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スキー コラム 2013年1月25日

1月27日 男子スラローム第7戦(キッツビュール/オーストリア)

アルペンスキー・ワールドカップ(白いサーカス)転戦記 by 田草川 嘉雄
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冬も深まり、1月最終週。男子のアルペンスキー・ワールドカップは2週続いたスイス転戦からいよいよアルペン最強国オーストリアへと移動してきた。ウェンゲンのラウバーホルン大会と並ぶ歴史を持つクラシックレース、キッツビュールのハーネンカム大会だ。ワールドカップでもっとも盛り上がるレースであり、もっとも多くの観客ともっとも多くの報道陣を集める大会である。

ウェンゲンのラウバーホルン・ダウンヒルがもっとも長いダウンヒルならハーネンカム大会のダウンヒルは世界でもっともむずかしいダウンヒルである。もっとも危険な、と言い換えてもいいだろう。スタートからゴールまで難所の連続で、いたるところに恐ろしい罠が口をあけている。実際このコースでのクラッシュが原因で競技生命を絶たれた選手も少なくない。経験豊富なベテランでさえもこのコースのスタートゲートに立つときには、強い恐怖を感じるという。ウェンゲンのダウンヒルで優勝したクリストフ・インナーホーファーによれば、キッツビュール初出場の選手は、チームの先輩たちからいかにこのコースが危険であるかを散々聞かされ恐怖で眠れぬ夜を過ごすらしい。半分は“新人イジメ”のいたずら心なのだろうが、それだけ事前に覚悟を決めないととてもハーネンカムDHに挑むことはできないということである。

一方のスラロームは、非常にクセのあるやっかいなコースが使われる。その特徴をひとことで言うと“クラシック”。なんだそれ? と思われるかもしれないがそうとしか言いようがない。つまり、自然の地形をほぼそのまま残してあるので、斜面が複雑にねじれたりうねったりしているのだ。新しく開かれたコースがスキーヤーの滑りやすさを考えて設計されるのと違い、「ここはもともとこういう地形なんだから、そのまま滑りなさい」という思想なのだろう。ウェンゲンやアデルボーデン、あるいはクラニスカ・ゴーラといった伝統あるレース会場のコースは、総じてそういう傾向があるが、なかでもキッツビュールのスラロームコース“ガンスレン”はそのクセモノのコースなのである。スタートからゴールまで全体的に左下がりの片斜面。そのうえで急・中・緩斜面が頻繁に入れ替わる。
したがって、斜面の変化がいたるところにあって、おまけに途中で夏道が横切っていたり、ポールの立ち方によってはアップヒル(登り斜面)まであったり。そういえば一昨シーズンはゴール直前でジャンプするような箇所まであって選手たちを驚かせていた。目のくらむような急斜面はなく、一見やさしそうにみえるのだが、その攻略は実はとてもむずかしい、というタイプのコースといえるだろう。

男子スラロームは、今季第8戦として1月27日に行なわれる。2月にはシュラドミング(オーストリア)で行なわれる世界選手権前の最後のスラロームとなる。

現在スラロームの種目別ランキングでトップを走るのは、マルセル・ヒルシャー(オーストリア)。これをフェリックス・ノイロイター(ドイツ)、アンドレ・ミューラー(スウェーデン)が追っている。ヒルシャーとノイロイターのポイント差は114点で、まだ逆転の可能性があるが、270点差をつけられたミューラーは苦しい。残りはキッツビュールを含めて3レースしかないので、昨シーズン獲得したスラローム・チャンピオンのタイトル防衛はほぼ不可能と思われる。タイトル争いは、プライベートでもお互い仲の良いヒルシャーとノイロイターの親友同士に絞られたといってよいだろう。

ヒルシャーは、キッツビュールのコースを比較的苦手としている。最高位が4位でまだ表彰台にも上ったことがないのだ。昨シーズンは2本目でコースアウトしている。しかし、今季のスラロームはこれまですべて3位以内に入っており、安定感は抜群。現在の勢いから考えれば自身のキッツビュール最高位はおそらく更新するはずで、レースの主役となることはほぼ間違いない。もちろん彼自身は優勝をめざしてフルにアタックしてくるだろう。
ノイロイターにとっては、ここは2010シーズンにワールドカップ初優勝を記録した記念すべきコースだが、その後の2シーズンはいずれも2本目に進むことができず相性がいいのか悪いのかちょっとわかりにくい。しかし、ウェンゲンでヒルシャーとの接戦を制して優勝しているだけに調子は上がってきている。ふたたびライバル同士のレベルの高い争いが見られそうだ。

他に注目したい選手がふたりいて、そのひとりはイェンス・ビグマルク(スウェーデン)。ザグレブで1本目トップ、ウェンゲンでも1本目2位と一発はまったときの速さは素晴らしいが、いずれも2本目に自滅するという悔しいレースが続いている。おそらく自分へのプレッシャーと、ヒルシャーらに追われることのプレッシャーで滑りのリズムを崩すのだろう。しかしキッツビュールは2007シーズンに2連戦2優勝、翌年も2位入賞という彼がもっとも得意とするコース。これまでの無念を晴らそうと気合をいれてくると思われ、その滑りに注目したい。
もうひとりは、ジャン・バティスタ・グランジ(フランス)だ。怪我による長いブランクを経て、今季はスラローム第3戦(マドンナ・ディ・カンピリオ)からワールドカップに復帰。しかし、なかなか結果は出ず、好調時の輝きは失われていた。復帰後の4レースの順位は21、22、16、14位。かつてのチャンピオンとしては納得の行かない成績だっただろう。そんな彼にもようやく復調の兆しが見えた。24日にキッツビュールの前哨戦として行なわれたウェステンドルフのFISレースで優勝したのだ。カテゴリーはFISレースだが、ワールドカップの第1シード選手も多数出場するハイレベルの戦い。このレースで優勝したことはグランジに大きな自信を与えたはず。今後の彼の滑りがどう変えていくのか興味深い。

このFISレースには、日本からも湯浅直樹(スポーツアルペン)、佐々木明(ICI石井スポーツ)、大越龍之介(東急リゾート)の3人が出場した。湯浅は1本目の前半でポールをまたいでしまったが、佐々木と大越は2本目に進み、それぞれ18位(暫定)と35位(暫定)。順位はあまり芳しくはないが、タイム差はかなり詰まっており、それなりに成果のあったレースといえるだろう。
佐々木は、自ら「調子は相当いい」というだけに、非常に安定した滑りだった。ただ自信があるだけにきれいに滑りすぎてしまい、それがタイムの伸びない原因となったようだ。日曜日のハーネンカムスラロームでは、この点をどう修正するか、彼らしい思い切ったアタックを期待したい。
大越は、「スキーの動きに身体がついていけていない。理想のイメージははっきりとしているのに、実際にはそういう滑りができず、どうしても守りの滑りをしてしまう」と率直に迷いを語った。彼本来の滑りを取り戻すにはまだもう少し時間がかかりそうだが「昨シーズンも1月までは滑りも最悪で、そのごちょっとしたきっかけで一気に調子が上がった。やるべきことはわかっているので、苦しくても諦めないことが大切だと思う」と後半に向けての抱負を語った。

[写真1]昨年優勝のクリスチャン・デヴィーレ。彼にとってワールドカップ初勝利だった
[写真2]マルセル・ヒルシャーは昨年のこのレースでは2本めにコースアウトしている

[写真3]先週のウェンゲンで優勝したフェリックス・ノイロイター。現在絶好調だ
[写真4]ウェンゲンではイヴィッツァ・コスタリッチが3位となり今季初の表彰台

[写真5]1本目は速いのだが2本目に自滅することの多いイェンス・ビグマルク
[写真6]ウェンゲンでは24位。2年ぶりにワールドカップポイントを獲得した佐々木明

田草川嘉雄

田草川 嘉雄

白いサーカスと呼ばれるアルペンスキー・ワールドカップを25年以上に渡って取材するライター&カメラマン。夢は日本選手が優勝するシーンをこの目で見届けること。
[email protected] ≫ReplaySkiRacing

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