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見る者に興奮を与える選手たち、盛り上がる応援団――バスケットボールが好きな全国の高校生が一堂に会して、思いをぶつける。ウインターカップは、そういう大会だ。これまで使用していた東京体育館が2020年東京五輪に向けて改修中のため、2018年は武蔵野の森総合スポーツプラザに会場を移したが、熱気は変わらない。大会は折り返しを迎え、さらに注目度を増しているが、戦いの中で多くのチームが敗れ去った。勝ち上がるチームだけでなく、敗れたチームを見ていても、この大会がどれだけ多くの選手を育てているかを感じる。
大会3日目、男子の2回戦で東山(京都)は、福岡第一(福岡)に敗れた。54-83という相手の力を見せつけられる、苦しい試合だった。第3ピリオドが終わった時点で37-58。焦って攻める最終ピリオドでさらにリードを広げられ、勝利は遠のいたが、最後まで得点を狙った。しかし、試合の最後に相手のファウルを得た東山の吉田竜丸(3年)がフリースローを投げるとき、スコアボードが現実を告げていた。残り時間1秒。2本のフリースローを投げ終われば、時計は動き出し、東山の挑戦は終わる。1投目を終えた吉田は、涙をぬぐった。
「最後までコートに立たせてもらったので、諦めずにやらないと、今まで練習に付き合ってくれた仲間や後輩に示しがつかない。全力でやり切ろうと思った。最後のフリースローは、3年間を思い出した。辛いことがあって辞めようかと思ったこと、自分たちの代でウインターカップに出られて嬉しかったこと、自分たちは(2年前の)先輩にメインコートに連れて行ってもらったのに、自分たちが後輩を連れて行けない申し訳なさ……。いろいろな感情が込み上げた」
吉田は、インターハイにも国体にも出場したが、ウインターカップの雰囲気は特別だったという。負ければ引退の3年生が強い思いを持って臨むからだ。その覚悟が選手も観衆も動かし、言い訳を無用とする。
3年生の背中を見た者は、覚悟を改める。ポイントガードの米須玲音(1年)は、その一人になるだろう。U-18日本代表の河村勇輝(2年)のマークに苦しみ、留学生へのパスコースを封じられて司令塔としてチームを勝利に導けなかった悔しさがある。米須は「河村さんのスピード、パスセンス、コントロールの仕方がすごく目立って(対照的に)自分は何もできなかった。また一から練習したい。夢は、プロ。ウインターカップで活躍しなければ(経由する)大学からも声がかからない。そのために(長崎県出身だけど)県外に出た。時間がない。河村選手以上に上手くなりたい」と成長を誓った。最後に選手交代でコートから出たとき、大澤徹也監督からは「この試合は絶対に覚えておけよ」と言われたという。吉田の成長も、米須の再挑戦も、ウインターカップに導かれているのだ。
平野 貴也
1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。
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