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バスケット ボール コラム 2018年12月29日

【ウインターカップ2018 コラム】大観衆を魅了、「大当たりの富永」vs「福岡第一の鬼プレス」

バスケットボールレポート by 平野 貴也
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後半、厳しいマークに苦しめられた富永

後半、厳しいマークに苦しめられた富永

緑の嵐が、桜のエースを封じ込めた。ウインターカップ2018第71回全国高校バスケットボール選手権大会は28日に男子の準決勝を行い、第1試合は福岡第一(福岡)が103-72で桜丘(愛知)を下して2年ぶりの決勝進出を決めた。

試合の見どころは、桜丘のエースである富永啓生(3年)を、福岡第一がいかにして止めるかという点にあった。富永は、U-18日本代表のエースで、世代屈指のシューターだ。準々決勝までの4試合すべてで35点以上をマークし、得点能力の高さを見せつけていた。そして、福岡第一戦も前半は驚異的なパフォーマンスを見せた。第1ピリオドでいきなり3ポイントを4発。第2ピリオドにも3発。合計7本の3ポイントを含む31得点を稼ぎ出した。福岡第一は、古橋正義(3年)が徹底マークについたが、第2ピリオド序盤で2ファウル。代わって小川麻斗(2年)がマークにつき、チームとして他者がカバーに入るヘルプディフェンスも行ったが、いずれも止めきれなかった。

古橋は、県予選決勝でも福岡大大濠の得点源である横地聖真(2年)のマークを任されたエースキラー。ディフェンスが売りの福岡第一の中でも最も守備力に定評のある選手だ。古橋は、富永に入って来るパスや、打たれるシュートに対し、長い腕を伸ばしてコースに制限をかけ、さらに「富永選手は左利き。右へのドリブルを多くさせるというアドバイスを受けていた。スクリーンを使われて振り切られる場面も、こっちのセンターが出て(代わりにマークに付くようにけん制して)僕がマークに戻ったら、元に戻るようにと話をしていた」と話した通り、戦術的な守備を展開したが、それでも富永は止まらなかった。

第1ピリオドの終わりには、古橋のマークをドリブルでかわし、小川がヘルプに入ろうとした瞬間にタフショットの3ポイントをたたき込んで見せた。富永がシュートを打たずにパスをするだけで福岡第一の応援団は盛り上がり、富永が厳しいマークをわずかにかわして3ポイントを決め、胸をたたいたり、踊ってみせたりする度に、会場はどよめきの音を強め、悲鳴も混じった。かなり遠い距離からも見事にシュートを沈めた富永が主役の前半となった。古橋も富永に対しては、脱帽。「富永選手のマークで頭がいっぱい。ほかのことは、あまり考えられなかった。やっぱり、上手い。ディフェンスを頑張っているときに、難しいシュートを決められると『うわっ、やばいな』と思うし、やられたらダメなんだけど、ちょっと笑ってしまう」と苦笑いだった。チームとしても、富永のマークに人が集まり過ぎると、富永がジャンプシュートのモーションからパスを繰り出し、ガードの藤田龍之介(3年)が3ポイントを決めてくるという状況で、歯止めが効かなかった。

福岡第一の主将を務める松崎裕樹(3年)は「富永に30~40点取られるのは、想定内。ほかを抑えようというプランだった。でも、前半だけで31点は想定外でちょっと焦った。ハーフタイムに『31点も取られているぞ、意地見せろ。気持ちよく投げられ過ぎだ』と喝を入れた」と脅威を感じていたことを明かした。

しかし、前半のスコアは桜丘の48に対し、福岡第一が46。今大会で初めて、福岡第一がリードを許す展開ではあったが、点差はつかなかった。富永のマークでは活躍し切れなかった古橋が攻撃では意地を見せて3本の3ポイントを決め返すなど、連続得点を許さなかったためだ。桜丘は、富永のシュート力という武器を相手ののど元に付きつけたが、致命傷を与えることはできなかったのだ。第2ピリオドの終わり際、富永に3ポイントを決められて43-48となったが、福岡第一はファウルトラブルに陥った古橋の代わりに投入された神田壮一郎(2年)がブザービーターで入れ替えした3ポイントは、松崎が「あれが一番大きかった」と称えた一撃だった。

そして後半、福岡第一が伝家の宝刀を抜いた。井手口孝監督が「うちの練習は、嫌だと思いますよ。走ってばかりだから」と話す日々のトレーニングに鍛えた走力を生かした、オールコートプレスだ。疲労の影響が出始める後半、一気に相手ボールへ襲い掛かった。松崎が「富永にボールを持たせたら、点を取られてしまう。そういう意味では、前の河村と小川が相手のガードをしっかり潰してくれて、自分たちもしっかりと富永を守ることができた」と話した通り、富永へのパスラインを潰した。苦しいパス回しの中からボールをもらい、大きい相手に勝負を仕掛けなければいけなくなった富永は、完全に封じ込められた。精度を保つのは不可能だ。

富永は「エースとしてチームを引っ張っていかないといけないという自覚があった。前半は引っ張れたと思ったが、後半に止められてしまったのは反省。相手のディフェンスがきつく、2人、3人と来てしまって、タフショットになってしまった。今後は、もっと周りを使うプレーをやりながらできればと思う」と悔しがった。第1、2ピリオドは2ケタのシュート数だったが(フリースローを除く)、第3、4ピリオドは1ケタ。福岡第一は、富永のシュート数そのものを押さえ込んだ。富永の後半の得点は、わずか6点。完全に消されてしまった。

福岡第一は、オールコートディフェンスで相手のパスを寸断し、エースの富永も完封。前半は見せられなかった得意の速攻に持ち込んで、次々に点を奪っていった。古橋が4ファウルとなるなど苦しい部分もないわけではなかったが、第4ピリオドは3分半以上を控え選手のみで戦うまでにリードを広げ、圧倒的な強さを見せつけた。前半は桜丘の富永が観衆を魅了し、後半は福岡第一が強力な守備で試合を圧倒する、見どころ十分な一戦だった。

平野貴也

平野 貴也

1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。

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