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もし、旗が上がって、「でも実は、本当はオフサイドではなかった」となっても、それはただのミスジャッジでしかない。そこまで判定の正確を期すためにゲームの流れを犠牲にしなくてもいいのではないか。
逆にゴールが取り消された場面はどうだろうか?
浦和レッズ対FC東京の試合の前半5分に浦和の杉本健勇が抜け出して冷静に決めた場面があった。だが、ここでVARが介入して杉本がオフサイドだということが確認されてゴールは認められなかった。
誤審ではない。ほんの少しだったが、杉本は確かにオフサイドだったから、ここでVARが介入してゴールが取り消されたのは、まさにVARの目的に適っているものだ。
しかし、杉本が出ていたのはほんの半歩ほどのことだった。肉眼では見ることができないほどのわずかなオフサイド。あのゴールが認められたとしても、「明らかな誤審」とは言えないのではないか。
川崎のゲームの終盤、横浜FMが2点を追って攻勢を懸けていた時に川崎の反則があり、「レッドカードが必要かどうか」のチェックのためにレフェリーが試合を止めた場面もあった。横浜FM側は、クイックスタートで攻撃を続けたかったのにゲームを止められて、ボールのそばにいた畠中慎之輔はかかなり文句を言っていた。
今、このコラムの中で触れた場面は、いずれも現行のルールで考えればVARが介入したことはまったく誤りではなかった。しかし、ゲームが途切れるのは実にストレスフルだ。日曜日には、VARのないJ2リーグ(相模原対京都)を見に行ったが、余計な中断がなくて気持ちよく観戦できた。
僕はゲームが途切れるのを防ぐためにはVARの介入を極力回避すべきだという感想を抱いたのだ。運用の基準を考え直す必要がある。あるいは、「前後半各チーム2回だけチャレンジ権を与える」といったようにすれば、無駄な介入は防げるのではないだろうか。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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