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【ツール・ド・ヨークシャー プレビュー】マーク・カヴェンディッシュが母国で復帰戦!苦い記憶のヨークシャーで雪辱を果たせるか?
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかこの5月もまた、イングランド北部が、熱狂で埋め尽くされる。ツール・ド・フランス開幕の置土産として翌2015年に誕生したツール・ド・ヨークシャーは、創設4年目の今年、さらなる進化を果たす。牧歌的な美しき風景に、まるでクラシックのような表情豊かなコース。しかも英国の公休日アーリー・メイ・バンクホリデーにかかる長い週末のおかげで、220万ものファンが詰めかけるという桁外れの人気があいまって、2018年大会はこれまでより1日多い全4ステージで争われる。
日数を加えたおかげで、コースも多様性を増した。過去2大会は序盤2日が大集団スプリントに当てられ、つまり最終日の起伏ステージ一発勝負で、総合の行方が決してきたものだ。一方の今年は「あらゆるタイプの選手に輝くチャンスがある」と開催委員会が宣言する通り、スプリンターだけでなく、嬉しいことにパンチャーやクライマーにも複数の機会が与えられる。
開幕ステージはスプリンターのために用意された。2016年大会でダニー・ファンポッペルがさらいとったドンカスターへ向けて、今年もスプリント列車が突っ走る。それにしても、大会開催委員会を大喜びさせたのは、マーク・カヴェンディッシュが出場を決めたこと。3月末に肋骨を折った後、ツアー・オブ・カリフォルニアでの戦線復帰が予定されていた。幸いにも32歳の肉体は、予想以上に早い回復を見せた。ならば、と英国が産んだ現役屈指のスプリンターは、生まれて初めてヨークシャー一周を走ることにした。
マン島生まれながら、母親はヨークシャー生まれ。だからこそ2014年ツールのヨークシャーステージでも区間勝利を目指したが……、2日目のフィニッシュライン手前で痛恨の落車。なんとかフィニッシュラインは越えたが、翌日の出走は断念せざるを得なかった。すなわちカヴにとっては、復帰戦でもあり、雪辱戦でもある。「どの程度まで調子が回復しているか、確かではないけれど」と本人は前置きするが、祖国のファンの前で、間違いなく、できる限りの全力疾走を見せてくれるはずだ。
翌2日目はパンチャーたちの出番だ。コース上のいたるところに細かい起伏が敷き詰められ、締めくくりにはカウ・アンド・カーフ坂、日本語に訳せば「雌牛と仔牛」坂が待ち受ける。2015年大会で使用されたことがあるものの、勝負のフィニッシュ地に選ばれるのは今回が初めて。全長1.8km、平均勾配8.2%。坂道の中盤には15%ゾーンもあり。
果たして第3ステージのスカボローフィニッシュは、今回はどちらに転がるだろうか?実のところ、この古き海浜リゾート地は、4年連続でステージの終わりを見届けてきた。1年目は5人、2年目は2人、3年目は75人によるスプリント勝負だった。またコース上に待ち構えた登坂の数は1年目が5つ、2年目は6つ、3年目は3つ。気になる4年目=2018年大会は2つ。たしかに1つ目のサットン・バンク坂は全長1.4km・平均勾配12%と厳しいものの、2つ目はフィニッシュまで50kmも離れている。やはりスプリンターに有利か。
ちなみに2016年大会でスカボローを制し、総合優勝もさらいとったトマ・ヴォクレールが、今大会は「アンバサダー」として表彰式を取り仕切る。そのヴォクレールが最終的に総合リーダージャージを手渡す選手の名は、おそらく最終日のフィニッシュを迎えるまで分からない。
ちょっとしたアルデンヌクラシック風どころではない。日曜日の最終第5ステージには、全長189.5kmのコースに、6つの登坂が組み込まれている。そのいずれもが難しい。スタートから16km地点のヘブデン・ブリッジ坂は、平均勾配こそ4.6%と低いものの、登坂距離が7kmと極めて長い。そこから31km地点グース・アイ坂(全長1.5km、平均勾配10%、最大20%)、48.5kmバーデン・ムアー坂(1km、9.5%)と立て続けに急坂が襲いかかる。
すでに小さくなっているであろうメイン集団を、さらに小さく絞り込むのが77km地点のパーク・ラッシュ坂だ。登坂距離2.2km、平均勾配が10.5%、最大勾配はなんと25%!あの「ユイの壁」のデータが1.3km、9.8%、26%であることを考えると……なんたる恐ろしさだろうか。しかも序盤500mが平均約18%で、最終盤にも200mに渡り18%超ゾーンが牙を向くのだ。
その後も138km地点に全長3.3kmと距離が長めのグリーンハウ・ヒル坂(平均8.2%)、164.5km地点オトレー・チェヴィン坂(1.4km、10.3%)と、厳しいアップダウンが繰り返される。開催委員会は「フレフ・ヴァンアヴェルマートに向いている」と断言するが、そのためには石畳クラシックで無双した昨春のような脚ではなく、2016年夏のような脚ーーツール・ド・フランスの中央山塊で区間を制し、マイヨ・ジョーヌを難関山岳で守り、リオ五輪の超起伏コースで金メダルを獲得した時のような脚ーーが必要かもしれない。
4年目のツール・ド・ヨークシャーには全20チームが参戦する。ディフェンディングチャンピオンのセルジュ・パウェルス+カヴェンディッシュを擁するディメンションデータを筆頭に、UCIワールドチームからはBMC、スカイ、カチューシャ、アスタナ、サンウェブの6チームがやって来る。またASOツール・ド・フランス開催委員会の主催レースではおなじみのコフィディス、ディレクトエネルジー、ヴィタルコンセプトは、主力級メンバーで大会に乗り込む。英国代表チームも編成され、普段はUAEで走るベン・スウィフトがU23選手たちを率いる。
1年目は11秒差、2年目は6秒差、3年目も6秒差というとてつもない僅差で総合優勝が決したが、果たして今年はどんな結末が訪れるのだろうか。フィニッシュラインはリーズに引かれる。そう、2014年ツール・ド・フランスが走り出した町で、2018年ツール・ド・ヨークシャーは大団円を迎えるのだ。
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■ツール・ド・ヨークシャー
2018年5月3日(木)~6日(日) J SPORTSオンデマンドLIVE配信
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■注目選手情報
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■ギア情報
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宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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