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サイクル ロードレース コラム 2015年8月27日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2015】第5ステージレースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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生まれて初めてのグランツールを戦うカレブ・ユワンが、生まれて初めてのワールドツアー勝利を手に入れた。2015年ブエルタで3番目に若い21歳(と1ヶ月15日※8月26日時点)が、オリカ・グリーンエッジに今大会2勝目をもたらした一方で、チームメートのエステバン・チャベスは小さな分断の犠牲となり、わずか1秒差でマイヨ・ロホを失った。反対にジョン・デゲンコルブのスプリント勝利を逃し、悔しい思いをしたジャイアント・アルペシンだったが……、思いがけぬトム・デュムランのリーダージャージ着用に歓喜した。

スペインの長い夏休みも、終わりに近づきつつある。気だるい午後に、ツガブ・グルメイが真っ先に飛び出した。アントワーヌ・デュシェーヌとイーリョ・ケイセが後に続くと、3選手は、南スペインの平坦な大地を先頭で突き進んだ。最大7分のリードも手に入れた。

残念ながら、逃げ切り勝利の可能性なんて、ほぼ存在しなかった。大会2度目のスプリントチャンスを——しかもこの日を逃すと、おそらく第12ステージまでチャンスは巡ってこない——、スプリンターチームがみすみす見逃すわけもなかった。オリカ・グリーンエッジは、真紅のリーダージャージを身にまとうコロンビア人ヒルクライマーのために、さらに韓国系の母親を持つ新人スプリンターのために、早めにタイム差コントロールに乗り出した。すでにこの2日間大いに働いてきたティンコフ・サクソも、緑ジャージを着込んだペーター・サガンのために牽引に勤しんだ。なによりジャイアント・アルペシンが、作業の大部分を請け負った。2012年大会で5勝、昨大会4勝をスプリントで叩きだしたデゲンコルブのために。

逃げ切れないはずの2015年ジロ最終ステージで、衝撃的な逃げ切り勝利を奪い取ってしまったケイセの脚をしても、最後までリードを保つことはできなかった。ゴール前18kmの中間ポイントを利用して、ベルギーのトラック巧者は単独で飛び出したが、わずかな望みもラスト9kmで断たれた。

カハルラルやエムティーエヌ・クベカも隊列を組んだが、やはり最後に競り合ったのはジャイアントとオリカ、ティンコフだった。ラスト3kmからは、小柄なユワンを背負ったオリカ列車が主導権を握った。ゴール前600mの直角カーブには、ダニエーレ・ベンナーティと共にサガンが先頭で飛び込んだ。6%近い勾配の最終ストレートでは、最終発射台クーン・デコルトの背後から、デゲンコルブが真っ先にスプリントを仕掛けた。ユワンとサガンは、すかさずドイツ人スプリンターの背後に飛び乗った。

「すごく厳しいフィニッシュだった。でもチームメートたちが素晴らしい仕事をしてくれて、上り開始前に、僕を先頭まで導いてくれた。完璧なるリードアウトをしてもらったから、僕はなんの苦労もなく、坂を上がっていくことができた。ここで余分な努力を要していたとしたら、エネルギーを大いに消耗していたかもしれないけどね」(ユワン、公式記者会見より)

サガンを置き去りにし、デゲンコルブを軽々と追い抜いくと、ユワンは有り余るエネルギーを爆発させた。ヘラルド・サン・ツアー、ツール・ド・ランカウイ、ツール・ド・コリアと主に欧州以外の大陸で区間勝利を重ねてきたオージーが、4月のブエルタ・ア・ラ・リオハ(スペイン)に続き、ついに自転車大陸で大きな勝利をつかみ取った。

「僕にとっては最初のビッグ勝利だ。スペシャルな気分だね。正直に言って、どんな感じなのか想像もできなかった。ワールドツアー大会で勝利を上げたことがなかったから、きっと難しいだろうなぁ……、って。でもチームは僕を信じ続けてくれたし、周りが自分のために100%を尽くしてくれているうちに、僕も自分のことを信じ始めていたんだ。他の若い自転車選手と同じように、夢はツールを戦うこと。いつかは、ツールで、マイヨ・ヴェールを着たい。今日の勝利が、その最初の一歩になってくれることを、願ってる」(ユワン、公式記者会見より)

もしかしたらデゲンコルブ(180cm、77kg)やサガン(183cm、73kg)よりも体が小さいから(165cm、61kg)、上りでパワーをフル稼働させる必要がないのも有利だったのかもしれない、と本人は分析する。また第3ステージでは、途中の1級峠で遅れ、ゴールスプリントには参戦できなかった。そのおかげで、もしかしたら、他の2人よりも体力を残していたのかもしれない、とも。とにかく2日前に区間を制し、前日はパンチャー群に混ざって激坂をよじ登ったサガンは、やはり体力的に限界を感じていたようだ。

「今日は勝てる脚がなかった。最高のポジションにつけていたのに。昨日のひどく難しいステージで、エネルギーを大いに使い果たしてしまったんだと思う。振り返ってみると、僕にはまるで向いていなかったのにね。今日はその報いを受けた」(サガン、チーム公式リリースより)

それでも区間3位に食い込み、ポイント賞ジャージはさらにしっかりと着込んだ。一方でデゲンコルブは2位に終わった。大いに働いたチームメートたちは、ちょっとした失意を抱いていた。

「今日の計画はデゲンコルブを勝たせること。僕の仕事はラスト2kmでチーム列車を牽引することだった。フィニッシュの喧騒の中でチームメートを見失ってからは、僕はただ、タイムを失わないためにスプリントした。チームバスへと向かいながら、ちょっとがっかりした気分だった。ステージ勝利が取れなかったからね。でも、突然、無線で、僕がマイヨ・ロホを取ったと聞かされた」(デュムラン、チーム公式リリースより)

最初は耳を疑ったという。プロトンはひとかたまりでゴールしたように思えたから。ただし軽い上りフィニッシュだったせいで、ところどころに、ほんの小さな分断が発生した。集団ゴールの場合、前方の選手とのわずか1mの切れ目が、大きなタイム差を引き起こす。区間4位と5位の間には2秒差、18位と19位の間には6秒差……。つまり区間15位のデュムランは、区間21位のチャベスから6秒を奪い取った。前日までの5秒遅れ総合2位から、1秒差で逆転首位に躍り出た!

「なんとなく複雑な気分だよ」(デュムラン、ゴール後TVインタビューより)

と告白したデュムランだったが、ツールのリベンジを、ブエルタで見事果たした。母国オランダ開催のツールでは、初日個人タイムトライアルでの優勝&マイヨ・ジョーヌを期待されながら、8秒差の4位に終わった。2日目には6秒差に詰めよるも、3日目に落車リタイアを余儀なくされた。

「回復には2週間を要したけれど、あの時、もっと強くなって帰ってこようと決めた。ハードに練習を積んで、トレーニングに集中してきた。調子は良かった。今日、リーダージャージを手に入れた。本当に嬉しいよ」(デュムラン、チーム公式リリースより)

念願をついにかなえたデュムランは、「出来る限りジャージを守りたい」と目標を口にする。翌日からは、いよいよ、ブエルタは山の色を刻していく。まずは2日連続の、山頂フィニッシュが待っている。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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