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スキー コラム 2011年3月17日

【アルペンスキーW杯転戦記】 最終戦

アルペンスキー・ワールドカップ(白いサーカス)転戦記 by 田草川 嘉雄
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昨年10月24日、セルデン(オーストリア)の氷河で始まった2010/11シーズンのアルペンスキー・ワールドカップも、今週末でいよいよフィナーレを迎える。

今季ワールドカップ最終戦の舞台は、レンツェルハイデだ。スイス北東部、日本でもよく知られる高級山岳リゾート、ダボスとは谷を隔てた対面に位置するスキー場。インスブルック五輪(1976年)のジャイアント・スラローム金メダリスト、ハイニ・ヘンミの出身地でもある。163センチ、60キロという小柄な体躯での切れのある滑りは、日本人にとっての最高のお手本といわれたGSの名手。オールドファンには懐かしい名前だろう。私的な話で恐縮だが、2005年の最終戦、プレスセンターと会場を結ぶシャトルを運転していたご婦人がそのハイニ・ヘンミの奥さんだったことを思い出す。

レンツェルハイデがワールドカップの会場に名を連ねるようになったのは比較的新しく1995年から。当初は主に女子高速系種目を開催していたが、2005年に最終戦の会場として手を挙げ、男女の全種目を成功させた。2007年も同様に開催し、今回が3度目の最終戦開催となる。全種目をコンパクトに行なうことのできる利点をアピールし、将来的には世界選手権の招致も計画しているようだ。

さて、最終戦はワールドカップの数あるレースの中でも、ひときわグレードの高いレースとして位置づけられている。シーズンのなかの単なる1戦ではなく、ワールドカップ・レーサーのなかからさらに選ばれたものだけが出場できる特別な大会なのだ。前回のコラムでも触れたが、ここで最終戦への出場資格をもう一度確認しておこう。出場できるのは当該種目でワールドカップポイントのランキング(WCSLではなく)で25位以内の選手。これに別枠として今年度の世界選手権、ジュニア世界選手権のチャンピオンが加わる。さらに、ワールドカップの総合ポイントで500点以上獲得している選手は、かりに25位以内に入っていない種目でも出場することができる。また通常のワールドカップでは30位までの選手にその順位に応じてワールドカップ・ポイントが与えられるが、最終戦に限っては15位までがポイント圏内となる。

男子の総合優勝はすでにイヴィッツァ・コスタリッチに決定している。クヴィットフェルのダウンヒル(2連戦のうちの2戦目)で21位となり、総合で2位につけているディディエ・クーシュ(スイス)との得点差を518点に広げたのだ。この時点で残るレースは5。仮にコスタリッチが5レースすべてで無得点に終わり、逆にクーシュが全レースで優勝しても、まだ18点届かないことになる。最終的に2位以下に何点差をつけるかはまだ流動的だが、圧倒的な勝利と言って良いだろう。

今季のコスタリッチは比較的スロースタートだったが、1月に入ってから急激に調子を上げ、わずか1カ月間で7回の優勝と2回の2位を記録。このすさまじいダッシュでライバルたちをぶっちぎり、2月以降は表彰台から遠ざかっているものの悠々と逃げ切った。2歳違いの妹、ヤニッツァ・コスタリッチに次ぐクロアチアの選手としてふたり目のワールドカップ総合チャンピオンの誕生である。彼はスーパー・コンバインドの種目別優勝も決めており、すでにクリスタル・グローブ(総合優勝と種目別優勝者に与えられるクリスタル製の地球型トロフィー)ふたつを手中にしている。

そして彼にはもうひとつのグローブを手にするチャンスが残されている。もっとも得意とするスラロームの種目別優勝だ。しかし、タイトルの行方は最後まで予断を許さない。現在この種目で478点を獲得し首位を行くコスタリッチに対して、2位で追走するジャン・バティスタ・グランジェ(フランス)は442点。その差36点は僅差とは言えないまでも、1レースで簡単にひっくり返る点差ではある。初のスラロームチャンピオンのタイトルを狙うコスタリッチと、08/09シーズン以来2年ぶりの王座返り咲きをめざすグランジェ。タイトルをめぐるふたりのつばぜり合いは、バンスコの第8戦以来続いている。

このとき、1本目でポールをまたいだコスタリッチに対してグランジェは3位に入り、得点差を現在と同じ36点にまで縮めたのだ。続くクラニスカ・ゴーラでの第9戦では、1本目でグランジェがポールをまたいで途中棄権。コスタリッチにとってはライバルを突き放す絶好のチャンスだったのだが、2本目で今度はコスタリッチ自身がまたいでしまうという痛み分け。この不測の事態がふたりのタイトル争いをさらに激しいものとした。36点という点差は無視できない重みを持つが、現時点での調子を考えるとグランジェにいくらかの分がありそうだ。仮にグランジェが優勝して100点を加算したとしたら、コスタリッチは2位に入らないと逆転されてしまう。あくまでも机上の計算だが、ふたりの間には、ほとんど差がないと考えても良いだろう。

この勝負を微妙に左右しそうなのが、バンスコ、クラニスカ・ゴーラと2連勝中のマリオ・マットの存在である。レンツェルハイデで行なわれたワールドカップ最終戦では2005年が優勝、2007年も2位と、このコースを得意とする。とくに中盤以降は中・緩斜面が続き、ここで彼のパワーがものを言うのだ。今回もよほどのことがない限り表彰台にからんでくると思われ、彼がどの順位におさまるかによって、コスタリッチとグランジェの得点争いに大きな影響が出るだろう。果たして、最後の最後に笑うのは誰なのか?イヴィッツァ・コスタリッチは最終的に何個のクリスタル・グローブを手にするのか?そんな興味を持ちながら男子スラローム最終戦に注目したいと思う。

残念ながら日本選手は、今季の最終戦に誰も出場することができなかった。スラロームの種目別で、湯浅直樹は33位、佐々木明は46位にとどまったからだ。佐々木は、スペインのフォーミガル(2008年に行なわれたジュニア世界選手権で石井智也が3位となったときの会場)で行なわれたヨーロッパカップのスラローム最終戦に出場し12位。一方、湯浅はクラニスカ・ゴーラの第9戦終了後、シーズン中ずうっと痛みを抱えていた左膝の治療を受けるために日本に帰国。来季以降の再起をめざす。


=== 追記 ===

2011年3月11日。日本は史上最大級の地震と巨大津波に襲われた。我々スキーヤーは、時として自然が人間に牙を剥くということを知っていたはずだが、それにしても、あまりに苛烈な地球の仕打ちだった。その圧倒的な獰猛さの前では、誰もが呆然として言葉を失う。大地の蠢きに奪われた数々の命と生活の尊さを考えれば、自分たちがあまりに無力であることに絶望を覚えるのだが、しかしそれでもなお人間が持つ最大の武器は、言葉であり行動であることを忘れてはならない。絶望の淵だからこそ、言葉の力を信じよう。そして行動の重要さをもういちど思い起こそう。

ワールドカップで戦う各国のレーサーたちが日本のために立ち上がってくれた。
「Skiers Helping Japan.com」

そして、佐々木明もこれに以下のような文章を寄せた。
「Skiers Helping Japan.com ~佐々木明からの手紙~」

一足早く帰国し、日本で3月11日をすごした湯浅直樹も行動を起こした。
「湯浅直樹 ワールドカップビブ チャリティー(楽天)」

さらには、全日本スキー連盟もプロジェクトを立ち上げた。
「I LOVE SNOW ~One's Hands プロジェクト~」

これらの言葉が、行動が未曾有の天災からの復興に少しでも力となることを心から願う。

田草川嘉雄

田草川 嘉雄

白いサーカスと呼ばれるアルペンスキー・ワールドカップを25年以上に渡って取材するライター&カメラマン。夢は日本選手が優勝するシーンをこの目で見届けること。
[email protected] ≫ReplaySkiRacing

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