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【リエージュ~バストーニュ~リエージュ プレビュー】ユイ5連覇失敗の雪辱に燃えるバルベルデ、エディ・メルクスの大記録に肩を並べるか?
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかアルデンヌの丘陵地帯の奥深く、沿道の緑が色濃くなりゆく頃、2018年春のワンデークラシックシリーズが締めくくられる。激しく美しき連戦のトリを務めるのは、ご存知リエージュ~バストーニュ~リエージュ。世界5大クラシック「モニュメント」のひとつとして極めて格式が高く、なにより1892年にこの世に生まれ落ちた史上最古のクラシック「ラ・ドワイエンヌ(最長老)」が、今年も威厳ある王者を選び出す。
数ある春クラシックの中で、ひときわ起伏の厳しいレースとしても有名だ。全長258.5kmのコースには全部で11の登坂が組み込まれる。そのひとつひとつの「登坂距離」は、他のアルデンヌ2戦と比べても圧倒的に長く、最長で6.8kmに達する(172km地点コート・ド・ベルヴォー)。しかも実質はスタートからフィニッシュまで、文字通り絶え間ないアップダウンの繰り返し。特にコース後半には難しい上り下りがぎゅうぎゅうに詰め込まれているし、累計標高は4000m近くに達する。すなわちグランツールの難関山岳ステージにも決して引けを取らない。
ところがUCI国際自転車競技連合会長のダヴィッド・ラパルティアンの発言が、ちょっとした波紋を呼んでいる。「リエージュはかつて『常になにかが起こる』クラシックだったが、近頃はひどくステレオタイプなレースになってしまった」とほんの数日前に語ったからだ。さらには「ラ・ルドゥットやラ・ロッシュ・オ・フォーコンという伝統坂での決定的動きが欲しい」、「遠くから大胆に仕掛ける選手が必要だ」とも。
たしかにシュレック兄弟やヴィノクロフが活躍していた時代は、ラ・ルドゥットやラ・ロッシュ・オ・フォーコンこそが、ビッグネームたちの勝負地となってきた。しかしここ数年は、小さなアタックや駆け引きはそこかしこで見られるものの、決定機のないままフィニッシュを迎えることも多い。2014年の100回大会などは、30人ほどの先頭集団ーーそれ以前なら考えられなかったほどの大集団であるーーでフラムルージュへとなだれ込み、開催委員長クリスティアン・プリュドムを失望させたものだった。ちなみに翌2015年以降、ラスト5つの起伏の順番は変わっていない。つまり198km地点コル・デュ・ロジエ、211kmコル・デュ・マキザール、222.4kmコート・ド・ラ・ルドゥット、239km地点コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコン、そして253kmコート・ド・サンニコラ..。
ただ注意すべきは、UCI会長の発言は、フレッシュ・ワロンヌの「前日」であること。果たしてこれが起爆剤となったのか、例年ならば素晴らしきマンネリに満ちた水曜日の大会が、今年は極めてスリリングな戦いに姿を変えた。アレハンドロ・バルベルデの5連覇を阻むべく、早い段階で多くのチームや有力選手が積極的な動きを見せた。なによりヴィンチェンツォ・ニーバリが、手に汗握る展開を創り出してくれた。この春「スプリンターズクラシック」ミラノ~サンレモで鮮やかな勝利をさらい、「石畳戦」ツール・デ・フランドルで衝撃的なアタックを打った張本人だ。たとえ結果は43位に終わったとしても、レースの本質を書き換えたことに変わりはない。
日曜日のリエージュでも、絶好調ニーバリが、きっとなにかを仕掛けてくれる。現役で唯一「3大ツール全制覇」を誇るグランツールライダーにして、2つのモニュメントタイトルを有するクラシックハンターは、プロ入り直後からラ・ドワイエンヌに並々ならぬ執念を燃やしてきた。忘れてはならないのは、2012年リエージュでも、大胆な独走を試みたこと。ラ・ロッシュ・オ・フォーコンでひとり飛び出し、ラスト約1kmまで逃げ続けた(最終的に2位)。つまり自身12回目の挑戦となる2018年大会だって、大胆で野心的な攻撃のチャンスを必ずや突いてくる。UCI会長が懸念するような、ステレオタイプのつまらないレースでなんか終わらせないはずだ。
フレッシュ・ワロンヌで巧みに動いたクイックステップからも、目を離してはならない。凍てつく2月末から、初夏の陽気に見舞われた4月半ばまで、今年のクラシック精鋭軍はとてつもない旋風を巻き起こし続けている。ツール・デ・フランドルを筆頭に、手にしたクラシック&セミクラシックタイトルは10個!いまやトレードマークとも言える固い団結力を武器に、この春最後のモニュメントでも戦術的な走りを披露するだろう。ついに「ユイの壁」のてっぺんで栄光をつかみ取ったジュリアン・アラフィリップと、2011年大会の覇者にして、ラ・ルドゥットの坂道にファンクラブが集結する地元っ子フィリップ・ジルベールという、優勝大本命2人を有する。
まさしく「遠くからアタックする」タイプのティム・ウェレンスと、本来の登坂力を取り戻しつつあることをフレッシュ3位で証明したイェーレ・ヴァネンデールを擁するロット・ソウダルも、この春の全てのクラシックで繰り返してきたように、積極的なレースを展開してくれるはずだ。フレシュではミハル・クフィアトコフスキーが飛び出し、セルジオ・エナオが最終盤の責任を負ったスカイは、2016年大会覇者ウァウト・プルスに大会初出場ゲラント・トーマスと強烈な布陣で臨む。このところ地上のあちこちで驚異的な数的有利を作り出すアスタナも、この春ワンデーでいまだ思い通りの結果を出せずにいるBMCも、最後の大一番に全てを賭けてくる。さらにはフレッシュで大いなる失望を味わったダニエル・マーティンの雪辱に燃える走りも、昨ジロ覇者トム・デュムランの強力な独走力も、2年連続ツール表彰台のロメン・バルデの熱っぽいアタックも..、期待できそうなポイントはまだまだ山ほどある。
そして、もちろん、アレハンドロ・バルベルデ。ユイ5連覇は逃しながらも、大本命として立派に責任を果たした37歳は、リエージュでは通算5度目の戴冠に挑む。2006年、2008年、2015年、2017年に続き、もしもアンスのフィニッシュラインで両手を天に突き上げることが出来れば、あのエディ・メルクスに並ぶ大会史上最多タイ記録を記録することになる。ちなみに「エル・インバティド(無敵男)」はいまだ体力も意欲も衰えを感じさせないが、残念ながら今回が、「勝って知ったる」アンスへとスプリントを切る最後の機会となる。2019年からリエージュ~バストーニュ~リエージュのフィニッシュ地は、1991年以来28年ぶりに、本来の終焉の地であるリエージュへと帰還する。
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■リエージュ~バストーニュ~リエージュ
4月22日(日)午後9:05~ 生中継&LIVE配信
詳しくはこちら »
■注目選手情報
注目選手情報はこちらから »
■ギア情報
ギア情報(機材紹介)はこちらから »
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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