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空気が変わった──。
『WWE Live Tokyo』の初日(6月28日)、トリプルHが入場ランプに姿を見せた瞬間、スモウパレス(両国国技館)は異様な興奮と極限の期待感に包まれた。ありふれた表現だが、会場の屋根が突き破れるのでは、と錯覚するほどだった。やはり千両役者はひと味もふた味も違う。
『WWE Live Tokyo』の初日(6月28日)、トリプルHが入場ランプに姿を見せた瞬間、スモウパレス(両国国技館)は異様な興奮と極限の期待感に包まれた。ありふれた表現だが、会場の屋根が突き破れるのでは、と錯覚するほどだった。やはり千両役者はひと味もふた味も違う。
8人タッグという試合形式の影響もあり、出番はそれほど多くない。ただ、入場シーンで観衆の視線を一身に集め、挑発的でエロいポーズでもなぜかオシャレに映る。AJスタイルズ、カール・アンダーソン、ルーク・ギャローズとのウルフパックも決まっていた。
登場するトリプルH
WWEのトップに立って20余年、今月27日に50歳を迎えるにもかかわらず、トリプルHの肉体はまだバンプアップしている。最高執行責任者という要職を踏まえると、タイトル戦線にからむ可能性はゼロに近い。前述したようにアラフィフなのだから、懐メロといえば懐メロだ。しかし、独特のたたずまいがあり、レスラーらしい凄みを醸し出す稀有な存在でもある。もっともっとトリプルHのパフォーマンスを楽しみたい……。心からそう思った。
中邑真輔
さて、この日のベストバウトはセス・ロリンズ対中邑真輔だ。前回のWWEコラムで予想したように、返し技の応酬。空中戦、打撃系、グラウンドレスリングが絶妙の間合いで散りばめられたハイレベル。中邑が滾り、ロリンズは王者らしく振る舞うと、観衆は酔いしれた。ゴング直後は「ナッカームーラッ!」とアメリカナイズされたコールも、試合が進むに連れて「ナッカムラッ! ナッカムラッ!」と、日本ならではのリズムに変わった。リングに惹きこまれた証である。
無理もない。両選手ともに技のレパートリーが豊富なため、試合運びにも説得力がある。流れが途切れず、攻守の組み立ても素晴らしかった。新日本プロレスで育った中邑がからんだ一戦とはいえ、日本の市場を強く意識した試合展開だったことは間違いない。
フィニッシュもロリンズが得意技をたたみかけ、最後は必殺のカーフストンプで3カウント。白熱の攻防はきれいな形で決着がついた。アメリカの興行と異なり、ヒールサイドが大挙して乱入する気配もない。これまた日本を意識したエンディングである。
WWEでは数か月間、いや一年以上に及ぶ愛憎渦巻くドラマも展開される。その一方で今回のロリンズ対中邑、2016年『ヘル・イン・ア・セル』のサーシャ・バンクス対シャーロット・フレアーのように、お互いの技量を見せつける闘いもある。アスリートならではの魅力、俳優顔負けの演技力、女性らしい可愛さ、色香……。まさに《スポーツエンターテイメント》。他の格闘技とは一線を画す独特のジャンルだ。
text by 粕谷 秀樹
text by 粕谷 秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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