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スキー コラム 2012年1月4日

男子スラローム第4戦

アルペンスキー・ワールドカップ(白いサーカス)転戦記 by 田草川 嘉雄
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小さな山の熱き闘い。

年明け最初のレースは、本来ならばミュンヘン(ドイツ)で予定されていた。オリンピックの丘に人工雪で作った特設コースでのパラレルスラロームが、新年早々1月1日に行なわれるはずだったのだ。しかし、年末の気温上昇で会場の設置がむずかしくなり、残念がらキャンセルが決定。2012年のアルペンスキー・ワールドカップは、ザグレブ(クロアチア)からスタートすることになった。今回は1月3日に女子スラローム第5戦、1月5日に男子スラローム第4戦が、いずれもナイトレースで行なわれる。

ザグレブは、クロアチアの首都である。人口は80万人。約440万人というクロアチア全体の人口のうち、周辺を含めると約4分の1がザグレブに住んでいる。新市街には近代的な高層ビルも多く立ち並ぶが、その北側に広がる旧市街(両者は走行距離66mという世界一短いケーブルカーで結ばれている)は、ヨーロッパらしい雑然としながらも静かで美しい街並みが印象的だ。そして、この街にはイヴィッツァ・コスタリッチが住んでいる。もちろん、彼の父親でありクロアチアチームのヘッドコーチ、アンテ・コスタリッチも、また妹でありかつてのワールドカップ&オリンピック&世界選手権チャンピオンであるヤニッツァ・コスタリッチも、この街の住人だ。つまり、彼らにとってザグレブのワールドカップは“ホームレース”。小さい頃から何千本と滑ったであろう我が家のようなコースで行なわれる凱旋レースなのである。

ザグレブで男子のワールドカップが行なわれるのは今回で5回目。まだ歴史の浅いレースだが、すでにレギュラー会場として確固たる地位を築いた。大会運営の見事さ、観客動員数とその熱狂度は、オーストリア、スイスなどアルペン大国で行なわれる歴史ある大会と比べても、けっして遜色はない。レースは、ザグレブ郊外のスリエーメ山(1033m)で行なわれる。ここは、市民の憩いの場として人気があり、春から秋にかけて、人々はハイキングや野草摘みなどをここで楽しむという。冬になると、ザグレブ近郊唯一のスキー場として賑わう。現在運行されているリフトはチェアリフトが1本とTバーが2本のみ。標高差は300mに満たず、最長でも1キロ程度の滑走距離と、アルプスの山々とは比べるまでもないちっぽけなスキー場である。市内からは車で1時間弱。ただし大会当日は、大会本部がある市内のホテルからスリエーメまで、一定時間すべての信号が青となる。そして、選手や関係を乗せた車両がただの一度も停まることなく疾走するため、わずか20分ほどで到着してしまう。100台近くの車が連なってスリエーメをめざすこのコンボイは、今やザグレブの新年の風物詩となりつつあるといってもよいだろう。

スリエーメ山は、地理的・地形的にそれほど多くの積雪は望めず、コースは基本的に人工雪を中心に作られる。気温自体は低く、ナイトレースということもあって例年コースの状態は良く、選手たちにも好評だ。標高差220mに設定されたスラロームコースは、斜度はそれほど急ではないが、距離が比較的長くタフなコースといえるだろう。

「ここはワールドカップの平均的なSLコースよりもかなり長く、とくに後半がむずかしい。普通のスケールのコースならば、最後の急斜面の入り口付近がゴー ルになるだろう。だからここが非常にきついパートになる。技術だけでなく、フィジカルなコンディションも重要。長い緩斜面の後に続くだけに、体力を使い 切った後のもうひと頑張りが必要なんだ」。幼い頃からこの山で厳しい練習を積み、やがて世界に羽ばたき頂点を極めた昨シーズンのワールドカップ総合チャンピオン、イヴィッツァ・コスタリッチはスリエーメのスラロームコースについて、こう語っている。

今季のレースも、このコスタリッチを中心の展開が予想される。過去4度のホームレースで、彼は3度も2位となっているのだが、優勝はまだ1度もない。当然のように優勝を目指してアタックするだろうし、例年2万人を超える地元大観衆も彼の初優勝を願って熱狂的な声援を送ることだろう。今季すでにスラロームで2勝をあげているコスタリッチだが、総合では現在7位とやや出遅れている。総合優勝のタイトルを防衛するためにも、ここは何としても勝っておきたいレースなのだ。

「高速系やジャイアント・スラロームで調子が上がるまでには、まだ少し時間がかかると思う。今、自分ができることは得意種目のスラロームでできるだけ勝ち続けることだ」。フラッハウのスラロームで優勝したときのインタビューでこう語っていたコスタリッチ。まずは、滑りなれたホームコースで優勝ポイント100を獲得し、総合での追撃態勢に入りたいところだ。

他に表彰台に絡んできそうな選手としては、マルセル・ヒルシャー(オーストリア)、クリスチャン・デヴィーレ(イタリア)、アンドレ・ミューラー(スウェーデン)らの名前があげられる。ヒルシャーは今季これまでに行なわれたスラローム3戦で、3位、1位、途中棄権、同じくデヴィーレは2位、6位、3位、そしてミューラーは6位、4位、2位といずれも好調。とくに中盤の長い緩斜面を勝負どころと見れば、昨年の勝者で緩斜面に強いミューラーに若干のアドバンテージがあるだろう。また一昨年の勝者で昨年4位(1本目はベストタイム)と、このコースを得意としているジュリアーノ・ラッツォーリ(イタリア)も侮れない存在だ。いずれにしても、僅差の接戦が予想され、今年も新年早々のザグレブ/スリエーメは、熱い興奮に包まれることだろう。

【写真左】イヴィッツァ・コスタリッチにとっては、何としても勝ちたいレース。大観衆の後押しで念願の地元初優勝はなるか?
【写真右】昨年のこの大会では1本目4位からの逆転で優勝したアンドレ・ミューラー。今季も絶好調でザグレブに乗り込む。

【写真左】31歳となったばかりのクリスチャン・デヴィーレ。今季は安定して上位をキープしており、初優勝もすでに射程内だ。
【写真右】なかなか結果のでない今季の佐々木明。比較的得意とするコースで復活のきっかけをつかみたいところ。

【写真左】第3戦フラッハウでは、2本目で痛恨の途中棄権。しかし滑りは依然好調を維持しており、このレースでも有力な優勝候補
【写真右】スタンドには立錐の余地なくファンが詰めかける。観客動員数ではシュラドミングに及ばないがその熱狂度はほぼ互角だ

お詫びと訂正
20011年12月19日付け当コラム「ヘルマン・マイヤーの故郷で久々の男子スラローム。 日本チームは7年越しの雪辱はなるか」における岡田利修選手に関する記述に誤りがありました。岡田選手は2004年12月にフラッハウで行なわれたワールドカップ男子スラロームで24位に入賞し、初のワールドカップポイントを獲得しました。当コラムでは筆者である私の誤認により、岡田選手が2本目旗門不通過のために失格となったと記していますが、前記のとおり岡田選手は失格ではなく24位が正式な記録であります。岡田利修選手ご本人、ならびに当コラム読者の方々に多大なご迷惑をおかけしたことを深くお詫びし、訂正いたします。

田草川嘉雄

田草川 嘉雄

白いサーカスと呼ばれるアルペンスキー・ワールドカップを25年以上に渡って取材するライター&カメラマン。夢は日本選手が優勝するシーンをこの目で見届けること。
[email protected] ≫ReplaySkiRacing

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