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ついに2015シーズン最初のビッグクラシックがやってくる。パリ〜ニースとティレーノ〜アドリアティコでしっかり足慣らしを済ませた強豪たちが、「クラッシチッシマ=クラシックの中のクラシック」のタイトルを巡って、約300kmの長旅に出る。
1907年に産声を上げたミラノ〜サンレモが、106回目の春を迎える。自転車界が誇る5大モニュメント(記念碑)の1つは、昨季は大胆なコース変更で大いに揉めたものだったが(最終盤に新たな上りをひとつ追加するというもの。結局は道路状況の悪化により中止された)、今年は古き良き伝統に立ち戻る方を選んだ。フィニッシュラインが、8年ぶりに、あのヴィア・ローマに帰ってくるのである!
ローマ通りで初めて勝利をつかんだのは、1949年、イタリア自転車界の英雄ファウスト コッピだった。自転車史上最強を誇るエディ・メルクスは、この地で史上最多の7度、拳を天に突き上げた。オスカル フレイレが2007年にスプリント勝利を上げるまで、通算49回、ヴィア・ローマは死闘の決着を目にしてきた。そんな伝説や名勝負がぎっしり詰まったゴール地が、2015年、再び歴史の証人となる。
果たしてフィニッシュラインの移動で、最終盤の戦いは、去年までと違った展開を見せるだろうか?
昨年よりも1km短く、総距離は293kmとなったけれど、大まかなコース設定に変化はない。おそらく大筋の展開にも、変化はないのだろう。ミラノから走りだし、リグリア海岸まで一気に南下した後、海岸線を通って花の都サンレモへとたどり着く。コース中盤にトゥルキーノ峠を登り、230kmを過ぎてからの小さな難所トレ・カピ(3つのカポ、カポ・メーレ、カポ・チェルヴォ、カポ・ベルタ)で集団はじわじわと小さくなり、ゴール前20kmのチプレッサ(登坂距離5.6km、平均勾配4.1%、最大9%)でレースは激化。そしてゴール前約13kmからのポッジオ(3.7km、3.7%、8%)で、最後のアタック合戦が繰り広げられる。上りでも、下りでも。強烈な一発が決まれば、逃げ切りの数人or単独ゴールに。もしも決まらなければ、スプリント勝負に――。
違いが生まれるとしたら、ポッジオを下りきってからフィニッシュラインまでの距離が短くなったこと。去年までのゴール地、海岸道路のルンゴマーレまでの距離は2.95km。対する今年は2.35km。つまりフィニッシュまで600m短くなった。たかが600m。されどアタック野郎たちにとってはゴールが600m近くなり、スプリンター組には追走に使用できる距離が600m減ったことになる。たとえば、去年までなら、下りきった時点で10秒差なら追走組に有利だったが、今年は逃げ切りもあり得ると言われている。
だからこそ、ミカル クヴィアトコウスキーやトニー ギャロパンは、興奮を隠せずにいる。「ポッジオの下りは好きだな」と語る前者は、昨秋のスペインで雨の下りアタックを成功させ、世界チャンピオンジャージをもぎ取った。後者は昨ツールでマイヨ・ジョーヌを身にまとった数日後、下りゴールでギリギリの独走逃げ切りを決めた。そもそも数日前のパリ〜ニースの第6ステージで、悪天候の中、クヴィアトコウスキーの猛烈なダウンヒル攻撃に反応できたのはギャロパンだけだった。最終的にはフランス人が全てを振り切り、ニースへの果敢なる下り勝利を手にしている。確かに両者の所属チームには、スプリンターエースがいるけれど……、展開次第では、2人が下りに飛び込んでいく姿が見られるかもしれない。特にお天気が悪い場合には!
ちなみにプロトン屈指の下り巧者ではあるけれど、2012年のヴィンチェンツォ ニーバリはポッジオの上りで鋭いアタックを仕掛けた。すかさずサイモン ゲランスとファビアン カンチェッラーラが張り付き、3人のスプリントをオーストラリア人が制した。2008年のカンチェは、最後の平地部分でドカンと独走態勢に持ち込み、自身初のクラシック勝利を手に入れている。そして今年はティレーノ最終日TT勝利で、万全の仕上がりをアピール済み。
それでも、ミラノ〜サンレモの別名は、スプリンターズクラシックなのだ。「ミラノ〜サンレモとは、あらゆる選手に開かれたレースさ!」とギャロパンのやる気を刺激し、パンチャーのフィリップ ジルベールやヒルクライマーのニーバリだって何度も夢を見てきたけれど、7時間にも渡る長い長いレースは、やっぱり小・中集団のスプリントで幕が降ろされる可能性が極めて高い。なにしろ2015年も、有名どころの「ピュア」スプリンターや「上れる」スプリンターが、こぞってチームリーダーとして大会に乗り込んでくる。ひたすら絶好調のアレクサンドル クリストフ、本来のレベルを取り戻しつつあるマーク カヴェンディッシュ、ティレーノで9ヶ月ぶりに勝利を上げてご機嫌のペーター サガンや、パリ〜ニースでそれぞれに区間を制したアンドレ グライペルやマイケル マシューズ、さらにはジョン デゲンコルブ、ナセル ブアニ、アルノー デマール、ゲラルド チオレックetc……。しかも2013年のゲツィオレクや2014年のクリストフのように、(当時)無印のスプリンターが、さっと横から勝利をさらいとることだってあるのだ!
ラ・プリマヴェーラ(春)はまた、春クラシック月間の突入を告げる。ここから5週間に渡って、UCIワールドツアー登録のワンデーレース8戦(うちモニュメント4戦)が、立て続けに行われる。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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