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サイクル ロードレース コラム 2015年4月17日

【アムステルゴールドレース/プレビュー】戦いの舞台はオランダのリンブルフ地方へ。ツール覇者、ニーバリも参戦予定!

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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ごつい石畳路を脱出し、自転車界一行は、花と緑に彩られた美しき丘陵地帯へとやってきた。主役たちの体つきも顔ぶれも、がらりと変わる。ガタイのいい重量級ルーラースプリンターはしばしの休息に入り、しなやかで、細目のパンチャークライマーが激坂でひらりと前線へ躍り出る。そんなアルデンヌ3連戦の第一弾は、オランダの、リンブルフ地方で勃発する。しばしば「30の上りと、1000のカーブ」のレースと称される、アムステル・ゴールドレースだ!

正確に言えば、2015年大会では、全長258kmのコースに34回の上りが登場する。嫌になるほど繰り返される難所は、邪魔者を後ろからじわじわと振り落としてくれる。ただし、決定的なアタックの舞台となるのは、たいてい最後の1ヶ所だけ。おなじみカウベルグである。2003年にカウベルグが最終峠として選ばれて以来、突入前にアタックを成功させ、坂道に単独で突入し、そのまま栄光をつかんだのはわずか4人。残り8回は全長800m(データによっては1200mとも)、平均勾配5.8%、最大12%の坂道で、壮大なる勝負の駆け引きが繰り広げられてきた。

だからこそカウベルグはレースの花形でもある。マーストリヒトをスタートしたプロトンは、それぞれルートの違う4つの周回をこなしつつ、各周回の最後には必ずカウベルグへと立ち寄る(6番目54km地点、22番目165km地点、31番目237km地点、34番目255km地点)。また坂道の中腹までファルケンベルフの市街地が広がり、特にバーやレストランが立ち並ぶため、4度の通過をビール片手にバーのテラスで観戦……なんていう粋なファンたちも多い。

坂道の両脇が殺伐とした草むらになったら、いよいよ本命たちの加速タイムがやってくる。緩やかに左へとカーブする地点が、選手たちお気に入りのアタックポイント。その先にかかる歩道橋の下を、一番で潜り抜けることができたら、勝利はもはや手に入ったも同然だろうか。ただし、坂のてっぺんで、ほっとしてはならない。確かにかつては、坂の上がフィニッシュだった。しかし2年前から、勝敗を決するラインは、1.8km先に引かれている。残りの平地でペダルを回すエネルギーも、きっちり残しておかねばならない。

さて、数あるクラシックレースの中では、比較的“若い”と言われ続けてきたアムステル・ゴールドレースだけれど、2015年大会で晴れて第50回大会を迎える。それに最終坂カウベルグは、1938・1948・1979・1998・2012年と過去5回も世界選手権の舞台となってきた。だから当然のごとく、過去9人(全員合わせて15勝)のアムステル・ゴールドレース覇者が、世界チャンピオンの証アルカンシェルジャージを身にまとった経験を持っている。それ以外にも6人の大会勝者が、世界戦の表彰台に登っている。

もちろん新旧世界チャンピオンの名前が、この日曜日も優勝候補に上げられる。中でも大本命とされるのが、まさしく2012年秋に、カウベルグを真っ先に駆け上がったフィリップ・ジルベールだ。しかも2010・2011・2014年の過去3度アムステル・ゴールドレースを制しており、つまり坂道の隅から隅まで、完全に熟知している。大会4日前のブラバンツ・ペイルでは、チームメートのベン・ヘルマンスの優勝を見事お膳立てしただけでなく、自らも坂道スプリントの果てに2位に入る好調さを見せた。2011年には3連戦全てを勝ち取ったアルデンヌ・スペシャリストは、「調整が上手く行っていると確信できたし、これから続く3連戦に向けて、大きな自信になった」(テレビインタビューより)と、引き締まった顔で笑う。

虹色ジャージを着こなすミカル・クヴィアトコウスキーは、過去3度参戦し、2013年4位、2014年5位と表彰台まであと一歩に近づいている。ちなみに去年は仕掛けるのが早すぎた。経験を積み、教訓を胸に、今年こそはと誓っている。だからといって、表彰台や2位ではもはや満足できないはずだ。なにしろ所属チームのエティックス・クイックステップは、石畳クラシック@ワールドツアーレースを、全て2位で終えてしまったからして……。チームメートのジャンニ・メールスマンやジュリアン・アラフィリップも、もしもの場合は、代替リーダー役に立てる器あり。

世界選手権の表彰台に6回も登りながら、一度もアルカンシェルをつかめずにいるアレハンドロ・バルベルデは、3連戦の後半2戦、つまりフレッシュ・ワロンヌとリエージュではそれぞれ2度ずつ歓喜を味わっているけれど、初戦アムステル・ゴールドレースだけはどうしても勝てずにいる。2013年の2位が最高位だ。やはり世界戦メダルが2回のホアキン・ロドリゲスもまた、2011年の2位が最高位。まあ、プリトのような激坂王にとっては、カウベルグは緩やかすぎるのかもしれないが。2人のようなグランツールレーサーが、ワンデーのめまぐるしい戦いに参戦するのもまた、アルデンヌクラシックのみどころのひとつ。ツール・ド・フランス現役チャンピオンのヴィンチェンツォ・ニーバリが、今年はどうやらオランダに乗り込むらしい!

12月の鎖骨骨折からようやく復活してきたサイモン・ゲランスは、2011・2013・2014年と3度3位に終わってきて、そろそろもうひとつステップアップしたいはずだ。今季ここまで静かに姿を潜めているカルロス・ベタンクールも、もしも本調子に戻っていれば、優勝をさらいとる実力はある。2013年リエージュ覇者のダニエル・マーティンは、なぜかアムステル・ゴールドレースには縁がないが(最高位75位、途中リタイア3回)、やはり本来の実力さえ出せれば勝機あり。その他にも、要注意人物は数多く存在する。かつてジルベールを優勝に導き、去年は自らが2位に入ったイェール・ヴァネンデール、14年ぶりに地元に優勝をもたらしたいオランダ人バウケ・モレマ、2013年に独走優勝したロマン・クロイツィゲル、ダミアーノ・クネゴにディエゴ・ウリッシに……。

ジルベールより先に、2004年に史上初の“アルデンヌ3連戦同一年全制覇”を成し遂げたダヴィデ・レベッリンのことも、忘れてはならない。43歳の大・大ベテランは、いまだ情熱も実力も失っていない。なにより3月末のセッティマーナ・コッピ・エ・バルタリを総合5位で終え、水曜日のブラバンツ・ペイルも5位に食い込んでいる!!

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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