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スキー コラム 2012年12月20日

オーストリアとドイツの闘いに一矢報いたい日本チーム

鳥人たちの賛歌 W杯スキージャンプ by 岩瀬 孝文
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W杯スキージャンプ開幕戦のリレハンメル(ノルウェー)からクーサモ(フィンランド)そしてソチ(ロシア)で行なわれたプレ五輪を兼ねたW杯ノーマルヒル、つねに逆風に見舞われる個性派のジャンプ台エンゲルベルグ(スイス)と年内の試合が終了した。ここでまことしやかに見えてきたのが、最強軍団のオーストリアチームに立ち向かうドイツチームという構図だ。

W杯個人総合優勝の実績があるモルゲンシュテルンにシュリレンツアウナー、安定するコフラー、長距離ジャンパーのコッホ、ベテランでリーダー各のロイツルらが上位に君臨し続け、ここ数年、強者の座を揺るぎないものにしていたオーストリアだ。しかも若手では成長著しいフェットナーがコンスタントに2本目に残ってきている。

前年はこれにノルウェーチームが立ち向かったのだが、バーダルが個人総合優勝を飾ったものの、その牙城までを崩すには至らずの状況に終わっていた。
そこで今シーズン、一気に浮上してきたのがドイツだ。
夏場のサマーグランプリではノイマイヤーとヴァンクが躍進、冬になってからは抜群の調整力をもってフロイントがクーサモW杯で優勝、フライタクも勇敢に飛ばし、若手でニヒルなヴェリンガーがエンゲルベルグでW杯3位表彰台に入るなどチームの総合力が着実に上場してきていた。
この年末年始のジャンプ週間で、熱き闘いがヒートアップと大観衆の期待が寄せられる。さらにはポイントナー(オーストリア)とシュスター(ドイツ)によるオーストリア人コーチ『宿命の対決』が大いに見ものになりそうだ。

この伝統的な4つのジャンプ大会はクリスマスブレイクを終えた時期の一大シリーズイベントだ。
独語でVierschanzentourneeフィアシャンツェンツアニー、英語ではフォーヒルズトーナメント、日本での略称はジャンプ週間。ドイツでは12月30日オーベルスドルフ、1月1日のガルミッシュ・パルテンキルヘン、オーストリアのインスブルックが1月4日、最終戦はビショフスホーヘンで1月6日。このラージヒル4連戦で欧州の強国とジャンプファンが熱狂する。

日本選手は1990年代後半に船木和喜、原田雅彦、斉藤浩哉がガルミッシュで表彰台独占、葛西紀明のガルミッシュ2度の制覇など、華々しい活躍があった。
かつて10年連続でジャンプ週間の現場へ取材に行っていたが、ついには2本目に残れないという事態になり、奈落の底に沈んだ日本チーム。それを最後まで見届けたが、その空しさといったら、もう、あの栄華はいずこへ、だった…。

いよいよ、そこからの復活劇を期待したい。
右膝の故障が癒え、国内名寄大会に連勝した伊東大貴(雪印メグミルク)がついに欧州遠征に帰ってくる。タイトスーツになりながら夏に入念な調整で仕上げ、前年にW杯個人総合4位の実績を披露する。その伊東と2トップにあたる竹内択(北野建設)、欧州に敬意をもって迎えられるベテラン葛西紀明(土屋ホーム)、新鋭で伸び盛りの清水礼留飛(雪印メグミルク)など、魅惑のメンバー達が強豪オーストリアとドイツの間に割って入ろうとしている。

さしあたり日本のターゲットとなるノルウェーにはバーダルにヤコブセン、心優しきヒルデなどがいる。ライバルのスロベニアはテペシュやフバラが虎視眈々と上位を伺い、スーツの影響により出遅れの感は否めないが、やや復調を見せてきたストッフのポーランド、チェコのフラバ、人気選手のアマン(スイス)あたりも実力にあふれる。

温暖な保養地ソチ(ロシア)は、人工雪が張り付けられたノーマルヒルの開催で、肝心なラージヒルは眺めるだけ、2014冬季五輪を占うにはあまりにも材料が乏しい結果となった。特徴はテーブルが上がり気味で少し長いという印象の台、冷えた状況での風向きと強さなど、果たして勝負のラージヒルはどのような形状なのかはベールに包まれたままである。伝統のクロスカントリースキーやフィギュアスケートがトップスポーツであるだけに、いくらかマイペースな進行にあるジャンプ競技なのであろうか。

日本選手は、寸分なき研ぎ澄まされた技術が必要なノーマルヒルを飛びこなしたことで、その対策は充分に練ることができた。ここが勝利へのポイント。そしてパワージャンプが必要であろうLHに比して、男女ミックス団体が行なわれるNHに狙いを定めてというのも、ひとつのメダル獲得への近道となる。
(Text & Photo by 岩瀬孝文)

[写真左]とある初秋の長野白馬で葛西紀明(土屋ホーム)はマイグローブを持ってひとしきりキャッチボールに興じリラックスモード。しかしその心の中はやる気に満ち冬への確かな道筋が見えていた
[写真右]ベテランのロイツル(オーストリア)に始まり復活したヤコブセン(ノルウェー)、若武者ヴェリンガー(ドイツ)などが好んで使う新しいジャンプスキー「フリューゲ」は北ドイツのエアフルトで作られている

[写真左]開幕ピリオドは国内にとどまり故障個所である右膝裏の治療に専念していた伊東大貴(雪印メグミルク)が満を持してW杯最前線に帰ってきた。その柔らかく飛距離が出るシルエットでジャンプ週間を席巻する
[写真右]新進気鋭の清水礼留飛(雪印メグミルク)は新潟県妙高高原出身の19歳、もともとのノルディック複合から転身して一気にW杯のトップシーンへと躍り出た

[写真左]ジャンプ週間3試合目インスブルックの大観衆。それぞれが赤と白のオーストリア国旗を打ち振るい地元選手のコフラーなどに大きな声援を送っている
[写真右]勇者ニッカネン(フィンランド)が記録したW杯通算46勝にあと3つまでにせまったシュリレンツアウナー(オーストリア)とヤコブセン(ノルウェー)[右]は以前にジャンプ週間4試合目のビショフスホーフェンで雌雄を決していた仲だ

岩瀬 孝文

ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。

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