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かつて、日本のサッカーにとってワールドカップ出場など「夢のまた夢」だった。1987年にラグビーのワールドカップが始まって日本チームが参加するようになった頃は、サッカー関係者は「いいなぁ、ラグビーはワールドカップに出られて……」と羨ましく感じたものだ。
しかし、アジア予選は簡単に突破するものの、日本のラグビーは世界では勝てなかった。サッカーも1998年に初めてワールドカップに参加し、2002年には地元開催の大会でベスト16に進出。2010年の南アフリカ大会では国外での大会でもベスト16に進んだ。そして、その頃になると、サッカー人はやや上から目線で「ラグビーは、勝てないよなぁ……」と思うようになった。
それが、今ではサッカーも、ラグビーもともに決勝トーナメントに進む時代になったのだ。つまり、昔のことを知っている身としては信じられないことではあるが、日本は世界でも一流の「フットボール・ネーション」になったということになる。
最近の日本の若い世代のサッカー選手を見ていると、戦術的な幅が広くなっている。試合の状況や、相手の戦い方に合わせて、自分たちのプレーをコントロールできるようになっているのだ。つまり、いわゆる「サッカーの常識」を備えているのである。
そして、今回のラグビーの日本代表を見ても、日本は本当にラグビーの基本に忠実にプレーしているように見える。「ラグビーの常識」が身に着いているのだ。
サッカーとラグビーというのは、一見、まったく別のスポーツのように見える。だが、実はルーツは同じフットボールである。
最近、ドイツに初めてサッカーを紹介したという本を見せてもらった。K・コッホと言う人が書いた「フッスバール」という本で、1875年に発行された小さな本の復刻版である。そこにはフットボールのルールの紹介が紹介されているのだが、内容を読んでみると選手の数は15人ほどとか、ボールより前にいる選手は全員がオフサイドとか、どう考えてもまるでラグビーのような内容なのだ。
1863年にロンドンのフットボール・クラブが統一ルールを作るために集まってできたのがフットボール・アソシエーション(FA=協会)であり、そこで定められたのがアソシエーション式フットボール(つまりサッカー)のルールだったのだが、最初のサッカー・ルールは、昔のフットボールと同じように、ボールより前の選手はみなオフサイドで、選手数も同数なら11人より多くても良かった。ラグビーとの大きな違いは、ボールを手で持ったまま(抱えたまま)前に運ぶことができるかどうかという点だけだった。
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