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スキー コラム 2014年2月14日

混沌とするメダル争い。 = ソチ五輪プレビュー

アルペンスキー・ワールドカップ(白いサーカス)転戦記 by 田草川 嘉雄
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開幕以来、連日さまざまな競技でさまざまなドラマが展開されているソチ五輪。ふだんはあまりメディアには取り上げられないウィンタースポーツだが、今回のオリンピックをきっかけに、その魅力に気付かされたという方も多いのではないだろうか。そして、まだしばらくはテレビ観戦で寝不足の毎日が続くことだろう。アルペン競技も高速系種目から始まり、男子ダウンヒルのマティアス・マイヤー(オーストリア)、女子スーパー・コンバインドのマリア・ヘッフル・リーシュ(ドイツ)ら新たな金メダリストが誕生している。どのレースもタイム差の詰まった大接戦。とくに女子ダウンヒルはドミニク・ギズィン〈スイス)とティナ・マゼ(スロヴェニア)が同タイムでともに金メダルを獲得というオリンピックのアルペン史上初の出来事となった。さらに男子のダウンヒルも1位から3位までがわずか0秒10差という僅少差。誰が勝つかわからないスリリングなレースが続いている。

大会後半は、2月18日の女子ジャイアント・スラロームを皮切りに技術系種目が始まる。日本期待の男子スラロームは2月22日。1本目の開始が午後4時45分(日本時間午後9時45分)というナイトレースで行なわれる。アルペン競技に出場する日本選手は、湯浅直樹(スポーツアルペン)と佐々木明(ICI石井スポーツ)のふたりのみ。女子は前回のバンクーバー五輪に続き、2大会連続で派遣なしという厳しい状況だ。湯浅・佐々木両選手には、この閉塞した状況を吹き飛ばす爆発を期待したい。

湯浅にとっては、これが2度目のオリンピック出場だ。前回はチーム内での代表争いに敗れ、出場権を獲得できなかった湯浅。当時は各国への出場枠の分配システムが非常に複雑だったため、本来は追加出場枠があったはずのだが、これを生かすことができなかった手続き上の不備も重なり、彼は二重の悔しさを味わっているわけだ。

その悔しさを原動力に、ソチ五輪に向けて進んできた湯浅だが、1月19日、ウェンゲンで行なわれたスラローム第5戦で転倒し、右足距骨を骨折するというアクシデント。またしても五輪出場に暗雲がたちこめてしまった。この時点でソチ五輪のスラロームまでに残された時間は約1か月。すぐに手術を受け、しばらくの安静の後リハビリを開始した。何としてもソチ五輪のスタート台に立とうと、現在懸命な努力を続けているところだ。経過は順調のようだが、オリンピック前の重要な準備期間をリハビリに費やしたことの影響はけっして小さくはないだろう。現時点では楽観も悲観もできない状況と言えそうだ。

佐々木は、これが最後のオリンピックとなる。今シーズンを最後にトップレベルのアルペンレースからは身を引き、今後はバックカントリーを主なフィールド に活動していくという。五輪後もシーズン終了まで残りのワールドカップには出るだろうが、アルペンレーサーとしての佐々木が見られるのもあとわずか。持てる力のす べてをこのオリンピックにぶつけて欲しい。

今シーズンの佐々木は、滑り自体は好調なものの、開幕からなかなか波に乗り切れず結果につなげることができなかった。しかし、五輪前の最後のレースとなったシュラドミングでは38番スタートから1本目24位と踏ん張り、今季初めて2本目に進んだ。2本目はゴール前でややミスが目立す惜しい滑り。結局順位を上げることができず合計タイムでも24位(トップとは3秒88差)となったが、オリンピックに向けてひとつのきっかけになったことは確かだ。最後の大舞台。これが最後と決めた以上、彼には失うものはないはず。メダル獲得を目指し佐々木らしい攻めのスラロームを見せてくれることだろう。

他の種目同様、男子スラロームのメダル争いも混沌としている。今季の実績から言えば、マルセル・ヒルシャー(オーストリア)、フェリックス・ノイロイター(ドイツ)、アレクシー・パントュロー(フランス)の3人が有力。これにマリオ・マット(オーストリア)、マティアス・ハルギン(スウェーデン)、パトリック・ターラー(イタリア)らが絡んでくるだろう。忘れてはならないのが、現在すさまじい勢いで成長中のヘンリック・クリストッファーセン(ノルウェー)だ。デビュー2年目、今季の開幕時には第1シードにも入っていなかったが、今やノイロイターと並び堂々のランキング2位タイ。シュラドミングでは、ワールドカップ初優勝まで果たしている。まだ19歳。同世代の選手たちがFISレースやヨーロッパカップ等で戦っているなか、ひとりだけ突き抜けた成績を残している。体格も正確も控えめな印象だが、メンタルは相当タフなようだ。オリンピックはもちろん初出場。経験の浅さを懸念するむきもあるだろうが、たとえばスラロームの絶対的優勝候補マルセル・ヒルシャーはクリストッファーセンに関してこう語っている。

「19歳という年齢は、彼にとって大きなアドバンテージだ。失敗したって当たり前なのだから、限界までのアタックが思い切りできるからだろう。そしてそれはわれわれにとっては大きな脅威だ」。 そのヒルシャーは、現在ランキングトップ。しかし2位のふたりとのポイント差は50点しかなく、去年のような圧倒的な強さとは印象が異なる。昨シーズンは地元での世界選手権という大きな重圧のかかるレースで優勝(スラローム)しているが、はたして今回のオリンピックでもその精神的な強さを発揮できるかどうか。昨年はまったく見られなかった片反を、最近はしばしば犯していることも気になるところだ。とはいえ、実力的には金メダルに一番近い位置にいることはたしか。すべては平常心でスタートを切れるかどうかにかかっている。

〔写真1〕快進撃を続ける19歳の新鋭ヘンリック・クリストッファーセン(ノルウェー)。この勢いでメダルまで突き進むのか
〔写真2〕優勝候補筆頭はマルセル・ヒルシャー。しかし昨シーズンほどの安定感がないのは気になるところ
(クリックで写真拡大)

〔写真3〕尻上がりに調子を上げているフェリックス・ノイロイター。安定感ではむしろヒルシャーをしのぐといってよいだろう
〔写真4〕着実に上位に食い込んでいる今季のパトリック・ターラー。36歳の大ベテランが初のメダル獲得に挑む
(クリックで写真拡大)

〔写真5〕安定した速さのマティアス・ハルギン。ただ気合が入りすぎるのか2本目で失速しがちなの懸念材料だ
〔写真6〕優勝1回2位1回という今季のマリオ・マット。しかし、失敗の多さが大舞台でどう影響するだろうか
(クリックで写真拡大)

〔写真7〕現在急ピッチで調整中の湯浅直樹。オリンピックのスタートにどのくらいの状態で立てるのかが鍵となるだろう
〔写真8〕最後のオリンピックとなる佐々木明。彼らしい滑りで、そして悔いの残らない滑りでメダル獲得をめざしてほしい
(クリックで写真拡大)

田草川嘉雄

田草川 嘉雄

白いサーカスと呼ばれるアルペンスキー・ワールドカップを25年以上に渡って取材するライター&カメラマン。夢は日本選手が優勝するシーンをこの目で見届けること。
≫Twitter@ReplaySkiRacing ≫ReplaySkiRacing

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