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スキー コラム 2011年12月16日

戦いの場はふたたびヨーロッパに。

アルペンスキー・ワールドカップ(白いサーカス)転戦記 by 田草川 嘉雄
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北米への転戦を終えたワールドカップツアーは、ふたたびヨーロッパに戻ってきた。本来ならばヴァル・ディゼールから始まるはずのヨーロッパラウンドだが、雪不足のためにキャンセルされ、今季はヴァル・ガルディナのスーパーGが皮切りとなる。ガルディナでスーパーGとダウンヒルを戦い、峠を越えた反対側のアルタ・バディアでジャイアント・スラロームとスラロームが行なわれる。4日連続のレース。イヴィッツァ・コスタリッチ(クロアチア)やシルヴァン・ツルブリッゲン(スイス)らのオールラウンダーはもちろん4レースすべてを戦い、その他の多くの選手も、このうち3レースに出場する。ここで一気に調子の波に乗れば、一気に大量のワールドカップポイントを獲得できる。選手にとってはこれがシーズン前半の大きな正念場となるだろう。

一方、スラロームのスペシャリストにとっては、ヨーロッパカップの連戦が続く時期。ヴァル・ガルディナと同じドロミテ山塊のスキー場で、連日のようにヨーロッパカップのスラロームが行なわれる。今季のスケジュールは、14日オーバーエッゲン、15日ポッツァ・ディ・ファッサ、16日マドンナ・ディ・カンピリオと3連戦。15、16日はいずれもナイトレースで行なわる。ただし、マドンナには雪がまったくなく、併せて行なわれる予定だったダウンヒルは中止。スラロームもとても出来る状況ではなく、現在代替レースをいつどこで行うかを模索中のようだ。スケジュールは非常に流動的で、選手たちはタイトな日程をやりくりしつつ来週月曜日のアルタ・バディアでのワールドカップ・スラロームに向けて調整を進めなくてはならない。

そんななか14日オーバーエッゲンで行なわれたヨーロッパカップ・スラロームは、かなりイレギュラーな結果となった。かろうじて雪は間に合ったものの、コース後半の急斜面には地肌が露出していて使えない。レースはこの部分をカットし、スタート地点を例年よりも上に移して強行された。標高差は180mとなっていたものの、目測ではとてもそんなになさそうな短縮コース。スタート直後がやや急だが、その後は中・緩斜面が続き、急斜面の入り口がゴールというコースに、1本目が54ターン、2本が55ターンがセットされたスプリント勝負である。

結果は、1位パトリック・ターラー(カナダ)、2位ウィル・グレゴラック(アメリカ)、3位クリスチャン・デヴィール(イタリア)。3位のデヴィールを除けば、かなり意外な表彰台といえるだろう。リザルトを見ると分かる通り、1本目で上位の選手のほとんどが、2本目で大きく順位を落としている。逆に1本目そこそこのタイムで中位にいた選手が2本目で急上昇して逆転。これは2本目のコースがひどく荒れたためである。10人ほどが滑った段階で、コースには深い溝が刻まれ、その後に滑った選手が好タイムをマークするのはとても難しい状況だったのである。

日本チームからは湯浅直樹(1本目28番スタート)、以下大越龍之介(44)、佐々木明(66)、武田竜(76)、石井智也(83)の5人が出場。ワールドカップとほぼ同じスタート順の湯浅はともかく、他の4人にとってはかなり苦しい条件でのレースだった。

【写真左】湯浅は2年前の前回大会で23位。長い緩斜面はあまり得意ではないが、第1シード入りをめざすためにも、このレースでのポイント獲得は必須条件だ。
【写真右】アルタ・バディアでは過去2回トップ10に入っている佐々木明。今季は苦戦が続くが、復活の兆しも確実に感じられる。得意のコースでの一発に期待したい。

1本目を完走し上位60人が進める2本目に残ったのは、大越と佐々木のふたり。湯浅と石井は前半でポールをまたいでコースアウト。武田は中間付近でコースを飛び出しかける大きなミス。すぐに立て直してゴールまで滑りきったものの、2本目に進むことは出来なかった。ただ、深く掘れたコースを柔らかいスキー操作でなめらかにこなした滑りは、大きな可能性を感じさせるもの。これまで国内とアジアを中心に戦ってきた彼にとってはこれがヨーロッパカップのデビュー戦だったが、今後ヨーロッパのレースを経験を積むなかで、大きな飛躍を期待したい。

佐々木は66番スタートという不利な条件でトップと1秒63遅れの35位というまずまずのタイムで2本目に進んだ。2本目はさらにひどく荒れたコースだったが、ひたすらアタックの彼らしい滑りを見せて快走。ゴール間近で飛び出してしまったが、そこまでの滑りは各国のコーチからも賞賛されるほどスピードに乗ったものだった。ミスの後もあきらめずゴールし、完走41人中41位という結果だったが、表情はいつもどおり明るい。「掘れたなかでも、気持よくアタックできた。きついスケジュールが続くが、好調を維持できている」苦戦が続く日本チームだが、復活の兆しは確実にあるとみてよいだろう。

アルタ・バディアでワールドカップのスラロームが行なわれるのは2年振り5回目となる。急斜面が連続するGSの超難コースとして知られるアルタ・バディアだが、スラロームでは、スタートが下がるために、急斜面の割合はそれほど大きくはない。スタート直後の急斜面が難しいことは確かだが、勝負を分けるのはむしろその後に続く長い中・緩斜面だろう。急斜面でつかんだリズムとスピードをいかにつなげていくかが最大のポイントで、斜度がゆるい分、わずかなミスが致命的なタイムロスにつながる。

大部分が深い森に囲まれているため、例年ならば固く氷結するのだが、今季は雪が少なく気温も高めなので、極端なアイスバーンにはなりそうもない。比較的水分の多いいわゆるアグレッシブな雪質が予想される。そしてこういう条件で圧倒的な強さを発揮するのがイヴィッツァ・コスタリッチ。

【写真】イヴィッツァ・コスタリッチ選手&マルセル・ヒルシャー選手

たとえば2008/09シーズンに優勝した時の彼の滑りは、今でも強く印象に残っている。気温が上昇したために、コースが軟化。軟らかく粘りつくような雪に多くの選手はエッジをとられて大苦戦。誰もがほとんど満足なターンができないなか、ひとりコスタリッチだけが素晴らしく安定した滑りで他を圧倒したのである。コスタリッチは前日に行なわれたGSでも2位入賞。彼自身、もっとも苦手だと言っていた種目で初めて表彰台に立ったのが、生暖かく雪の軟らかかったアルタ・バディアだったのだ。このときの気温は、ゴール地点で0度からプラス2度。今季もほぼ同じような気象条件が予想されているだけに、スラローム第2戦はコスタリッチを中心とした戦いになるだろう。

また、GSとあわせてアルタ・バディア2連勝を狙っているマルセル・ヒルシャー(オーストリア)にも注目だ。現在絶好調。故障明けのシーズンにもかかわらず、GSではテッド・リガティ(アメリカ)、スラロームではコスタリッチという強敵を相手に、つねに好勝負を展開している。意外なことに、これまでアルタ・バディアで表彰台に上った経験はないが、それだけに期するものもあるはず。コスタリッチの円熟の滑りに、彼の勢いがどこまで迫るかという点も、スラローム第2戦の見所となるだろう。

【写真左】前回の優勝者、ラインハルト・ヘルブスト。しかし今季は調子を崩しており、上位進出は厳しそうだ。
【写真右】 勝負を分けるのは、中盤からの中・緩斜面。距離も長いので体力的にきつくなってから、いかにスピードを獲得するかがポイントだろう。(写真は08/09シーズンの皆川賢太郎)

田草川嘉雄

田草川 嘉雄

白いサーカスと呼ばれるアルペンスキー・ワールドカップを25年以上に渡って取材するライター&カメラマン。夢は日本選手が優勝するシーンをこの目で見届けること。
[email protected] ≫ReplaySkiRacing

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