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スキー コラム 2014年3月25日

最後に見せた王者の底力。ヒルシャーがSLと総合優勝のタイトルを獲得 = アルペンスキー13/14シーズンレビュー

アルペンスキー・ワールドカップ(白いサーカス)転戦記 by 田草川 嘉雄
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約5ヶ月間にわたった「白いサーカス」、2013/14シーズンのアルペンスキー・ワールドカップも3月12~16日のワールドカップ・ファイナルをもって終了した。 総合優勝は男子がマルセル・ヒルシャー(オーストリア)で3年連続3回目。女子はアナ・フェニンガー(オーストリア)でこちらは初優勝だ。 実はふたりは同じサルツブルク州の出身で同じ1989年生まれ。子供の頃から地域のチームでともにトレーニングを積み、進んだ高校も同じだった。ワールドカップレベルでは、ヒルシャーが先に頂点に達したが、今シーズンはほぼ肩を並べた。ワールドカップポイントはヒルシャーが1222点でフェニンガーは1371点。ともに、アルペン王国オーストリアのエースにふさわしい素晴らしい成績といってよいだろう。

ただしヒルシャーは、シーズン後半かなり苦しんだようだ。つねに腰に痛みを抱え、そんななかでのハードトレーニングは疲れを蓄積させた。昨シーズンは技術系種目で1度も表彰台から外れたことのなかったヒルシャーだが、今季はしばしば4位以下の順位に沈み、スラロームでは、1月初めのアデルボーデンから、ジャイアント・スラロームでは年末のアルタ・バディアから優勝がなかった。そのため、総合優勝をめぐるアクセル・ルンド・スヴィンダール(ノルウェー)とのタイトル争いは、つねに後手に回った。さらに絶対的強さを誇っていたスラロームでも、ソチ五輪を含めると5レースの間勝利から遠ざかってしまった。そしてクラニスカ・ゴーラで5位に終わった段階で、スラロームのポイントリーダーの座をフェリックス・ノイロイター〈ドイツ)に奪われるという緊急事態。ワールドカップ・ファイナルの展開次第では、ひとつもタイトルが取れない可能性さえ出てきたのだ。

しかし、ライバルのスヴィンダールもソチ五輪を境にシーズン前半の勢いを失い、ヒルシャー同様、あるいはそれ以上に調子を落としてしまった。その結果、ヒルシャーが総合チャンピオンの座を死守。シーズン最後のレースとなったスラローム最終戦では、追いすがるノイロイターを振り切って優勝し、土壇場で種目別タイトルを奪い返した。

「スラロームの種目別優勝は、自分にとってとても重要な意味を持つタイトルだ。勝てるとは思わなかったけれど、とにかく120%の力を出そうと思ってフルにアタックした」と、レース後の彼はタイトル防衛に安堵の表情を浮かべた。 ヒルシャーを追い詰めながら、最終戦で2位に終わりタイトルに手が手が届かなかったノイロイターは、さすがにがっくりとした様子だった。これでスラロームの種目別順位は2年連続の2位。絶好調で臨むはずのソチ五輪でもメダル無しで終わり、今季も無冠。ソチに向かう道中で交通事故を起こし、軽いムチ打ちになったことが悔やまれるだろう。しかし、気を取りなおしたノイロイターは、 「シーズンをトータルで考えれば満足できる成績が残せた」と語り、ライバルであり大の親友でもあるヒルシャーを祝福した。

最終戦では11位と振るわなかったものの、ヘンリック・クリストッファーセン〈ノルウェー)の活躍も鮮烈だった。19歳の新鋭は、今季のスラロームを盛り上げた立役者のひとりと言ってよいだろう。出場したスラローム全レースを完走し、銅メダルを獲得したソチ五輪を含めれば5度も表彰台に立った。特にヒルシャー、ノイロイターの2強を力で抑えこみ、ワールドカップ初優勝を決めたシュラドミングのナイトレースは印象的だった。GSでも3位入賞が1度あり、来季はさらに成長が予想される。その勢いがどこまで彼を押し上げるのか、今後のワールドカップシーンの重傷人物となることはまちがいない。

残念ながら日本チームは、足踏み状態というべきだろう。だが、そのなかで湯浅直樹(スポーツアルペン)が奮闘したのが光る。年明け最初のボルミオのスラロームで4位になり、ついにワールドカップの第1シード入り。ただそのアドバンテージをレースで生かすことなく右足首を骨折してしまったのは、本人とってもチームにとっても大きな誤算だった。手術と1か月のリハビリを経てレースに戻ったが、本来の調子とはほど遠く、最終戦は完走者中最下位の19位でシーズンを終えた。

だが、苦しい中にも確かな手応えを感じる湯浅は、4年後の平昌(ピョンチャン)五輪に向けて、現役を続けることを決意。新たな4年間をスタートさせた。 その一方で、ともに、日本のアルペンを支えた佐々木明(ICI石井スポーツ)と皆川賢太郎(ドーム)は、今季限りでワールドカップを去る。世界の頂点にあとわずかに迫りながらついに辿りつけなかったことは残念だが、ふたりの活躍には何度もわくわくさせられた。夢の実現は先の楽しみとして、長く起伏に富んだ彼らのレース人生に敬意を表したい。

〔写真1〕幼なじみが男女のワールドカップ総合優勝。過去には同年度にともに総合優勝に輝いたウェンツェル姉弟の例があるが、同級生同士は初めてのことだ。
〔写真2〕最後の最後に底力を見せつけたマルセル・ヒルシャー。総合に加えてスラロームの種目別優勝も獲得した。
(クリックで写真拡大)

〔写真3〕今季のスラロームで3勝をあげながら、土壇場でヒルシャーに逆転されたフェリックス・ノイロイター。今季も無冠で終わった。
〔写真4〕シーズンを通して鮮烈な活躍を見せた新鋭ヘンリック・クリストッファーセン。まだ19歳だがはたしてどこまで成長を続けるのか興味深い。
(クリックで写真拡大)

〔写真5〕腰痛に苦しんだうえに、右足首骨折。今季も満身創痍で戦った湯浅直樹。だが次の4年に向けて、早くもスタートを切った。
〔写真6〕日本チームの大黒柱として、大きな存在感を放ち続けた皆川賢太郎。怪我と戦い続けたレース生活に別れを告げ、新たなスキー人生を始める。
(クリックで写真拡大)

〔写真7〕佐々木明、最後のレースとなったクラニスカ・ゴーラの2本目ゴール。
2003年のあの快挙からすでに12年。
頂点には届かなかったが、誇るべき12年だ。
(クリックで写真拡大)

田草川嘉雄

田草川 嘉雄

白いサーカスと呼ばれるアルペンスキー・ワールドカップを25年以上に渡って取材するライター&カメラマン。夢は日本選手が優勝するシーンをこの目で見届けること。
≫Twitter@ReplaySkiRacing ≫ReplaySkiRacing

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