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サイクル ロードレース コラム 2015年5月15日

ジロ・デ・イタリア2015 第6ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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山頂フィニッシュの翌日の、極めて平凡な、スプリントステージになるはずだった。フィニッシュライン手前の200mまでは、特筆することは何も起こらぬまま、退屈なほどつつがなくレースは進んでいた。この5日間でたったの1回しかチャンスをもらえなかったピュアスプリンターたちが、こぞって仕事に勤しんだ。5年ぶりにイタリア一周に参加したアンドレ・グライペルが、並み居るライバルを退け、力強く今大会1勝目を奪った。しかし、その背後では、マリア・ローザのアルベルト・コンタドールが地面に転がり落ちていた。

グランツールの第1週目に、大集団落車はつきものだ。プロトンの規模は大きく、緊張感に溢れ、しかし誰もがまだ元気いっぱい。レース内のヒエラルキーはいまだ完全に作り上げられておらず、そして集団スプリントフィニッシュが多い。だからこそ、第2ステージと第3ステージで、ティンコフ・サクソは集団制御に動いた。落車やメカトラのアクシデントを避けるために、メインプロトン前線で隊列を組み、ゴールギリギリまで懸命に仕事を続けた。第4ステージと第5ステージで総合争いは大きく絞り込まれた。しかし、カオスの序盤戦は、いまだ終わってはいなかった。

スタートと同時に、勇敢な選手たちが飛び出していった。マレク・ルトキヴィチ、アラン・マランゴーニ、マルコ・バンディエーラ、エドワード・グロス、アレッサンドロ・マラグーティの5人が、逃げ集団を作り上げた。特に前日エスケープに乗りそこねたNIPPO・ヴィーニファンティーニは、2人を前方へ送り出した。メイン集団からは最大5分ほどのリードを奪った。

ただ、残念ながら、所詮はジャージアピールタイムに過ぎなかった。中盤過ぎに小さな難所が控えるだけで、あとは前半も後半もフラットな道が続くステージでは、当然のようにスプリンターチームがきっちりと追い上げてくる。ゴール前13km、5人の奮闘は静かに幕を閉じた。

とりわけロット・べリソルが、エスケープが出来上がった直後から、プロトン先頭で赤い列車を走らせた。第2ステージは「スプリントを早く仕掛けすぎて」、3位に甘んじたグライペルを、先頭でフィニッシュさせるために。

「チームメートに感謝してる。彼らはレース制御のために最初から最後まで力を尽くしてくれた。サンダー・アルメはずっと先頭を走り、エスケープとのタイム差をコントロールした。スティグ・ブロエックスとルイ・ヴルヴァーグは、初めてのグランツールだというのに、しっかりそれぞれに任務を果たしてくれた」(グライペル、公式記者会見より)

フィニッシュラインで爆発的なパワーを発揮する姿とは対照的に、普段は物静かなグライペルは、自らのアシストを非常に大切にすることでも知られている。そんなリーダーに、ボーイズも信頼を寄せる。フィニッシュ間近の、カーブとうねりの入り混じった危険な道に突入すると、ロット列車はさらに猛然と先頭を突っ走った。

「ラスト3kmに入ったら、絶対に最前線で走らなきゃならないと、分かっていたんだ。朝のミーティングで仕事内容を決めた。そして、予定通りに、全てを実現できた。ラルスイティング・バクは長く先頭を引き、それからアダム・ハンセンに、最後はグレゴリー・ヘンダーソンに先頭を引き継いだ。フィニッシュまではいまだ遠かったけれど、ヘンダーソンは耐えてくれた。そして、僕が、仕事を完成させたんだ」(グライペル、公式記者会見より)

32歳のゴリラは、2008年の1勝、2010年の1勝に続き、ジロ区間3勝目を手に入れた。もちろん、今回は1勝で変えるつもりはないはずだ。白地のドイツチャンピオンジャージから、赤いポイント賞ジャージに着替えたグライペルには(これでチームメートたちとお揃いの色になった!)、第10・13・17ステージと、いまだ両手を上げるチャンスが残されている。特に今年は、久しぶりに、最終日もミラノでのスプリントステージが待っている!

そのミラノでマリア・ローザを着ていることこそが最重要課題、とコンタドールは前夜に語っていた。たった24時間後には、そのミラノ到着さえ、不確実になってしまった。

逃げの5人を吸収すると、ティンコフ・サクソはいつものように、前方できっちり集団コントロールに励んだ。ゴール前3kmで、最前列こそロットに譲ったものの、できる限り前方に留まっていた。しかし、前から20〜30番目を走っていたダニエーレ・コッリが、ゴール前200mで激しくアスファルトに叩きつけられると、コンタドールもまた混乱のまっただ中に放り出された。フェンスから身を乗り出しすぎた観客のカメラレンズが、大惨事を引き起こした。

コッリは左上腕を骨折し、救急車で大会を去った。コンタドールはまもなく自転車にまたがり、自力でゴールラインを越えた。もちろん、「ラスト3kmに入ってのち、落車やメカトラで集団から遅れた場合、アクシデントの時点で所属していた集団のゴールタイムが与えられる」という救済ルールが適応されたため、総合首位の座は危なげなく守った。しかし、表彰式では、マリア・ローザを身にまとえなかった。左肩が痛み、腕を上手く動かすことができなかったからだ。

チームドクターがアイシングで救急処置を施した後、毎ゴール地に設置される移動治療室で、コンタドールはレントゲンとスキャンによる精密検査を受けた。左肩関節にわずかな不安定さが認められた。脱臼と診断された。右膝には軽い痣を作った。

「体のどこも壊してはいないんだけど、左肩を脱臼した。僕は肩の動きを良くするために、もう一方の腕を使って少し動かそうとしていたんだけど、ドクターから今夜は左腕を固定して過ごすよう言われた。とにかく明日のステージ前までは、言いつけを守る。レース用には、ドクターが包帯を巻いてくれることになってる。だから明日の第7ステージはスタートするつもり。だってジロに向けて、必死に練習してきたんだから。ギリギリのところまで、続けるために努力していく」(コンタドール、チーム公式リリースより)

2011年ツール・ド・フランスでは、初日に落車し、その影響を引きずり総合5位で大会を終えた(後に成績は剥奪)。去年のツールは、雨の下りで落車し、右膝骨折でリタイアした。今回は幸いにも、どこも折れていない。

「明日のスタートに関しては、楽観視してる。でも、最終的な判断はスタート直前までまたなきゃならない。どんな状態になっているのか、そして落車の影響がどれだけ深刻なものなのか、しっかり判断する必要がある」(コンタドール、チーム公式リリースより)

恐ろしいことに、コンタドールの言う「明日」には、2015年ジロ・デ・イタリアの最長ステージが待っている。6時間半以上も、左肩の痛みと闘いながら、264kmを走り切らねばないのだ。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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