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【アークティックレース・ オブ・ノルウェー プレビュー】第5回大会はパンチャー大祭。北極圏のフィヨルド巡りは、ボーナスタイム収集が総合勝利の鍵となる
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかフィヨルドのうねった海岸線をなぞり、短い夏に一斉に萌え出る緑を愛でながら、8月10日(木)から13日(日)までの4日間、アークティックレース・オブ・ノルウェーが北極圏を走り抜ける。いつまでも薄明るく白い空の下で、色とりどりの自転車ジャージが熱戦を繰り広げる。
2013年に創設され、今年で5回目を迎えるヨーロッパツアー超級のステージレースは、「地上で最も北の自転車レース」と銘打たれている。なにしろ「北への道」という国名を持つノルウェーの、その中でも「北の北」と呼ばれる地方だけで行われる。しかもアークティックとは文字通り、北極圏のこと。つまりプロトンは4日間丸々、防寒具に身を包んだたくさんのファンに見守られながら、北緯66度33分線の北極線より北だけを走る。
氷河が作り上げた複雑な地形を持つこの地域で、初代チャンピオンに君臨したのは地元の英雄トール・フースホフトだった。3年前に現役を退き、現在は大会アンバサダーを務める「上れるスプリンター」は、4日間で4度行われた集団スプリントのうち2つを制して総合優勝を手に入れた。大会2年目にはアレクサンドル・クリストフとラーシュペッテル・ヌールハウという、2人のノルウェー選手が、それぞれ総合2位と3位に入った。2015年にはクリストフがポイント賞を、地元コープチーム所属のオーグスト・イェンセンが山岳賞を獲得した。しかし昨年は、残念ながら、地元ノルウェーに栄光は訪れなかった。
だから、今年こそは、と地元ファンの期待は否応なしに高まる。なにしろ、やはり「上れるスプリンター」のクリストフが、大会直前に欧州チャンピオンの座に輝いたから!
しかし、気になる2017年大会は、開催委員会の謳い文句によるとズバリ「パンチャーのお祭り」。第1ステージから早くも、大きめの起伏が用意されている。ステージ中盤には距離が長めの山が2つ。さらにはフィニッシュ手前5kmに登坂距離2.3km、平均勾配6.6%のきつい坂道が待ち構える。果たして上れるスプリンターが、どこまでピュアパンチャーの加速にしがみついていけるか。フィニッシュまでのラスト1kmは、わずかながら上り調子だ。
2日目ならば、スプリンターとしての俊足をたっぷりひけらかすことができるだろう。締めくくりはバルドゥフォス空軍基地内の滑走路に引かれた、全長8.5kmの平坦なサーキットコースを3周回。対する3日目は山頂フィニッシュが待ち構える。185.5kmの、それほど起伏の難しくないコースの終わりに、突如としてフィンヴィクダレンの上りが現れる。登坂距離は5.2kmと、パンチャー向きと言い切るには少々長めだ。むしろ一発勝負が得意なヒルクライマー向きかもしれない。ただ平均勾配は緩めの4.9%だし、実は途中2.5kmに渡って平均6.6%→約1kmに渡って勾配0%→ラスト500mが再び7%という3段階の上りだから、すべては体力配分と仕掛けるタイミング次第。
最終日はノルウェー北部最大の都市トロムソから走り出し、再びトロムソへと返ってくる大きな周回コースが描かれた。さらに最後には、全長13.1kmの小さなサーキットコースを3周半。この日こそ、本物のパンチャーズフェスティバルが見られそうだ。序盤約100kmはほぼ平坦な道を進むけれど、ステージ後半は起伏が次々と襲いかかる。特に最終周回コースにはロストバッケン(1.1km、7.5%)とプレストヴァネット(1.2km、7.5%)の2つの短坂が組み込まれているから、ラスト45kmだけで7つもの坂を上って下りることになる(うち2級に指定されているのは5つ)。
ちなみに、この秋、ノルウェーで世界選手権が開催される。トロムソからは1000km以上も南の、北極圏「外」のベルゲンでの開催だから、特に比較すべきではないかもしれない。ただし同じ国が敷いた舗装道路の上を走り、同じようなフィヨルドコースを駆け巡って、最後は起伏付きの周回コースで締めくくられる。つまり第4ステージは、ちょっとしたテストイベント的な雰囲気も、感じ取れるに違いない。
このコース設定で、果たして、クリストフはどこまで総合に絡めるだろうか。この話をしつこく持ち出すのは、実はアークティックレース・オブ・ノルウェーのルール設定のせいでもある。各ステージにはそれぞれ3か所の中間ポイントが設置されており、緑ジャージを巡る争いが活気づくと同時に、ボーナスタイム(3秒、2秒、1秒)の収集合戦も熱くなる。すなわち中間だけで、最大36秒ものタイムを稼ぐことが出来るのだ。当然ながらフィニッシュでも上位3人には10秒、6秒、4秒のボーナスタイムが与えられるから、例えば第3ステージの山でタイム差を最小限に留めることができれば……。実際2014年大会は、2度の上りフィニッシュで計24秒を落としながらも、クリストフは2度の区間勝利+ボーナスタイム収集で総合首位に4秒差にまで迫っている。
ボーナスタイムやグリーンジャージも大切だけど、大多数の選手にとっては、実は山岳ポイントこそが大切だ。山岳賞首位に立てば、サーモンピンクのおしゃれなジャージがついてくるから。なにより、美味しいノルウェー産サーモンが副賞でもらえるから!一昨年は期間内にサーモンジャージを着用したすべての選手に500kgの鮭(+ノルウェー出身シェフの出張料理)が贈られた。
昨年は総合覇者のジャンニ・モスコンにもサーモンが贈られ、クリスマス前のトレーニングキャンプ中に、チーム スカイのみんなで一緒に食べたらしい。今年も「鮭はノルウェーにとって大切です」という合言葉と共に、受賞選手にはサーモンが贈呈される予定だ。
北極圏で行われるパンチャー大祭に、ワールドチームからはBMCレーシングチーム 、アスタナ プロチーム、ディメンションデータ、チーム カチューシャ・アルペシン、チーム サンウェブが参戦する。また昨ツールを賑わせたコフィディス、ソリュシオンクレディ、ディレクトエネルジー、フォルテュネオ、ワンティ、ジロ出場組のガズプロムとCCC、ブエルタ出場のアクア・ブルー・スポーツと強豪プロコンチネンタルチームも揃っている。さらには日伊合同チームのニッポ・ヴィーニ ファンティーニも、リーダーのダミアーノ・クネゴを筆頭に、日本のトレーニー西村大輝と共に乗り込んでいく!
この春にツアー・オブ・ノルウェーとツール・デ・フィヨルドで総合優勝を果たし、この夏のツール第19ステージでは見事な勝利をさらったエドヴァルド・ボアッソンハーゲンは、残念ながら今大会は出場を見送った。ただ2014年U23世界王者スヴェンエーリク・ビストラムや、昨世界選手権で見事な働き者っぷりを示したトルルスエンゲン・コルシェッツが、母国ノルウェーの期待を背負ってスタートラインに並ぶ。またシンドレショスタッド・ルンケも、現役プロ選手の中では唯一の北極圏生まれ(北緯68度33分のストクマークネス出身)として、地球の果ての美しき故郷を駆け巡る。
☐ アークティックレース・オブ・ノルウェー
8月10日(木)~13日(日)全4ステージ生中継&J SPORTSオンデマンドLIVE配信!
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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