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スキー コラム 2011年1月13日

【アルペンスキーW杯転戦記】 ウェンゲン

アルペンスキー・ワールドカップ(白いサーカス)転戦記 by 田草川 嘉雄
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先週のアデルボーデン大会は、すさまじい数の観客が集まった。初日のジャイアント・スラロームには過去最高の29,000人が、そしてスラロームにも13,000人のファンが集結。深い谷間のどん詰まり、片側1車線の狭い国道が1本通じるだけの小さな村は、終日熱気と興奮に包まれた。地元スイスチームが今季は例年にも増して好調なこと、キッツビューエル・ダウンヒルの大クラッシュで一時は意識不明の重態に陥ったダニエル・アルブレヒトが2シーズンぶりにワールドカップに復活したことなどが、この盛況の背景にあるといえるだろう。

そして、そうした雰囲気はレースをも白熱させる。会場を支配する独特の昂揚感が、選手の滑りをより高い次元に押し上げるからだ。ジャイアント・スラロームの2本目で宙を舞い、この種目4連勝はならなかったが、テッド・リガティ(アメリカ)の1本目の滑りは圧巻だったし、2本目の驚異的な追い上げでともに表彰台の中央に立った(同タイムで優勝)、アクセル・ルンド・スヴィンダール(ノルウェー)とシピリアン・リシャール(フランス)の滑りは気迫にあふれ感動的でさえあった。またスラロームでは、荒れたコースを安定した柔らかな滑りで制したイヴィッツァ・コスタリッチ(クロアチア)と、玉砕覚悟のコンバットモードでアタックし僅差の2位に迫ったマルセル・ヒルシャー(オーストリア)の鮮やかな対比が、アルペンレースの奥深い面白さを実感させてくれた。

さらに日本のファンにとって重要なのは、佐々木明と湯浅直樹の両エースに上昇の兆しがはっきりと見えたことだろう。とくに佐々木の2本目は、久々にみる彼らしいアタックだった。前半のスプリットタイムは30人中1位。後半の急斜面で大きなミスを犯し(※下に掲載の動画【佐々木明_アデルボーデン2本目】参照)、合計タイムでは26位と留まったものの、この滑りで得た自信は大きいはずだ。また湯浅も2本目前半は佐々木に次ぐ2位のタイムでカバー。ゴール前で旗門に詰まる危ない場面もあったが、執念でリカバーして18位に食い込んだ(※下に掲載の動画【湯浅直樹_アデルボーデンSL2本目】参照)。1本目28位という出遅れが響いたが、2本目のタイムは大きな失敗がありながら全体の6位と、これも充分な手応え。シーズン前半の停滞から抜け出すきっかけはつかんだといってよいだろう。

さて、今週末は舞台をウェンゲンに移す。アデルボーデンからは東へ約40キロと比較的近く、同じベルナーオーバーランドの代表的スキーリゾートだが、その雰囲気はかなり違う。村自体は、急な山裾にへばりついた小さな集落。しかし、瀟酒なホテルやシャレーが立ち並ぶたたずまいは、アルプスの数あるリゾートの中でも有数の高級感が漂う。一般車の乗り入れが禁じられ、登山電車が唯一の公共交通機関というある意味で下界とは隔離された環境も手伝って、村に流れる空気は、とてもゆったりとして豊かなのだ。

【写真左】 深い谷間を見下ろす急斜面にへばりつくようなウェンゲンの村。アルプスの美しい風景にゆったりとした空気が流れる
【写真右】 ダウンヒルのスタートハウスからの風景。ワールドカップでもっとも長いダウンヒルは、ワールドカップでもっとも美しいレースでもある

大会の正式名称は「International Lauberhorn Race」。標高2472mのラウバーホルンの山頂直下からウェンゲンの村はずれまで延びるラウバーホルンコースを使ったレースで、今年で第81回目を迎える。ワールドカップの歴史が44年なので、およそ2倍の歴史を持つわけで、この大会がキッツビューエルのハーネンカム大会とともに2大クラシックレースと称される所以である。

ここの最大の特徴は、なんと言ってもコースの雄大さ、美しさ、そして難しさにあるだろう。ダウンヒルは、ワールドカップ最長のスケール全長4465m、標高差1029mを誇り、一方スラロームコースは全長こそ標準的だが、技術的な難度という点ではやはりワールドカップで一番といわれている。とくにダウンヒルは、やはり特別。スタートに上がるのにリフトだけでは行くことができず、登山列車に揺られて行かなければならないワールドカップ唯一のコースでもある(※下に掲載の動画【ウェンゲンからラウバーホルン・ダウンヒルのスタートへ 】参照)。

大会は週末の3日間にわたって行なわれ、金曜日がスーパー・コンバインド(短縮ダウンヒル+スラローム1本)、土曜日がダウンヒル、そして日曜日がスラロームだ。

注目は年が明けてから絶好調のイヴィッツァ・コスタリッチだろう。ミュンヘンのシティ・イベント(パラレルレース)で優勝すると、ザグレブのスラローム2位、そしてアデルボーデンではジャイアント・スラローム5位にスラローム優勝と立て続けに上位入賞を続けている。技術系だけでなく高速系にも高い実力を持ち、スーパー・コンバインドでは優勝候補の筆頭。現在ワールドカップ総合で首位を走っているが、最強種目のスラロームと合わせ、その差を一気に広げる可能性もある。本人はまだその可能性についてコメントしていないが、悲願の総合優勝に向けて着々と進んでいる。

【写真左】 目下絶好調のイヴィッツァ・コスタリッチ。ウェンゲンのスラロームは彼がもっとも得意とするコースで過去2回優勝し、表彰台には合計6回も立っている
【写真右】 昨年のスラロームの覇者、イヴィッツァ・コスタリッチと2位アンドレ・ミューラーはともにギターの名手。表彰式の後にはミニコンサートで競演した

もっともスラロームは混戦模様でもある。これまでの4戦ですべて異なる選手が優勝しており、種目別リーダーを示すレッド・ビブを着ける選手も、レースごとに入れ替わっている。果たして好調コスタリッチがこの混戦から一歩抜け出すのか、それともアンドレ・ミューラー(スウェーデン)マルセル・ヒルシャー(オーストリア)らのライバルたちがそれを阻むのか。1カ月で5レースが行なわれるスラローム月間も半ばを迎え、上位争いはますます熾烈になってきたようだ。

日本チームにとっても、このレースは正念場。アデルボーデンでつかんだ自信を、しっかりと結果に結びつけることが何よりも重要だ。数字的に見ればふたりとも後がない。WCSL(ワールドカップ・スタートリスト)では佐々木が28位、湯浅30位と依然として第2シード転落の危機なのだ。大会最終日のスラローム。ワールドカップ一の難コースでふたりがどんなパフォーマンスを見せるのか注目したい。

田草川嘉雄

田草川 嘉雄

白いサーカスと呼ばれるアルペンスキー・ワールドカップを25年以上に渡って取材するライター&カメラマン。夢は日本選手が優勝するシーンをこの目で見届けること。
[email protected] ≫ReplaySkiRacing

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