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降雪をものともせず果敢に飛ぶ小林陵侑
小林陵侑と葛西紀明監督
今季W杯で13勝を記録して個人総合優勝を成し遂げ、日本のエースに躍り出た小林陵侑(土屋ホーム)は、帰国して、しばし休養のときを迎えた。
夏場からの葛西紀明選手兼任土屋ホームスキー部監督のコーチングを受けて、毎年5月に始まる合宿の体力作りから欧州選手の技術分析に至るまで、つねに二人三脚で歩んできた。
「リョウユウにはすべてを教えましたよ、それで、ここまでやれるとは。ほんとうに驚きました。もともと才能を持っているのはわかっていて。その手応えは普段から感じていましたが、一気に、ここでとは。自分もひとりの選手として『このやろう(笑)』という悔しさもありますが、監督としてはよくやったという気持ちの方が強いです」
指導者としての器を充分に兼ね備えた葛西紀明監督は、にこやかに語った。
小林陵侑はバッケンレコードを打ち出した
巷でよく取りざたされるのは、現役選手を引退して監督に集中し、との去就に関することだが、10代の頃から実績にあふれ、ひいてはW杯における海外勢との絶妙な駆け引きまで、ジャンプの酸いも甘いも知る彼のこと。他の一般スポーツのような世代交代とやらにとらわれることのないもはや特別な地位に立つ葛西なのだ。
小林と伊藤有希、伊藤将充へと入念な指導と、ジャンプテクニックの研ぎすましでいつまでも飛んでいける。昔から飛ぶのが大好きな葛西選手は、いつまでも、とことん飛び続ける。
さて、世界選手権の会場でジャンプの貴公子と言われていたハンナバルド(ドイツ)に会ったとき『久しぶりだね、キミとは10年ぶりくらいになるのかな。そうそう見るからにいい選手だね、コバヤシは』と懐かしく優しい口調で語りかけられた。
ジャンプ週間4連勝で完全勝利を成し遂げたのがその彼だ。
あれから10年余の快挙、今回ドイツのテレビ解説をしていたハンナバルドが注目するのは当然だった。
それもまだ22歳と若い小林である。まさしく成長過程にある。
いくらかの不安材料としては、ここまで8年間にわたりスキー部で指導していたヤンネ・バータイネン(元フィンランドチームヘッドコーチ)がチームを離れたことだ。細部の部分での修正がほんとうに上手い指導者である。
ときの流れというのもあるだろうが、その感謝の気持ちを忘れずに進みたい。
世界選手権で絶好調だったドイツチーム
今後、小林のジャンプ技術の分析を終えて、それを自国チームのテクニックにアレンジして選手に注入するなどのことが始まる欧州強豪各国だ。
世界選手権で成功したドイツは、気迫のアイゼンビヒラーに新鋭のガイガーなどがいる。 そこに捲土重来を期すベリンガー、さらにはベテランのフライタクに膝の故障から復帰したフロイントと、最強への道を突き進みそうだ。そこにヘッドコーチとして、前ポーランドヘッドコーチだったホルンガッヒャーの就任が決定して新鮮さが増してきそうだ。
まとまりあるポーランドは、やはりチームコーディネーターのアダム・マリシュの力が大きい。その人気とたぐいまれなる人心掌握で、W杯では国別対抗のタイトルを得た。そこにはエースのストッフにクバツキ、ジラにコット、新鋭の選手数名を入れ替えながら経験を積ませていくなどのチーム戦略がしっかりと組み立てられていた。ゼーフェルド世界選手権ノーマルヒルのラッキーともいえる金メダル獲得など時の運までをもつかみ、ジャンプ強豪国の復活となった。
オーストリアは、頼みのクラフトが地元のプレッシャーにやられた格好で世界選手権では金メダルを取れなかったが、名手ハイバックが復調、中堅フェットナーの頑張りと、そこにフーバーらの若手を投入して上位をうかがう。
ノルウェーは幾人か引退選手が出たタイミングとなったが、ヨハンソンとフォルファンの2トップにベテランのファンネメルが構え、あとは若手選手の上昇を待つ段階。
フライング団体戦では鉄の強さをみせるスロベニアは、個性ある若きドメンがリードしながら元W杯王者で兄ペテルの復活がその後押しをした。ここにザイチなどの新鋭が加わってきた。
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