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スキー コラム 2013年1月4日

1月6日 男子スラローム第4戦(ザグレブ/クロアチア)

アルペンスキー・ワールドカップ(白いサーカス)転戦記 by 田草川 嘉雄
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男子スラローマーにとって、1月はもっとも重要な時期といえるだろう。毎シーズンこの時期にレースが集中、週末ごとにスラロームがスケジュールされているからだ。通常はザグレブ(クロアチア)、アデルボーデン(スイス)、ウェンゲン(スイス)、キッツビュール(オーストリア)、シュラドミング(オーストリア)と舞台を移しながら5レースが1月に行なわれる。今シーズンはシュラドミングで世界選手権が開催されるため(2月5~17日)同地でのワールドカップはないが、それでも1月だけで4レースのスラロームが集中する。したがってスラローマーにとっては、この時期に調子を上げることが活躍のための絶対条件で、逆に調整に失敗するとランキングを大きく落としかねない。1月期の出来不出来がシーズン通しての成績に直結するわけである。

そんな“スラローム集中月間”のトップを飾るのがザグレブのスラローム。初開催が2005年とワールドカップレースとしての歴史は浅いが、現在ではレギュラー会場に定着し、ワールドカップでも有数の観客動員数を誇るレースとなった。もともとは女子スラロームとしてスタートし、大会名は“スノークイーン・トロフィー”。スノークイーンとは、いうまでもなくワールドカップ総合優勝3回を誇るヤニッツァ・コスタリッチのことで、年明け早々に開催されるようになったのも、彼女の誕生日が1月5日であることに由来する。現在では中1日をあけて男女のスラロームが行なわれており、今季は1月4日に女子スラローム(ナイトレース)が、6日に男子スラロームが予定されている。
ザグレブはクロアチアの首都で人口は約80万人。中世の街並みが残る旧市街と高層ビルの立ち並ぶビジネス地区が不思議な調和を見せる美しい都市である。レースは、市街から車で北へ1時間弱走ったところにあるスリエーメ山が会場。リフトが3基かかるだけのちっぽけなスキー場で、アルプスの広大なスキー場で行なわれる他のワールドカップとは雰囲気もだいぶ異なる。しかし、その熱狂度という点ではけっして負けておらず、毎年2~3万人の大観衆がコースにつめかける。ザグレブ市民にとっては新しい年の幕開けを祝う最高のお祭りとして愛されているのだ。
ザグレブは、イヴィッツァ・コスタリッチが生まれ育った街でもある。父アンテ、妹ヤニッツァとともに世界最強のスキー一家ともいうべきコスタリッチ家は、現在でもこの街に住んでいる。したがってスリエーメはまさに本拠地。“スノークイーントロフィー”は彼らが子供時代から数えきれないほどの練習を積んできたホームコースで行なわれる凱旋レースといえるだろう。

しかし、コスタリッチ兄妹はともにこのホームレースでの優勝経験がない。2006年にすでに引退しているヤニッツァはワールドカップで通算30回の優勝を記録しているのに、地元のレースでは3位に1度入ったのが唯一の入賞だし、イヴィッツァは3度も2位になりながらまだ表彰台の中央に立ったことがない。このレースはある意味でコスタリッチ家のために行なわれるレースである。大観衆はイヴィッツァの滑りを応援し、彼が勝利するシーンを見るためにスリエーメの山に上がって来るのだ。2位3回、3位1回というイヴィッツァの成績はそうした期待に十二分に応える素晴らしいものではあるが、一家にとっては優勝することが文字通りの悲願。今シーズンこそ初優勝を、とホームレースに向けてすさまじい闘志を燃やしてくるに違いない。

ところが、そのイヴィッツァ・コスタリッチの成績が振るわない。今季はこれまでのところレヴィでの第1戦で8位となったのが最高。故障を抱える膝の調子が良くないことが最大の要因で、クリスマス前には膝の痛みのためにMRIのチェックを受けている。しばらくの休養の後、1月1日にミュンヘン(ドイツ)で行なわれたシティイベントには出場(5位)したものの、とても本来の滑りとは言いがたい。はっきり言って悲願達成は、今季も難しいと言わざるを得ない。はたして6日のレースまでにどれだけ調子を上げることができるのか、ファンとしてもやきもきしていることだろう。

対照的に昨シーズンのスラロームでコスタリッチと激しく種目別タイトルを争ったマルセル・ヒルシャーは現在絶好調。以前はどうしてもこのコースとフィットせず、ザグレブでは成績がぱっとしなかったヒルシャーだが、昨年の大会ではコスタリッチを抑えて優勝しており、コースに対する苦手意識は拭い去った。標高差210m、しかも全長も長いタフなコースでは、彼の技術と若さがものをいうだろう。振り返れば、昨シーズンコスタリッチとの間に勃発した片反騒動は、そもそもザグレブのスラロームが発端だった。(http://goo.gl/yPWR4)ヒルシャーにとってはここでもう一度勝利することが、その嫌な思い出を断ち切ることにもなるはずだ。

好調の波に乗っているもうひとりは、フェリックス・ノイロイター(ドイツ)。レヴィでは7位と平凡な成績だったが、ヴァル・ディゼール、マドンナ・ディ・カンピリオと連続で2位に入賞。そしてミュンヘンのシティイベント(パラレルスラローム)では、決勝で新星アレクシー・パントュロー(フランス)を下して優勝している。勢いという点では今もっとも注目すべき存在で、昨シーズンのザグレブは2位入賞とコースに対する相性も申し分ない。表彰台争いの有力候補としてマークしておきたい。

そして忘れてはいけない湯浅直樹(スポーツアルペン)。マドンナ・ディ・カンピリオでの3位入賞は衝撃的なそして画期的な快挙だった。立っていられないほどの腰痛をおしての魂のスラロームは、ファイター湯浅の真骨頂だったが、ファンとしてはその再現をザグレブでも期待したい。年末に一時帰国したさいには充分とはいえないまでも身体の手入れを行ない、英気を養って再びヨーロッパに戻った。まあ痛くても痛いとはなかなか言わない湯浅だが、本人によれば順調に準備ができているという。(http://ameblo.jp/naoki-yuasa1321/)いよいよ世界の頂点が見えてきた今、目指すは表彰台の中央。はたして日本アルペン界の悲願は達成されるのか? ザグレブの長くタフなコースに湯浅の腰が耐えきれるかどうかがそのポイントとなりそうだ。

日本のもう1枠は、これまで同様、直近のヨーロッパカップの成績で決まる。今回もナショナルチームの大越龍之介(東急リゾート)、石井智也(サンミリオン)とプライベート参戦の佐々木明(ICI石井スポーツ)がシャモニのヨーロッパで出場枠を争う。年内のレースでは佐々木がかなりの差をつけリードしていたが、その力関係はこのまま続くのか、それとも大越・石井の巻き返しが見られるのか、こちらも注目したい焦点だ。佐々木は年末もヨーロッパにとどまってトレーニングに専念し、12月30日にはイタリア選手権のスラロームにも出場。ワールドカップの第1シード選手のクリスチャン・デヴィーレ、ステファノ・グロスらとコンマ差の勝負となり4位に入賞している。調子は依然ゆるやかな上昇カーブを描いているとみてよいだろう。その佐々木を若いふたりが超えるのは簡単なことではないだろうが、そろそろ意地を見せてほしいところだ。日本人同士でレベルの高い争いを続けることが世界に近づく道でもある。次代のエース、大越・石井の奮起に期待したい。

[写真左]ザグレブ市民にとって、この大会は年明け早々のお楽しみ。お祭り気分で3万人近い大観衆がコースを取り囲む
[写真右]クロアチアにおけるイヴィッツァ・コスタリッチの人気の高さは想像を絶する

[写真左]今シーズンこそ優勝を狙いたいイヴィッツァ・コスタリッチだが、残念ながら調子はかなり悪そうだ
[写真右]昨年はマルセル・ヒルシャーがコスタリッチを僅差でおさえて優勝。優勝者は大会名にちなみスノークイーンのコスプレ? をさせられる。

[写真左]湯浅直樹が初の表彰台に立ったマドンナ・ディ・カンピリオ。ザグレブでもこの再現を期待したい。できれば並び順を入れ替えて…。
[写真右]あまりの腰の痛みに耐えかね、ゴールに入った湯浅はそのまま倒れ込みひとりでは起き上がることさえできなかった

田草川嘉雄

田草川 嘉雄

白いサーカスと呼ばれるアルペンスキー・ワールドカップを25年以上に渡って取材するライター&カメラマン。夢は日本選手が優勝するシーンをこの目で見届けること。
[email protected] ≫ReplaySkiRacing

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