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3バックで安全にGKからDFへボールを渡す。右CBのアンドゥハルからルベン・カストロや岡崎へロングパスを送り込む。これまでの「DFからボランチを経由して前線へ出す」というのから「DFから直接前線へ」というシナリオを変更したわけだ。右同士のアンドゥハルと岡崎は、攻撃開始のホットライン化していた。
旧シナリオで「組み立て要員」だったボランチは新シナリオでは「プレス要員」となり、多くのボールを回復した。旧シナリオで「[4−2−3−1]の左サイドでボランチや左SBとコンビする役割」だった岡崎は、新シナリオでは「3トップの右サイドでサイドへ流れてロングボールを収めたり、下がってパスをライン間で受ける役割」へ変わった。得意の機動力とスペースを見つける能力が生かせるようになったわけだ。
3トップの役割は三人三様だった。
並びは、中央にルベン・カストロ、左にダウダ、右に岡崎だったが、スピードがあるダウダは裏抜けを狙い続け、岡崎のようには下がりもサイドへ流れもせず、カストロは押し込まれた時でも最前線に残る一方で、ダウダと岡崎はサイドの守備をケアした。押し込まれた状況でも、カストロへのロングパス一発を起点としダウダと岡崎がサポートするカウンターという選択肢を残し続けた。
5得点の内訳は、カストロのPKでの2点、ダウダの見事なミドルと岡崎のヘディング、デル・マスの走り込んでのシュートで1点ずつ。この中で、スペインの実況が「スーバーゴール!」と叫んだのは岡崎のゴールだった。
左からのセンタリングに右サイドから走り込み、相手DFの前へ体を入れ替えてのダイビングヘッド。体が左へダイブしながらもボールは右ポスト際のネットを揺らす、というものだった。絶妙のタイミングで動き、ピンポイントで首を振った。読みの鋭さと技術の高さの結晶で、本人を乗ってきそうだ。
簡単にチャンスを作られる守備の粗さは残っているものの、攻撃タレントが最も生かせるシステムと戦い方は見つかった。次節は16日、敵地で21位アモレビエタ戦。勝ち点3を挙げれば上位への道が一気に開けてくるのだが、イビサのようなオープンなサッカーをしてこないので、まずは同様に機能するか否かに注目したい。下がって守られて走るスペースがなくなった時に3トップがどう打開するかが見ものだ。
文:木村浩嗣
木村浩嗣
編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。
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