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スキー コラム 2011年1月20日

【アルペンスキーW杯転戦記】 キッツビューエル

アルペンスキー・ワールドカップ(白いサーカス)転戦記 by 田草川 嘉雄
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ウェンゲンのラウバーホルン大会は、過去最高の入場者数を記録して、大盛況のうちに終わった。とくにダウンヒルは、これまでの記録を3000人上回る35000人もの観衆が、コースサイドを埋め尽くした。天候も週末3日間を通しておおむね晴れ。暖かすぎる気温が、コースコンディションに影響を与えたものの、レースはどれも白熱した。地元スイス勢は、優勝こそなかったが、カルロ・ヤンカが2種目で表彰台に立ち(スーパー・コンバインド2位、ダウンヒル3位)、ディディエ・クーシュはダウンヒル2位と健闘。大観衆の期待という圧力の中で、年の離れたふたりのエースが、ともに素晴らしいパフォーマンスを見せたことも、今年の大会の興奮を増幅させた大きな要因といえるだろう。

【写真左】 ゴールの大観衆の中に飛び込むかのようなハウスベルク・カンテの大ジャンプ。写真は昨シーズンの覇者、ディディエ・クーシュ(スイス)
【写真右】 その大ジャンプを下から見上げるとこういう感じ。

さて、ラウバーホルン大会の翌週は、ハーネンカム大会だ。舞台はスイスからオーストリアに移り、キッツビューエル。スキー大国オーストリアを代表する高級リゾートであり、多くのセレブリティたちが集まる冬の社交場である。その華やかな舞台の興奮を、トップレーサーたちの技とスピードとで、さらに盛り上げるのがハーネンカム大会といえるだろう。

ラウバーホルン大会で、スイスの選手が大きなプレッシャーと戦ったのと同様、今週末はオーストリア選手が国民からの重圧にさらされる。世界一のアルペン強国と自負するオーストリアだけに、ファンからの注目度は高く、当然選手に対する期待も熱い。ライバルと戦い、コースに立ち向かうだけでなく、ハーネンカム大会大会における地元オーストリア選手は、押し寄せる重圧に対しても強くあらねばならないのだ。たとえば今年のラウバーホルン大会のダウンヒル優勝者、クラウス・クレル(オーストリア)は、次のように語っている。

「われわれオーストリア人にとって、キッツビューエルのハーネンカム大会は特別なレースだ。5万人、6万人の観衆が見つめる中、ダウンヒルのスタート台に立つときの気持ちは、ちょっと表現のしようがない」しかし、クレルは続けて次のようにも言う。
「でも、今年のハーネンカムはいつもより気軽に戦えるかもしれない。なぜなら、今シーズンのオーストリアチームは、これまでたいした成績を残しておらず、その分国民からの期待も小さいからだ。どうせそれほど期待されていないのだからと、いつもよりのびのび思いきり滑れるはず。それはきっと、われわれに良い結果をもたらせてくれるだろう」。ちょっと自嘲気味なコメントとも受け取れるが、実際のところそれもまた本音なのだろう。

そういう意味で、おそらく今年のハーネンカム大会でもっとも大きな注目を集めるのは、オーストリアのエース、ミヒャエル・ヴァルヒホーファーでも、ベンジャミン・ライヒでもなく、おそらくイヴィッツァ・コスタリッチ(クロアチア)である。何しろ1月に入ってからの彼は絶好調で、現在ワールドカップの総合ランキングで首位を独走。ラウバーホルン大会ではスーパー・コンバインドとスラロームで優勝し、ダウンヒルでも12位と週末3日間で222点の荒稼ぎをした。2位につけるアクセル・ルンド・スヴィンダール(ノルウェー)との差を215点にまで拡大。悲願の総合優勝に着実に近づいている。この調子が続けば今年のハーネンカム大会は、イヴィッツァ・コスタリッチを中心とした戦いとなることは間違いない。

【写真左】 依然絶好調のイヴィッツァ・コスタリッチ(クロアチア)。ハーネンカム大会でも大活躍が予想される。
【写真右】 昨シーズンのスラロームは、フェリックス・ノイロイター(ドイツ)が優勝。彼にとっての初のワールドカップ勝利を最高の舞台で飾った。

ハーネンカム大会の競技種目は、スーパーG(金曜日)、ダウンヒル(土曜日)、スラローム(日曜日)。それにダウンヒルとスラロームのタイムを合計したコンバインドが設定されている。短縮ダウンヒルとスラローム1本で行なわれるスーパー・コンバインドではなく、ダウンヒルとスラローム、それぞれ正規のレースを行なったうえで、2種目の合計タイムで競うというクラシックなコンバインドが行なわれるのは、今やキッツビューエルのハーネンカム大会だけとなった。それだけに、コスタリッチはこの種目に対して憧れと闘志とそして自信を持っている。昨シーズンついに表彰台の中央に立っているだけに今季のハーネンカムのコンバインドも彼が大本命だ。もちろん、もちろんスラロームは優勝候補の筆頭だし、スーパーGとダウンヒルでもかなりの上位入賞が予想される。つまり、今週末も大量の得点をかき集め、総合ランキングトップの座をさらに盤石なものにする可能性は高いのだ。

【写真】 水曜日のダウンヒル・トレーニングは悪天候
のために中止。コース下部は雨、上部は湿った雪という
最悪のコンディションだ。

「ミュンヘン(シティイベントのパラレルレースで優勝)以降のこの数週間は、過去に例がないほどの調子の良さだ。膝にも腰にも故障を抱えているが、レースやトレーニングの後には充分なケアをしているので、今のところ問題はない」と彼自身も好調ぶりを認める。だが、今のコスタリッチの強さの最大の要因は、春を思わせる軟らかい雪に対する圧倒的なうまさだ。まだ寒かったミュンヘンを除けば、ザグレブもアデルボーデンもウェンゲンも、いずれも気温が高く、したがって雪は極端に軟らかかった。レース前にホースで大量の水を撒き、さらに雪面硬化剤を入れて何とかコースを硬めるという異様な光景が、今シーズンのレースではもはや日常化してしまったほどだ。しかしその効果は限定的で、数人が滑っただけであっという間にコースは荒れ始める。水分を多く含んだ軟らかい雪と、深々とえぐれたコースの溝に多くの選手が手こずる中、ひとりコスタリッチだけがまったく乱れない安定した滑りをみせる。その円熟とも言うべき安定感は際立っており、ライバルたちもあまりのうまさに唖然とするばかりだ。

「たしかに、僕は軟らかい雪は苦手ではない。それはワールドカップのシーズンが終わった後、3月も4月も練習をやめないからだろう。もちろん、5月も6月もたくさん滑る。そんなときの練習がこのところの軟らかいコースコンディションで役立っているのは間違いない。こういう雪質はワールドカップにおいては特別な状況かもしれないが、しかしアルペンレースは氷のように硬いアイスバーンで行なうもの、という“常識”ははたして正しいのだろうか?」と彼は言う。「どんな雪だろうと速いレーサーこそが、真に強いレーサーだ」。口に出すことこそなかったものの、そういう強烈な自負が彼の発言からはっきりとうかがわれる。

このところ続いていた好天から、アルプス地方の天候は下り坂に転じた。今日、水曜日は明け方から雨。予報ではある程度の冷え込みと積雪があるということだったが、実際には気温は相変わらず高い。おそらく今後週末にかけても雨を中心に推移して行くことだろう。仮に雪となったとしても、コースが(多くの選手が望む)アイスバーンになることはほとんど考えられない。だとしたら、この週末もイヴィッツァ・コスタリッチの優位は絶対だ。果たして、ライバルたちはその悪条件のなか、独走するイヴィッツァ・コスタリッチにストップをかけることができるのだろうか?

田草川嘉雄

田草川 嘉雄

白いサーカスと呼ばれるアルペンスキー・ワールドカップを25年以上に渡って取材するライター&カメラマン。夢は日本選手が優勝するシーンをこの目で見届けること。
[email protected] ≫ReplaySkiRacing

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