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スキー コラム 2012年1月6日

男子スラローム第5戦 アデルボーデン(スイス)

アルペンスキー・ワールドカップ(白いサーカス)転戦記 by 田草川 嘉雄
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ザグレブのナイトレースから一夜明けると、選手たちはゆっくりと休む間もなく荷物のパッキングに忙しい。次のレース会場、スイスのアデルボーデンまで約1000キロという長距離の移動が待っているからだ。日本に例えて言えば、鳥取県の大山でナイトレースを戦った後、移動日を1日はさみ、すぐ次の日に青森県の大鰐で昼間のレース、という感じである。土曜日のジャイアント・スラロームに出場する選手は中1日、日本チームのようにスラロームだけの選手でも中2日しかない過密な日程。選手たちはさすがに飛行機でザグレブ→チューリッヒ間をひとっ飛びだが、それでも空港からは車で約2時間を走らなければならない。もちろん、大量の機材を載せたチームカーは陸路を延々と大移動。最近のワールドカップ・ツアーのなかでは、このザグレブ→アデルボーデンの移動がもっとも厳しいスケジュールとなっている。

さて、そんな苦労の末に到着するアデルボーデンだが、ここはワールドカップ有数の難コースとして名高い。コース名はChuenisbärgli(クエニスベルグリ)。複雑にうねった痩せ尾根に開かれた斜面は難所の連続で、とくにスタート直後とゴール前は横滑りも恐ろしいほどの急傾斜。夏の間は牛や山羊などが放牧される斜面は、うねったりねじれたりで最大傾斜線があちらこちらにとっ散らかる。もちろんかつてと比べれば整備の手が入っているものの、今なおワールドカップでも指折りの癖のあるコースと言えるだろう。

スラロームは、GSコースの後半部分を使って行なわれる。標高差は211mとワールドカップでは標準的だが、とくに終盤右に鋭く曲がったあとに出現する急斜面は、毎年選手たちを手こずらせる。硬く氷結した場合、わずかに内倒しただけでも足元をすくわれるし、気温が上がって雪が緩んだ時には、深い溝が選手の身体を上下左右に翻弄する。この難所をミスなくカバーし、自分本来の滑りを完成させるのは、きわめて難しいのだ。抑えるところと攻めるところ、その割合と力加減が勝負を分ける大きなポイントとなるだろう。

たとえば、昨年の優勝者、イヴィッツァ・コスタリッチ(クロアチア)は、攻めと守りの力加減が絶妙だった。滑りの完成度が高いからこそ可能なレース運びだが、ベテランらしい安定感が際立つ危なげのない勝利だった。対照的に一昨年の勝者、ジュリアン・リゼロー(フランス)は2本目の鬼気迫る猛アタックが勝利を引き寄せた。1本目12位という不本意な滑りに終わったリゼローは一転、2本目に失敗覚悟の直線的なスラロームに出て、後半の急斜面を力と気迫でねじ伏せたのだ。柔と剛、力と技。ともに1979年生まれのベテランスラローマーが、極めて対照的な戦い方で、この難コースを制したことは興味深い。

果たして、今季の“Chuenisbärgli”で、トップレーサーたちは、どのような戦略どのような技術ででこの急斜面を攻略するのか。そしてその戦いがどんな名勝負を生むのだろうか。スラロームのみならず、ジャイアント・スラロームの熱戦にも期待してみたい。

【写真左】アデルボーデンの村から遠望する難コースChuenisbärgli。複雑な地形とすさまじい傾斜が選手を悩ませ、また名勝負を演出してきた
【写真右】アデルボーデンのスラロームでは2年連続の2位にとどまっているマルセル・ヒルシャー。今季こその思いは強いだろう。

【写真左】インスペクションの後、コースを見上げるイヴィッツァ・コスタリッチと妹のヤニッツァ。家族のサポートでコスタリッチは今季も好調だ。
【写真右】ゴール前の急斜面をインスペクションする湯浅直樹。すさまじい傾斜をこの写真から感じられるだろうか。

【写真】昨年43番スタートから3位に入り、復活のきっかけをつかんだマリオ・マット。後半戦の快進撃はここからスタートした。

田草川嘉雄

田草川 嘉雄

白いサーカスと呼ばれるアルペンスキー・ワールドカップを25年以上に渡って取材するライター&カメラマン。夢は日本選手が優勝するシーンをこの目で見届けること。
[email protected] ≫ReplaySkiRacing

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