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サイクル ロードレース コラム 2016年8月22日

ブエルタ・ア・エスパーニャ2016 第2ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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ピュアスプリンターのいない大集団スプリントで、ジャンニ・メールスマンが初めてのグランツール勝利を勝ち取った。グランツール初参加の2人、ミカエル・シュヴァルツマンとマグヌス・コルトを堂々と退けて。ミカル・クヴィアトコウスキーは区間4位に食い込み、チームメートのピーター・ケノーから、大切な赤いジャージを引き継いだ。2014年世界チャンピオンにとって、初めてのグランツールリーダージャージだった。

前夜にチーム単位のお披露目を終えた198選手が、一斉にスタートから走り出した。2016年ブエルタ初めてのラインステージは、当然のように、大会初めてのエスケープを生み出した。4km地点であっさりチェザーレ・ベネデッティとローラン・ピションが前方へと逃げ出し、ブライアン・ノローもすぐさま合流した。

3人の背後で、マイヨ・ロホ擁するスカイは、静かなるコントロールを続けた。「平坦」とは名ばかりの微妙に波打った大地で、逃げ集団は、最大4分ほどのリードを許された。おかげで、たっぷりと余裕をもって、ステージ上に待ち受けるたったひとつの3級峠の先頭争いを繰り広げることができた。あまりに余裕がありすぎたせいか、ノローは1kmも手前からアタックを仕掛けてしまうのだけれど。

結局、最後にちょっとさして、ピションが老獪に先頭をかすめ取った。もちろん、先頭通過には、自動的に大会初の山岳賞ジャージがついてきた。しかも、スペインのフィニステラ(地の果て)と呼ばれるガリシアで、フランスのフィニステール地方からやって来た男が手に入れたのは、可愛い青玉ジャージだけではない。ゴール前19km、中間スプリントポイントでもきっちり2位に食い込むと、複合賞ジャージさえも身にまとってしまったのだ!

ちなみに、3大ツールではブエルタにしか存在しないこの奇妙なマイヨ・コンビナダは、1)山岳賞、ポイント賞、総合のすべてにランクインしている選手の中から、2)順位合計が最も少ない選手に与えられる。だから、もちろん、大会2日目に同条件を満たせるのは、逃げに乗った選手しかありえない。ただステージ終盤に、フィリップ・ジルベールがエスケープの邪魔をしにやってきたせいで..、ベネディッティは中間スプリントの上位3位からはじき出され、複合賞ランキングに食い込む権利を失ってしまう。

ブエルタ後の世界選手権には99.9%行かないだろう、なぜなら地形が平坦すぎるから..と公言する2012年世界チャンピオンは、特にポイントが欲しかったわけではない。フィニッシュ手前40kmの急坂を利用して飛び出し、3人に力ずくで追いついたジルベールの狙いは、むしろ中間1位通過=3秒のボーナスタイムだった。もちろん最終的な目的は、おそらく、翌日第3ステージの激坂フィニッシュ後にマイヨ・ロホを取ること。翌日のリーダージャージ獲得作戦を成功させるためには、スカイ&モビスターの「タイム差ゼロ集団」からの遅れを、どうしても7秒→4秒差に縮めておきたかったのだ。

そんな念願を果たした直後に、ゴール前16km、ジルベールは特に抗うことなく、朝からのエスケープ3人と一緒にメイン集団に吸収されていった。その後に入れ替わるように、ヒルクライマーのティアゴ・マシャドがアタックに転じたこともあった。ブエルタ屈指の難峠アングリルの、現時点では史上最後の覇者(2013年)であるケニー・エリッソンドさえ、こんな平坦ステージの終わりに飛び出しを試みた。しかし、もはやプロトンは、これ以上の逃げを許さなかった。この日、大部分の「ピュア」スプリンターたちはハンブルグを走っていたけれど、それでもスペインにスプリント巧者を連れてきたチームは、大集団スプリントに向けてこぞって先を急いだ。

きれいな列車は、最後まで出来上がらぬままだった。少々カオスなフィニッシュで、主導権を握ったのは、やはりプロトン屈指のスプリントチームだった。年間を通してマルセル・キッテルやフェルナンド・ガビリア、さらにはトム・ボーネンをせっせと運ぶ列車が、この日はメールスマンのために運行された。

どちらかというとスプリンターよりも「パンチャー」に近いこのベルギー人は、このところかなりの絶好調だった。7月末のツール・ド・ワロニーでは区間トップ3に2度食い込み、リーダージャージを2日間着用した。8月上旬のブエルタ・ア・ブルゴスでは、全5ステージ中序盤4ステージを3→3→3→6位と安定して区間上位に食い込み、4日目にはやはりリーダージャージも着ていた。だから石畳クラシック得意の2人、ゼネック・スティバールとイヴ・ランパルトが、見事に発射台役を務めた。

メールスマンにとっては嬉しいグランツール初優勝であり、しかも今季1勝目だった。エティックス・クイックステップにとっては年間通算43勝目で、今シーズンにおけるグランツール区間6勝目だった。

クフィアトコフスキーも、ほんの昨季までは、ベルギー常勝軍団の一員だった。ただ、本人は、世界選手権(2014年)もワンデークラシック(2015年アムステル・ゴールドレース)も制したというのに、グランツールの区間勝利には縁がなかった。今季からスカイへと籍を移し、クリス・フルームの2016年マイヨ・ジョーヌ獲りに蔭ながら貢献した名ダウンヒラーは--ツール第8ステージで、フルームが下りアタックで見せた大胆なポジションは、クフィアトコフスキーから伝授された--、代わりにグランツールのリーダージャージを初めて手に入れた!

ちなみに、この日マイヨ・ロホで走ったケノーは、首位と0秒差の区間33位で終えている。そもそも第1ステージ終了時点で0秒差で並んだスカイ5人とモヴィスター5人の計10選手は、全員が第2ステージ終了時でも0秒差で並んでいるのだ。つまり「総合タイムが並んだ場合は、区間順位の総計の小さい者が総合上位に立つ」という大会ルールに従って、3位+4位=7のクフィアトコフスキーに、名誉ある総合首位の座が与えられた。ちなみに9位+12位=21のホセホアキン・ロハスが総合2位、6位+23位=29のアレハンドロ・バルベルデが総合3位につけている。5位+29位=34のフルームは総合4位。

昨季に続く2度目のブエルタ挑戦となる新城幸也が、ゴールスプリントで15位に絡む健闘を見せた。初めてのスペイン一周を戦う別府史之は、チームのスプリンター、ニッコーロ・ボニファツィオのために最終盤ギリギリまで牽引役を務め、7位に送り込んでいる。

<選手コメント>

■ジャンニ・メールスマン(エティックス・クイックステップ)
「ここ数週間、日に日に調子が上がってきているのを感じていて、万全のコンディションでブエルタのスタートラインに立てるだろう、とわかっていた。このステージは自分にとって一番の目標だったから、そこで勝てた、それもチームが素晴らしい働きをしてくれたおかげで、というのは、本当に途方もないくらいのうれしさだよ。
トップスプリンターの不在は、レースのコントロールがより難しくなることを意味している。みんな、誰もに勝利の可能性があることを知っているから。そしてそれは、大きなストレスとナーバスなフィナーレにつながってしまうんだ。幸運なことに、ラスト2kmで仲間たちがこの上ない働きをしてくれた。まずスティービー(ゼネック・スティバール)が牽きに牽き、それからイヴ(・ランパルト)が風よけになってくれた。それで、ゴール前200mで飛び出すことができたんだ。チームメートたちに『ありがとう』と、それからこの勝利は、ぼくの妻と娘に捧げたいと思う」(出典:チームによるリリース)


■ミカル・クヴィアトコウスキー(チームスカイ)
「赤いジャージを手に入れることができて、素晴らしい気持ち。これまでレースをしてきた中で、もっともすてきな幕開けの一つだと思う。グランツールのチームTTをチームスカイの仲間と勝つことができたのだから。ピート(ピーター・ケノー)には、本当に感謝の気持ちでいっぱいだ。スプリントをして、ボーナスタイムを、ひいてはレッド・ジャージ(マイヨ・ロホ)を狙うチャンスを今日ぼくにくれた。そして、実現を可能にしてくれたチームにお礼が言いたい。 ゴール前2kmで、彼(ケノー)にスプリントを狙いたいか訊かれ、頷いた。それで、前方からリードアウトしてもらったんだ。クリス(・フルーム)が集団前方を安全に走行していて、クラッシュも回避し、タイムを失うリスクがないことが確かだったから。
(ホセ・ホアキン・)ロハスが、スプリントのボーナスタイムでマイヨ・ロホを手に入れられる一人だ、ということはわかっていた。フィナーレでは彼の動きを見ていて、自分もスプリントをかけようと決めた。昨日、あんなに素晴らしいTTでもぎとったマイヨ・ロホを、やすやす手渡したくはなかった。 明日はかなりきつい上りゴールだ。このブエルタ・ア・エスパーニャに、クリスとぼくたちはただ一つの目標を持ってやって来た。明日も彼をいいポジションに置いてタイムを稼げるように、そしてもちろんタイムを失わないように、願おう」(出典:チーム公式サイト)


■フィリップ・ジルベール(BMCレーシング)
「一日中かなりスローなペースで、我々にとってはとても不満だった。アタックをかける10kmほど手前からいろいろ考えて、何かトライしてみてもかまわないか、無線でチームに確認した。そうしたら、アタックして集団をできる限り引き離し、中間スプリントを狙ってみるように、とのことだった。総合ではまだ上位にいるし、ボーナスは3秒だし、何がどう転ぶかわからないからね。明日がものすごくハードなステージだとしても、もしかすると自分には厳しすぎるかもしれないとは思うけれど、それでも終盤に何かトライできたらいいなと思っている。どんな時でもそういう走り方をした方がいいしね。自分向きのステージはまだいくつかあるし、そこでもいろいろ試してみたい」(出典:チーム公式サイト)

コメント翻訳:寺尾真紀

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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