人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

サイクル ロードレース コラム 2017年7月4日

ツール・ド・フランス2017 第3ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
  • Line

写真:今大会初優勝したペーター・サガン

スタートからフィニッシュまで、まさしくアルデンヌクラシック風のコースで、「現時点では」どちらかと言えばフランドル派のペーター・サガンが勝利を上げた。最終坂で力試しを仕掛けた総合本命たちや、並み居る起伏スペシャリストたちを退けて、世界チャンピオンの実力を思う存分に誇示した。ペダルが外れるハプニングさえ、サガンにとっては、ちょっとした逸話に過ぎなかった。

アルデンヌクラシックの王、フィリップ・ジルベールの故郷から走り出し、リエージュ~バストーニュ~リエージュをキャリアを通して愛し続けたアンディ・シュレクの母国を駆け抜け、そしてツール・ド・フランスの本国フランスへと帰り着いた。嬉しいことに、すでに長い長い夏休みに突入したバカンス大国への帰還に合わせて、本格的な夏もやって来た。強い陽光と、青い空と、そして色とりどりのジャージたち!

開幕からの2日間、冷たい雨や落車に苦しんできた選手たちも、ようやく思いっきり弾けることができた。上下左右にうねりの効いた道で、本スタートの旗が振り降ろされると同時に、めくるめくアタック合戦の火ぶたが切って落とされた。

積極的に仕掛けたのは、やはりロット・ソウダルとワンティ・グループゴベールのベルギーチームだった。ディレクトエネルジー やチームフォルテュネオ・オスカロというフレンチ集団も、代わる代わる加速を切った。前夜に大会初のマイヨ・ア・ポワを手に入れたキャノンデール・ドラパック プロフェッショナル サイクリングチームも、コース上に5つの山岳ポイントが散らばるこの日も、改めてジャージへの意欲を示した。トーマス・デヘント、トマ・ヴォクレール 、シルヴァン・シャヴァネルといった現役指折りの大逃げ巧者も、幾度も前線に現れ出ては、逃げ切りを許すつもりのないプロトンから引きずり降ろされた。最終的にはスタートから13kmで、上記5チーム+チーム カチューシャ・アルペシンの6人が、先行を認められた。

ニルス・ポリッツ、アダム・ハンセン、ロマン・アルディ、ネイサン・ブラウン、ロメン・シカール、フレデリック・バカールトの6選手が行ってしまってからは、マイヨ・ジョーヌ擁するチーム スカイが隊列を組んだ。さらにはボーラ・ハンスグローエ、クイックステップフロアーズ、チームサンウェブも1人ずつ最前列に送り込んだ。前方集団には常に1分半から2分程度のタイム差しか与えず、後方からリモートコントロールに勤しんだ。

地形だけではなく、距離さえもクラシック並みに長いステージの終盤に、トーマス・デヘント、リリアン・カルメジャーヌ、ピエールリュック・ペリション がブリッジを試みた。それぞれにチームメートが待つ前方集団に合流した途端に、カウンターを食らわせた。うんざりするほど繰り返されるアップダウンにも負けず、カルメジャーヌが最後まで抵抗を続けもした。1年前の晩夏にブエルタで初出場初区間勝利を果たし、この夏は母国のグランツールデビューに心躍らせた24歳は、しかし目的地まで10㎞を残して、集団の勢いに飲み込まれていった。

ディフェンディングチャンピオンのクリス・フルームが語ったように、「ラスト30㎞は、ひどく猛烈なバトルが繰り広げられた」(フィニッシュ後TVインタビューより)。ナーバスなスピードの塊となった集団は、ただひたすら、全長1.6㎞の最終坂の入り口にいかに好位置で侵入できるか……というバトルに専念した。コース序盤でスパ・フランコルシャンのモーターサーキットを駆け抜けた集団の中で、最後のポールポジションを取ったのは、ビーエムシー レーシングチームだった。

「登坂口でのクリスは、大体20番目くらいの位置につけていた。そこから、彼を前に上げるために、僕らチーム全体で大いに力を尽くした。それにしてもポートのアタックはすごかったね。絶好調であることを見せつけたし、素晴らしくアグレッシブだった」(ゲラント・トーマス、公式記者会見より)


写真:エスケープグループ

BMCのニコラス・ロッシュが全力で牽引し続け、そしてラスト800m、リッチー・ポートが――トーマスの言い方を借りると――飛び立った。初日に得意の個人タイムトライアルを慎重に走り過ぎて、「ほんの少しがっかりしている」と語ったオージーは、3日目は積極策を取った。ダンシングスタイルでペダルを力強く踏みつけ、先頭でぐいぐいと坂道を駆け上がった。

ただし上り始めこそ急勾配が続くものの、11%ゾーンを越えると、あとはだらだらとなだらかに上るだけ。つまりはマイヨ・ジョーヌ2回、マイヨ・ア・ポワ2回、マイヨ・ヴェール5連覇中の3人が数珠つなぎになるような、そんな多面性のある坂道だったということだ。そう、ポートの後輪には、アルベルト・コンタドールがすかさずしがみついた。その後輪には、ラファル・マイカの姿があった。そのまた後輪には、マイカの良きチームメートであるサガンがぴったりと張り付いて……。

「かなり楽々だった。ポートがアタックした時、他のヒルクライマーが追いかけるはずだと考えた。だから僕は、ただついていくことだけに専念した。それからポートを追い越したんだけど、まだフィニッシュまで400m残っていた。だから、すぐさま全力疾走に取り掛かる前に、ちょっと座り直したんだよ」(ペーター・サガン、公式記者会見より)

五輪金メダリストのフレフ・ヴァンアーヴェルマート、元U-23世界王者マイケル・マシューズ、起伏モニュメント2冠のダニエル・マーティン等々が後方からフルスピードで追いついてきたのを合図に、ラスト230m、サガンもようやくスプリントに取り掛かった。ただ、あまりにも楽々だったのもだから、右足がペダルから外れる→瞬時にはめ直す→再加速……という行程の間でさえ、トップの座を一度も譲ることはなかった。サガン本人の心の中は、どうやら、大いに混乱したようだけれど。

「ペダルが外れて、すぐに思ったんだ。今日は何が起こっちゃったんだ?勝利を逃してしまうのか?って」(ペーター・サガン、公式記者会見より)

だからこそハンドルを投げた。それから右手を上げて、人差し指をくるくると回した。モトクロス用のゴーグルがきらりと晴れた空に反射した。世界チャンピオンが、この日は全てを凌駕した。

「世界チャンピオンジャージを着て走れることを、すごく誇らしく思っている。レースへのモチベーションを大いに掻き立ててくれる。ただ(エリック)ツァベルの持つマイヨ・ヴェール最多記録に並べるかどうかに関しては、正直に言って特に何も……。僕が6枚目のマイヨ・ヴェールを取ったところで、地球上で何かが変わる?もちろん、答えはノーだ。人生において、もっと大切なことはたくさんある」(ペーター・サガン、公式記者会見より)

とりあえず第3ステージ終了後現在、サガンはポイント賞ランキング3位につけている。マイヨ・ヴェールは前夜の勝者、マルセル・キッテルの肩に羽織られた。マイヨ・ア・ポワはテイラー・フィニーのチームメート、ネイサン・ブラウンに首尾よく引き継がれた。また区間2位にはマイケル・マシューズが滑り込み、3位にはダニエル・マーティンがつけた。登坂口では「20番手くらい」だったフルームは、マイヨ・ジョーヌのトーマスに続いて、2秒遅れの9番目にフィニッシュラインを越えた。その他の総合勢も揃って同タイムで区間を終了。一方で今ジロ総合4位のティボ・ピノのように、「わざと」タイムを失った実力者も存在する。



写真:スパ・サーキットに入るプロトン

☐ ツール・ド・フランス 2017
ツール・ド・フランス2017 いよいよ7月1日開幕!
全21ステージ独占生中継!

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
サイクル ロードレースを応援しよう!

サイクル ロードレースの放送・配信ページへ