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写真:この日も手堅くマイヨ・ジョーヌを守ったフルーム
道はほぼ平坦で、風もなく、心配されていた雨も降らなかった。休息日明けのステージはつつがなく執り行われた。マルセル・キッテルが楽々と大会4勝目を手に入れ、マイヨ・ヴェール獲りにまた一歩大きく前進した。クリス・フルームは自身50回目のマイヨ・ジョーヌ表彰式に臨み、「モワンコンプリケ(仏語で、あまり複雑ではない、との意」と、平和だった1日を笑顔で振り返った。
休息日を挟んで、風景や雰囲気が、がらりと変わった。フランスの東の端から西へと一気に移動し、植生や建築物の様式が変わっただけでではない。
「開幕からの1週目はプロトン内がピリピリしていたし、ストレスいっぱいだったけれど、2週目に入って全体が落ち着いたね」(フルーム、ミックスゾーンインタビューより)
デュッセルドルフを198人で走り出した集団は、一回り小さくなった。アレハンドロ・バルベルデ(第1ステージ)、ペーター・サガン、マーク・カヴェンディッシュ(ともに第4ステージ)、ゲラント・トーマス、リッチー・ポート、アルノー・デマール(いずれも第9ステージ)とビッグネームが1週目に次々と消えていった。第9ステージ中に落車し、それでも最後まで走り切ったラファル・マイカも、この日はスタートを切らなかった。レースに生き残った180人の間でも、休息日の翌朝、あちこちに包帯やテーピングが目についた。
だからこそ、プロトンは、自主的に休息日の延長を選んだ。本スタート直後にヨアン・オフレドが全速力で飛び出し、さらにエリー・ジェスベールが合流すると、集団はぴたりとふたを閉めた。2人には最大5分半ほどのリードを与え、後方は静かにペダルを回した。飛行機移動からの休息日で、少々崩れたリズムを取り戻すには、最高の状況だった。気候も最適だった。湿度こそ少々高かったものの、暑すぎず、寒すぎず。
「湿度がこれくらい高い方が、僕にとってはありがたいですね。気温が高いうえに乾燥していると、呼吸が上手くできなくなるんです。アジア風に蒸し蒸ししているほうが、ちょうどいいです」(新城幸也、フィニッシュ地インタビューより)
写真:序盤から逃げ続ける2名の選手
おかげで後方の選手たちは、心静かに午後を過ごした。観客にとっては退屈だった。そもそも2017年ツールのド平坦ステージは、第2、第4、第6、第7、そして第10ステージと、全てがほぼゼロkmのアタック一発で逃げ集団が出来上がっている。
「大いに不満だね。逃げ切れなかったからじゃない。そんなことは予測済みだったから、問題じゃない。むしろ僕をイラつかせたのは、追いかけてくるチームや選手がまるでいなかったこと。活気のないレースだった。沿道やテレビの前でツールを楽しみに待っているファンたちに、申し訳ない」(オフレド、TVインタビューより)
集団が唯一活気づいたのは、中間スプリントだった。いまだツールに残るスプリンターがほぼ全員で全力疾走を繰り広げ、アンドレ・グライペル(3位通過15pt)、マルセル・キッテル、アレクサンドル・クリストフ、ひとりあけてマイケル・マシューズ、ソンニ・コロブレッリの順で緑ジャージ用ポイントを収集した。ちなみに第1週目はチームメートのために、中間スプリントでもフィニッシュでも大いに働いた新城幸也だったが、2週目はチームの作戦が変わったとのこと。
「(中間では)今日は僕たち何もやっていないです。ソンニは1人で行ったんですよ。今日からそういうやり方に変わったんです。僕らは先頭で牽引するのではなく、誰かの後輪にソンニを連れて行ってあげるだけ。あとは勝手に1人でやってくれ、という方法ですね」(新城幸也、フィニッシュ地インタビューより)
ステージの大部分は、クイックステップとロット・ソウダル、カチューシャがタイム差制御に従事した。残り7kmで、逃げの2人を吸収したら、あとは予定通りに大集団スプリントへと持ち込まれた。落車も分断も、違反行為も、さらには写真判定さえなかった。ど真ん中から堂々とスプリントを切ったキッテルが、余裕の差をつけて、今大会4つめの勝利を仕留めた。
「こんなファンタスティックな快挙を成し遂げられたなんて、本当に信じられないよ。なにしろ1回のツールで、4勝を手に入れたんだからね。自転車に乗り始めてからは、ずっとプロ選手になることを夢見てきたけれど……こんなすごいこと、夢にさえ見たことはなかったよ!」(キッテル、公式記者会見より)
キャリア通算でツール区間13勝目を手に入れ、マイヨ・ヴェール着用日数はこれにて通算9日目を数える。ポイント賞2位のマイケル・マシューズはに大量102pt差をつけ、2017年大会で残された集団スプリント機会は、最低で2回、最高で4回だけ。生まれて初めてのグランツールポイント賞が、途端に現実的になってきた。
写真:今大会4勝目をあげたキッテル
「確かに今の僕は『マルセル史上最強』だと断言できる。これ以上ないほどの調子の良さを感じている。ただ、マイヨ・ヴェールに関しては、まだまだとてつもなく先の話だよ。アルノー・デマールの例でも分かるように、突然の体調不良で、全てが崩れ落ちてしまう可能性もある。それに手強いライバルも揃ってる。特にマシューズとクリストフを警戒しなければならないよ」(キッテル、公式記者会見より)
総合狙いの選手やヒルクライマーたちは、2日後のピレネー入りを控えて、平和に1日を終えた。ワレン・バルギルは生まれて初めてマイヨ・ア・ポワを着て走り、人気者ジャージの威力をひしひしと感じたらしい。
「外国チームで走っているせいか、集団走行中は応援してもらえることが少ないんだけど……。今日は目立つジャージのおかげで、たくさん声をかけてもらえたよ!心からステージを満喫できた」(バルギル、ミックスゾーンインタビューより)
一方のフルームは、自身49枚目のマイヨ・ジョーヌを身にまとって、4時間1分のイージーライドを終えた。
「いやいや、ツールでは、決して簡単なステージなんて存在しないんだ。ただ、間違いなく、静かな1日だった。面倒なことは起こらなかったし、リラックスして走ることが出来た」(フルーム、ミックスゾーンインタビューより)
フィニッシュ後の表彰式では、記念すべき50枚目のジャージを授与された。2013年14日間着用、2015年16日、2016年14日、2017年6日と、いずれの年も大会前半から長期独裁政権を敷いてきたおかげで、ジャージ着用日数ランキングでは、早くも、ツール総合5勝ジャック・アンクティルと並ぶ史上4位タイにつける。
つまり第11ステージ以降は、単独の史上4位として、記録を更新していくことになる。もしもこのままパリまでマイヨ・ジョーヌを守り続ければ、通算61日となり、史上3位のミゲル・インドゥライン60日を超える。残すは2位ベルナール・イノー75日、1位エディ・メルクス96日という、史上に燦然と輝く2人の大チャンピオンの記録だけである。
☐ ツール・ド・フランス 2017
ツール・ド・フランス2017 7月1日(
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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