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サイクル ロードレース コラム 2015年4月24日

【リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ/プレビュー】春のクラシックシーズンの締めくくり。ジロ・デ・イタリアに向けた戦いが始まる!

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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ミラノ〜サンレモで始まった春クラシック月間も、ついにリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(LBL)にて幕を閉じる。1892年に創設された現存する最古のクラシックレースは、2015年4月最後の日曜日、101回目の王者誕生を見届ける。

それにしても……、昨年の記念すべき第100回大会は、クラシック愛好家たちをほんの少しがっかりさせた。だってラスト1kmのフラムルージュへと、30人近くが一気に雪崩込んだのだから。もしかしたら、それが現在の自転車レースの流行なのかもしれない。2015年のアムステル・ゴールドレースは“集団ゴール”だったし、フレッシュ・ワロンヌだってフィニッシュライン200mまでは大きな一塊だった。それでも、開催委員会は、動きのない退屈なレースを繰り返すつもりはなかった。記念大会のために復活させた“80年代の勝負地”フォルジュ坂を、たった1回の使用であっさりと切り捨てた。

リエージュから南下し、バストーニュで折り返すと、再びリエージュ(郊外のアンス)へ。全長253kmのコース上には無数のアップダウンが嫌になるほど続くけれど、正式に設置された坂道は全部で10ヶ所。うち8つがラスト85kmに密集している。ワンヌ、ストクー、オート・ルヴェ。この3連発が、集団をひと回り小さくしてくれただろう。昨年は迂回したロジエとマキザールの2坂が、今年は大会最初の大勝負地ラドゥトゥ(218.5km地点)の前に帰ってきた。近ごろは伝統の勝負地というよりも、フィリップ・ジルベールファンクラブの集会所としてすっかり有名になったラドゥトゥの坂道は、全長2km、勾配8.9%、最大勾配は20%にまで達する。

代わって近年の勝負地といえば、2008年に大会の仲間入りしたラ・ロッシュ・オ・フォーコン坂だろう(234km地点)。全長1.5km、勾配9.4%の坂道は、2009年にアンディ・シュレクが、2011年にはフィリップ・ジルベール(とシュレク兄弟が)が勝利につながるアタックを決めた場所だ。2012年にはヴィンチェンツォ・ニーバリが渾身の一発を打った(が、ラスト1kmでマキシム・イグリンスキーに追いつかれてしまうのであった)。2013年は工事のため迂回し、復帰した2014年大会は特になんの動きも創りだしてはくれなかった。ちなみに、ここを逃すと、あとはゴール前5kmのサン・ニコラ坂(1.2km、平均8.6%)、さもなければゴールのアンスへと続く上り坂でライバルを引き離すしかない。

それにしても……、この春の石畳シリーズからトム・ボーネンとファビアン・カンチェラーラを奪い去った落車の嵐は、アルデンヌ2戦目フレッシュ・ワロンヌでも、大物たちを次々と地面になぎ倒してしまった。ダニエル・マーティン、フィリップ・ジルベール、イエール・ヴァネンデル、さらにはクリス・フルームさえも!

単に“ツール・ド・フランスの下見”に来ていた2013年ツール覇者は、なんとか完走したけれど(LBLは不出場)、他の3人は途中で自転車を下りた。2013年LBL覇者マーティンは頭部を打ち付け、慎重を期すために。肩から臀部まで右半身を擦りむいた2011年王者ジルベールも、一旦は走りだしたが、すぐに続行断念。そのジルベールの2011年アルデンヌ3連覇を第一アシストとして助け、自らもアムステルで表彰台2回のヴァネンデルは、日曜日のアムステルではレースカーに引っ掛けられ、右肘からアスファルトに落ちた。水曜日も同じく右肘から落っこちて……。それでも3選手は、LBLの表彰台候補として、リエージュのスタートラインに立つ。

ディフェンディングチャンピオンのサイモン・ゲランスも調子はいまだ万全ではなさそう。なにしろ昨年末に鎖骨を骨折し、4月上旬にプロトン復帰を果たしたばかり。2015年はたったの7日間しかレースを走っていないのだ!だからチームのオリカ・グリーンエッジは、トリプル・リーダー体制を組むことにした。幸いにもゲランス以外の2人はただ今絶好調。フレッシュ3位のミハエル・アルバジーニと、直前のバスク一周で総合5位に入った22歳の若きサイモン・イェーツである。ちなみにアムステルを3位で終えたマイケル・マシューズは、LBL不出場なんだとか。

22歳といえば、ジュリアン・アラフィリップ。ほんの4日前に生まれて初めてフレッシュ・ワロンヌに参戦し、「恐ろしい壁だった。脚は焼け付き、乳酸が筋肉を襲った」と慄きながらも、ユイを2番目に早く駆け上がった。最終盤に単独で仕掛け、先頭でユイの壁に突進したティム・ウェレンスは23歳。“ヴァンインプの再来”と祖国ベルギーの期待を背負うオールラウンダーは、「アタックしたのは、もちろん勝つためだった」ときっぱり言い切る強さを持つ。今年の2人はあくまで、前者は世界チャンピオンにしてアムステル王者ミカル・クヴィアトコウスキーの、後者はトニー・ギャロパン&ヴァネンデールの補佐役を務める。それでも、若者たちの恐れを知らぬ積極性が、再び火を吹くかもしれない。

34歳最後のレースで3つ目のフレッシュ・ワロンヌ勝利を手に入れて、35歳最初のレースは3つ目のLBL勝利に向かって走る。そんなアレハンドロ・バルベルデが優勝候補なのはもはや言うまでもないだろう。一部のメディアは、「バルベルデへ厳しいマークが集中するのを利用して、もしかしたらチームメートのナイロ・キンタナが一発決めるのでは?」なんて意地悪な分析もする。

数年前はそんなバルベルデのアシスト役を務めてきたルイ・コスタやホアキン・ロドリゲスは、当然今は絶対的チームリーダーとしてバルベルデと対峙する。バルベルデの走り方こそが“選手としての理想像”と語るロメン・バルデは、いよいよ「LBLを勝つ準備は整った」と自信を見せる。クラシックはめっぽう強いのにグランツールはなぜか1度しか勝てないバルベルデとは正反対で、3大ツールコレクションはコンプリートしたけれどクラシックはなかなか落とせないヴィンチェンツォ・ニーバリは、今年こそは、と強く考えているに違いない。所属チーム・アスタナの処遇がそろそろ発表されるのではないか、もしかしたら病気のファビオ・アルの代わりにジロ・デ・イタリアに出るのではないか……等々、あれこれ心落ち着かない状況に置かれているけれど、必ずやチャンピオンにふさわしい走りを見せてくれるはずだ。

ワンデーレース月間が終わると、自転車界はいよいよシーズン最初のグランツールへと向かう。リエージュで王者が生まれたわずか2週間後には、デゲンコルプが初のモニュメント勝利を手にしたサンレモから、ジロ・デ・イタリアが走りだす。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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