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1990年代後半の『カミカゼカサイ』は、それこそスキー板のかえりを利した豪快かつ怖れをものともしない果敢なジャンプで欧州中の度肝を抜いた。
それは左右両スキーの間から葛西の顔が下方向に出て、しかも微笑みをたたえて飛んでいる。そのスローモーション映像に人々は驚嘆し、とめどもない拍手をおくった。
そして、ときの英雄アンドレアス・ゴルドベルガー(オーストリア)と、つねに優勝争いの好勝負を演じた。
ゆえに危機を感じた欧州列強国はマテリアルのルール変更を企てた。それがあのビンディング設置ポジション変更という80%ルールである。これこそが、初代の日本バッシング!それも身長によるスキーカットルール以前のことだった。
葛西は慣れず、なぜだと困惑した。そしてしまいにはシーズン前のリレハンメル合宿練習で、着地直前に横風におられて転倒、鎖骨のケガにより帰国を余儀なくされた。
札幌で治療に専念する葛西の代わりに、新鋭の船木和喜(デサント→FIT)がW杯遠征に抜擢され、初出場初優勝を成し遂げたのもここプラニツァのノーマルヒルであった。
W杯500試合出場、それは長年の労苦とはいえ、やはり『ジャンプが大好き!』だから成し得る偉大な記録であろう。
ジャンプファンは手に取るようにその重要性が理解し得て、それはもう心から称えようと大きな拍手をおくる。
最終戦を迎えての海外勢は、個人総合優勝に輝いたプレフツは前年の悔しさから、一気に表彰台中央をもぎ取った。そのスロベニアの新型といわれるテクニックは、勝者プレフツによって実証に至った。
注目急上昇のノルウェーはバーダルやヤコブセンの引退があったものの、ノイシュタットW杯で初優勝を遂げたフォルファンはじめ若手の強化育成に成功をみた。
フロイントのドイツはポストシーズンならではの調整の期間としているようでもあった。また、伝統国オーストリアはクラフトとハインバックがリードするが、クッティンヘッドコーチ2年目のチーム内の意思疎通に時間をかけているとか。
わが日本チームは、ザコパネ(ポーランド)W杯で7位に躍り出た小林陵侑(土屋ホーム)を組み入れた7人体制でスロベニアに乗り込んだ。
これで大ベテラン、中堅、若手選手とロング世代になるが、盤石ともいえる諸玉のチームが成立した。しかも国内には伊藤有希(土屋ホーム)の弟で、大鰐インターハイを制した将充(下川商高→土屋ホーム内定)までもが控えている。
いよいよ団体戦での表彰台定着、加えて常時ひとけた入りの日本選手、それが来季の目標となってくる。
今季のスキージャンプW杯最終戦シリーズ、いつもの春うららかなプラニツァでの4連戦、フライングのロングジャンプに心躍らせ、そして有名なプラニツァ音頭に心包まれて、そういう光景を心の底から堪能といこう。
岩瀬 孝文
ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。
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