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2014年は、グランツール優勝候補にとって、とことん落車凶年である。ジロではホアキン・ロドリゲスが、雨の第6ステージで、ドミノ倒しの犠牲となった。ツールでは第4・5ステージで3度転んだクリス・フルーム、第10ステージの下り中に時速75kmでアスファルトに叩きつけられたアルベルト・コンタドールが、それぞれに志半ばで戦いを立ち去った。そして、ブエルタでは、ナイロ・キンタナが……、個人タイムトライアル中に自転車から放り出された翌日、再び地面に横たわった。
スタートからほんの20kmほど走った時だった。高速で飛び出し合戦が巻き起こっている真っ最中に、集団落車が発生した。複数の選手が犠牲となった。キンタナは右肩を押さえながら起き上がったが、2度と走り出すことはなかった。24時間前にはマイヨ・ロホを着ていたコロンビア人は、救急車で大会を去っていった。診断によれば、右肩甲骨の変異骨折。翌日にも緊急手術が必要とのこと。2014年ジロ総合覇者は、シーズン2つ目のグランツール獲りを、不本意な形で断念することになった。
この日だけで4選手が戦いを離れた。この夏のツールで総合3位に入ったティボー・ピノも自転車を降りた。大会直前に感冒にかかり、高熱をおしてレースを続けてきたが、これ以上、もはや先を続けることはできなかった。
キンタナが消えても、アタック合戦の火は消えなかった。時にマイヨ・ロホ姿のアルベルト・コンタドールさえ、前方に飛び出したことも!さらに第1中間ポイント=59km地点では、コンタドールとアレハンドロ・バルベルデがスプリントを打つ一幕も見られた。自動的にモヴィスターのチームリーダーへと押し上げられた総合2位バルベルデが、1位通過でボーナスタイム3秒をさらい取った。コンタドールは2位通過2秒を計上した。
「キンタナの落車は、ちょうど、僕の側で起こったんだ。目の前で数選手が転んだ。僕は瞬時に察知して、なんとかよけることが出来たけれど、ナイロは避けきれずに地面に強く転がり落ちた。僕はまたしても、チームリーダーとしての立場を任されることになった。こんな状況を喜ぶことはできないけれど、でも、僕は責任を持って引き受けなければならない」(バルベルデ、大会公式リリースより)
その直後に、ようやく5人の逃げが許された。スタート直後から幾度となく飛び出しを試みてきたエリア・ファヴィッリとヨアン・ルポン、今大会2度目の逃げとなるペイオ・ビルバオ、3度目のエスケープに乗ったピム・リヒハルト、そして、前日の個人タイムトライアルで7位と好走を見せたヴァシル・キリエンカ。エスケープ集団は最大4分差をつける。ただし、5人だったのは、ほんの35kmほど。第2中間ポイント=96.2km地点を巧みに利用して、キリエンカがあっさりと独走態勢に入ったからだ。
「今日の最終峠がどれほど難しかったか、言葉ではとても言い表せないよ」(フルーム、ツイッターより)
ラスト6kmで4月の心臓手術から復帰したばかりのロベルト・ヘーシンクが飛び出し、独走態勢に持ち込むと、今度はモヴィスターが集団牽引を引き受けた。ゴール前4kmからダニエル・ナバーロやダニエル・マーティンが交互に攻撃をぶちかますと、マイヨ・ロホ自らが状況収集に動いた。相変わらず2013年ツール覇者は、ひたすら受難の時を過ごしていた。ヨーヨーのように、遅れたり、追いついたり。かと思えばゴール前2km、最前線まで競りあがってくると、睨み合ったまま膠着状態のコンタドール、バルベルデ、ロドリゲスの間に割って入ったり。
こんな巨星たちの牽制ごっこの、隙を上手く突いたのは、ファビオ・アルだった。コンタドールがラスト2kmで動いた、その直後にまず軽い加速を仕掛けた。ヘーシンクやマーティンが吸収された後、ゴール前1kmのアーチの手前で、今度は本気で飛び出した。
「(パオロ・ティラロンゴの助言に従って)まずは最終峠で、有力選手たちについていくことを考えた。その後は、アタックを打つ絶好のタイミングを、探り続けた。そして、ゴールまで1kmで、僕は飛び出した。勝利を引き寄せることに成功したよ!」(アル、大会公式リリースより)
2014年ジロでは「モンテカンピオーネ=チャンピオンの山=パンターニ記念の山」を制し、今ブエルタでは、なにやらミゲル・インドゥラインを思わせる「聖ミゲルの山」を勝ち取った。しかもコンタドールに「なんだか僕の若い頃を思い出させるなぁ……」(大会公式リリースより)と言わしめた。ジロでは最終的に総合3位まで駆け上がった24歳は、現時点では2分13秒差の総合7位につける。
「いつも、もっと、もっと、という欲望を抱いている。ジロ後には休養をたっぷりとったけれど、いつだって、自転車選手として勝利に飢えていたし、チームのために好結果を出したいと願ってきた。ただ、この先は、1日、1日を走っていく。ブエルタを走るのは初めてだし、まだ厳しいステージが残っている。それに、1シーズンで2つのグランツールを走るのは、これが初めての経験だってことも忘れてはならないんだ」(アル、大会公式リリースより)
若者の背後では、30歳を超えたベテラン3人組が、2位・3位争い=ボーナスタイム収集のスプリントに挑んだ。ちなみに2012年大会でも、コンタドール、バルベルデ、ロドリゲスは、三つ巴のスプリントを幾度も繰り返したものだ。第16ステージ終了時点まで、つまりコンタドールが第17ステージで全てをひっくり返す前夜まで、ゴールボーナスタイムだけでロドリゲスが66秒、バルベルデが36秒をかき集めていた。一方でコンタドールが手にしたのはわずか20秒。すなわち、2人のライバルに比べると、エル・ピストレロはボーナスタイム収集を少々苦手としている。この日もやはり、目の前で、バルベルデ(2位)とロドリゲス(3位)にそれぞれ6秒と4秒を奪い取られた。
総合2位バルベルデは、中間ポイント3秒とゴールでの6秒を手に、総合首位との差を27秒→20秒に詰めた。ロドリゲスは総合6位から1分35秒差の総合5位へ浮上。へとへとに見えたフルームは、結局のところ最後まで三者に食らいつき、同タイムでフィニッシュラインを越えた。第9ステージ覇者ウィナー・アナコナが、総合4位から8位へと順位を落としたおかげで、フルームは自動的に4位へと格上げされた。
「ステージの内容には満足している。最終峠ではすごい駆け引きが繰り広げられた。それにしても今ブエルタは、連日とてつもない戦いが続いてるよね。しかも、まだ、半分しか終わってない。バルベルデとの差は、ほんのわずか。20秒なんて、何の意味もない。彼はすごく強いし、おそらく最後まで接戦が続くだろう」(コンタドール、大会公式リリースより)
グランツールには過去11大会出場し、うち7大会でリーダージャージを身にまとってきた。もちろん、その7回全てで、アルベルト・コンタドールは総合優勝に輝いてきた(うち2大会は後に優勝剥奪)。5回着用して1回優勝のバルベルデと、2回着用して1回優勝のフルームと、5回着用して0回優勝のロドリゲスを、果たしてどう攻略していくつもりだろうか。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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