達成できるのだろうか!?とりあえず、中間では無理に取りにいかなかったポイントも、フィニッシュラインで大量50pt加算した。燃えるような赤いジャージも取り戻した。

「明日からの山岳2連戦は、歯を食いしばって耐えるさ。出来れば、中間ポイントも取りに行く。……大会完走を考えているかって?この赤いジャージを放り出して、家に帰ることなんかできっこないよ!」(ブアニ)

前夜に山頂フィニッシュを勝ち取ったマシューズは、「なんだかんだ言っても、やっぱりボクはスプリンターだから」と、疲れも忘れて集団スプリントに加わった。結果は4位。もちろん表彰式で、綺麗なジャージを改めて身にまとった。本人によれば、おそらく、これが最後のマリア・ローザになるだろう。

「ずっと前から、ボクらは分かってた。明日はきっと、マリア・ローザで走る最後の日になるって。明日、このジャージを失ったら、ものすごく悲しいだろうな。もちろんジャージを守るために、全力を尽くす。でも、現実的に考えて、ボクにできることはそれほど残ってはいない。ボクらチームにとって、素敵な1週間だったよ」(マシューズ)

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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