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サッカー フットサル コラム 2020年8月7日

【トップ6総括:シティ】自慢の攻撃力は健在だった

粕谷秀樹のOWN GOAL,FINE GOAL by 粕谷 秀樹
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ケヴィン・デブライネ

ケヴィン・デブライネ

ファイナンシャル・フェアプレー関連で揺れに揺れたり、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためのロックダウン中にカイル・ウォーカーの下半身が二度も暴走したり、2019-20シーズンのマンチェスター・シティはビッチ外のトラブルもいくつかあった。

ピッチ内ではエメリク・ラポルトの5か月にも及ぶ負傷欠場のダメージが大きく、後方からのビルドアップがままならなかった。本来はアンカーのフェルナンジーニョこそ慣れないポジションで善戦健闘したものの、ジョン・ストーンズは度重なる故障でビルドアップの感覚を忘れていた。ニコラス・オタメンディは状況判断が悲しくなるほどまずく、フィードも正確性を欠き、ジョゼップ・グアルディオラ監督の信頼をすっかり損ねてしまった。

また、左サイドバックはオレクサンドル・ジンチェンコが対人プレーに脆さを露呈し、バンジャマン・メンディは「連戦が続くとすぐに筋肉系のトラブルを訴える」(グアルディオラ監督)

その結果がグアルディオラ体制下では最多となる9敗につながり、優勝したリヴァプールに18ポイントもの大差をつけられる主因といって差し支えない。

さらに、メンタルも限界に近づいていた。

「勝利に対する貪欲な姿勢でリヴァプールを下まわっていた。17-18、18-19シーズンのような闘争心を維持できなかった」

グアルディオラ監督が唇をかんだように、3連覇に向かうための心の準備も不足していた。

それでも2位である。102得点はリーグ最多。得失点差プラス67は、リヴァプールを15ポイントも上まわっている。自慢の攻撃力は健在だ。

したがって、もしラポルトがケガをしなければリヴァプールとの差は縮まり、最終ラインからのビルドアップが可能になって勝点を稼ぎ、3連覇に向けた心の準備ができていたのではないか、と考えたくもなる。

さて、ケヴィン・デブライネだ。右足から繰り出されるフィードは、まさしく “針の穴に糸を通す” ほど精密だった。しかも相手DF陣のポジションを一瞬のうちに察知し、長短と緩急を絶妙に使い分ける。20を数えたアシストは、ティエリ・アンリ(元アーセナル/現モントリオール・インパクト監督)が02-03シーズンに樹立した、リーグ最多記録に並んだ。広大なエリアをカバーする走力も含め、もっともっと高く評価されてしかるべき稀代のMFである。

要するに、シティは相変わらず強いということだ。トップと中盤インサイドが相手センターバックのビルドアップを牽制したり、あるいはウイングとトップが相手サイドバックのパスコースを封じたり、基本コンセプトのハイライン・ハイプレスはチームに浸透している。

こうしたアプローチをかいくぐられた場合は失点を重ねたが、「自陣深くで守る」はグアルディオラ監督の辞書になく、籠城するシティなど見たくない。

3連覇の夢は潰えた。しかし、絶望的なまでに落ち込んだわけではない。DFラインさえ整備できれば(すでにボーンマスからネイサン・アケを獲得)、来シーズンの覇権奪還は極めて現実的な目標だ。

文:粕谷秀樹

粕谷 秀樹

ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。

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