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北京五輪男子モーグルの表彰台。その中央に上がったのはキングズベリーでも堀島でもなかった
エキサイティングな展開が続いた北京五輪があっという間に終わり、W杯終盤戦がスタートする。今回は改めて五輪をプレイバックしつつ、今後のW杯総合ランキングを考察してみたい。
五輪決勝リザルトで分かる、勝負の分かれ目
前半パートでは、北京五輪の結果を踏まえ、“メダルを手にした選手と掴みそこねた選手とではどこに差があったのか?”を、メダリスト決定戦となったファイナル3のリザルトと照らし合わせながら探ってみよう。まずは男子から。
■北京五輪男子モーグル上位6名のスコア
1 ウォルター・ウォルバーグ(SWE)
タイム16.75+エア17.68+ターン48.8=83.23
2 ミカエル・キングズベリー(CAN)
タイム15.01+エア17.57+ターン49.6=82.18
3 堀島行真(JPN)
タイム16.54+エア17.54+ターン47.4=81.48
4 べンジャミン・キャベ(FRA)
タイム15.56+エア16.48+ターン47.4=79.44
5 ニック・ペイジ(USA)
タイム14.14+エア17.16+ターン47.6=78.90
6 クーパー・ウッズ-トパロヴィッチ(AUS)
タイム15.02+エア16.26+ターン47.6=78.88
W杯初表彰台も経験し、五輪でもメダル獲得が期待された杉本(右)だが、まさかのアクシデントもありファイナル2で敗退
北京五輪男子モーグルは、キングズベリーと堀島が金メダルを奪い合う展開が予想された。ところが、ファイナル2をトップで通過した“第3の男”ウォルバーグが、驚異的なアグレッシブターンで2強を圧倒するというドラマが待っていた。キングズベリーは3大会連続メダルとなるも、狙っていたV2はならず。堀島は平昌の原大智に続く日本チーム男子2人目の銅メダリストとなった。他の日本勢は、原が7位、滑走中にポールが折れる悲運に泣いた杉本幸祐が9位、初出場の松田颯は23位に終わった。
キングズベリーと堀島がウォルバーグに勝てなかった理由は?
あらためて、ファイナル3のスコアを眺めて分かることは、ウォルバーグが83点台、キングスベリーが82点台、堀島は81点台と、上位3名はそれほど大きく差が開いたわけではなかったことだ。その1点前後の差がメダルの色を分けたのである。
まず、目立つのがウォルバーグのタイム点だ。恐れを知らないハイピードな滑りは、強い印象を残すともに、16.75点という高得点をゲットした。しかも、ほぼノーミスでターン点も48.9点(2位)。第1エアでフルツイスト、第2エアでコーク1080を繰り出し、エア点は17.68点(1位)。速いだけではなく、総合的に優れていた。そのパフォーマンスは金メダリストに相応しいものだった。
一方、“勝つための手段”を知り尽くしているキングズベリーは、確実にジャッジに評価されるターンを狙ったのだろう。ファイナル3での滑りは、どこも貶すところがないパーフェクトなもので、49.6というトップのターン点となった。しかし、決して速くなかった。なんとタイム点は15.01と6位のウッズ-トパロヴィッチ(15.02)を下回ったのだ。このマイナス要素を、突出したターン点、高いエア点でも埋められることができなかった。キングズベリーが連覇を達成するために足りなかったのはスピードだったのだ。
では、堀島が目標としていた金メダル獲得を果たすために足りなかったものはなにか?ちなみにスピードではない。堀島も積極的に攻め、16.54というウォルバーグに次ぐタイム点を得ているのだ。エア点もトップのキングズベリーとほぼ差がない。ただ、第1エアのフルツイスト後に一瞬バランスを崩した場面をジャッジが見逃さず、ターン点が上の2人に及ばなかったのである。ただし、そのミス後も諦めずに、ミドルセクションを高速ターンで攻めたことが銅メダルにつながったともいえる。
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